大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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日々の恐怖 6月12日 おっかねえ神様(2) 

2021-06-12 18:54:59 | B,日々の恐怖




 日々の恐怖 6月12日 おっかねえ神様(2) 




 次に帰省したのは年末だった。
その時、母から嫌な話を聞いた。
 件の若夫婦は犬を飼っていたらしい。
移住前から飼っていた犬で、マルチーズかなにかの小型犬だった。
その犬が、死んだという。
 まだ四歳だったというから、元気の盛りだったろうに。
夫婦はずいぶん落ち込んでいるそうだ。

「 なんで死んじゃったんだ?事故?」
「 それがね、例の犬の死ぬ道を通ったらしいんよ。」

 犬の死ぬ道というのは、集落の近くにある、なんの変哲もない道だ。
リンゴ畑の真ん中を突っ切る、ありふれた農道である。
 徒歩二十分のところにある商店に行くのに便利なので、私も何度も使っているが、実に牧歌的な場所だ。
広いリンゴ畑と、その先に見える青い山々、晴れた日など、歩いていると気分のいい場所である。
 ただ、そこは昔から犬の死ぬ道といわれて、犬を飼っている人には避けられている道だった。
その道を犬が通ると、決まって翌朝には犬が死んでいる、そういう道だった。
犬死にの道、などと呼ぶ人もいる。

「 誰も教えてなかったんか?」
「 そんな意地悪せんよ。
ちゃんと言ってあった。」
「 んじゃ、信じなかったんかな?」
「 じゃないかねえ・・・・。
都会の人からしたら、しょうもない話に思えたのかもしれんね。
可愛いワンちゃんだったのにねえ・・・・。」

と、犬好きの母は残念そうに言った。







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