日々の恐怖 6月29日 寂れた旅館(2)
小走りで本館に戻って、女将に動力回路が漏電しているから、やはり配電盤を見る必要がある事を伝えた。
先の回答通り、配電盤の場所は分からないとの事だった。
漏電の測定値が非常に大きかったので最悪、火災の可能性があると判断した私は、女将に旅館内を回って配電盤を探してもいいですかと訊ねた。
すると女将は、
「 いいですよ。
でも、別館の方には行かないで下さいね。」
との回答が返ってきた。
旅館は誰一人として客が居ないから、廊下に灯りもついてなくて時間も時間だし、かなり暗かった。
配電盤を探して旅館内を彷徨っていると、大きな扉があった。
開けてみると、そこは本館と別館を繋ぐ渡り廊下だった。
渡り廊下をちょっと進むとまた大きな扉、と言うか磁石でくっ付く仕切りがあって、その仕切りは南京錠2つで強固に閉ざされていた。
仕切りは微妙に隙間が開いていて、冷たい風がこちらに吹いているのが分かった。
私は配電盤がないのを確認したので戻ることにした。
女将が言っていた別館の方には行かないでと言うこともあり、早めに立ち去ろうと別館に背を向けたとき、先ほどの視線を感じた。
私はすぐに渡り廊下を出た。
情けない話しだけれど、その時の私はもう怖くて祈るような気持ちで配電盤を探していた。
結局、動力回路の配電盤は、本館の地下に行くための階段を降りた先にあった。
そこも薄暗くて怖かったけれど、もう勝手に電気をつけて点検する事にした。
とにかく、明るくしないとやばいと思っていた。
配電盤の点検の結果、動力回路の漏電箇所は別館動力(回路名)だと判明した。
この別館動力回路は、別館に動力用の電気を送っている回路なので、当然別館にも配電盤があるのだ。
つまり、別館に有るであろう動力配電盤を点検しなければならない。
私は女将に、別館の配電盤が漏電しているので見せていただけないかと交渉した。
童話・恐怖小説・写真絵画MAINページに戻る。
大峰正楓の童話・恐怖小説・写真絵画MAINページ