大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

☆奇妙な恐怖小説群
☆ghanayama童話
☆写真絵画鑑賞
☆日々の出来事
☆不条理日記

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

☆分野を選択して、カテゴリーに入って下さい。

A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 6月30日 兄貴の友人

2014-06-30 19:20:44 | B,日々の恐怖



    日々の恐怖 6月30日 兄貴の友人



 7年前、年が3つ上の兄貴が大学に通っていた頃に聞いた話です。
兄貴は大学の理工学部なんだけど、よくオカルト好きな友人を家に招いては、霊や超常現象の話題で盛り上がっていた。
科学的な観点から、霊や超常現象の正体は何かと、酒を飲みながら結構真剣に話していたのを覚えている。
 兄貴が大学4年になったあたりから、そのオカルト好きな友達がぱったりと家に来なくなった。
なんでも、病気になったらしくて、大学も辞めて入院しているらしい。
 それから数カ月経ち、俺は兄貴のオカルト好きな友人のこともすっかり忘れていたある日のこと、兄貴がふと思い出したように、その友達の話を始めた。

「 そういえば、久しぶりに、あいつが俺の家に来たよ。」

内容はこうだ。
 その友達はガンだったらしく、余命半年と宣告をうけ、しばらくの間病院で治療を続けていたが、最近は自宅療養になった。
久しぶりに会う友人は、抗がん剤のせいなのかひどくやつれ、髪も眉毛もなく、身体も青白くやせ細っていたが、やけに目だけは生き生きとしていた。
 久しぶりに会ったというのに、その友人は挨拶も早々に、

「 実は話したいことがあるだよ!」

と、嬉しそうに話し始めた。

「 この世は、永遠に回り続けるビデオテープみたいなものなんだ!
そして常に録画されていて、常にそのテープには、今という瞬間を過去の上から重ね録りされているんだよ!」

兄貴は意味が分からず、唖然とするしかなかった。
友人はそれを気にすることなく話を続けた。

「 テープが一回りする周期が、どのくらいかはわからない。
1年か1カ月か1週間か。
もしかすると1時間、1秒かもしれない。」

なんとなく兄貴も、その話に興味を持ちはじめた。

「 人間の身体は、微弱な電気で動いているのはお前もすでに知っているだろ?
普段は微弱だけど、精神的、心理的に何か強い思いが・・・。
つまり・・・、喜びや悲しみ、後悔や無念、怒りや憎しみ。
その感情が強ければ強いほど、微弱だった電気が強力な何かになり、時にはその何かが、場所や空間に感情の痕跡を残すことがあるんだ。
 感情の痕跡が深く刻まれると、先に話した重ね録りをしても消えないんだよ。
ほら、たまに重ね録りしたビデオテープ再生したら、前の映像がうっすら映ってたり音が残ってたりするだろ?
それだったんだ!
霊や超常現象の正体は!
魂や怨念なんかじゃないんだ!
ただの痕跡なんだよ!
おい○○(兄貴の名前)!わかるよな!」

突然感情的になった友人に、兄貴は話の整理ができないまま、うんうんとうなずくことしかできなかった。
 その瞬間、

「 おぉぉぉぉぉ!解明できたぞ!うおぉぉぉ!」

友人はいきなり立ち上がり、歓喜のような雄たけびあげた。
まるで試合に勝ったボクサーのように、拳を天に突き上げていた。
 あまりに突然の友人の変貌ぶりと行動に、兄貴はその場から動くことができず、なぜか笑ってしまった。
その様子を見た友人は涙を流し一言、

「 ありがとな。」

笑顔でそう言って、帰って行ったそうだ。
 兄貴は話し終えるとハハッと笑いながら、

「 変な奴だよな。
元理工学部のくせに、言ってることが科学的じゃない。
言い回しがそれっぽいってだけで、言ってること目茶苦茶。
だけど不思議なことに、あいつがしゃべったこと一語一句覚えてるんだよ。」

その後、その友人は病院のベットで静かに亡くなったそうだ。
 兄貴は、それからしばらくしてから、ときどき自分の部屋で、亡くなった友人の姿を見るようになった。
あの時のように、歓喜の雄たけびをあげ、拳を天に突き上げているらしい。











童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
 大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

☆童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。

-------大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ-------