大峰正楓の小説・日々の出来事・日々の恐怖

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A,日々の出来事

☆( 1年間366日分の日々の出来事  )

B,日々の恐怖

☆( 日々の恐怖 )

C,奇妙小説

☆(  しづめばこ P574 )                          

日々の恐怖 10月14日 大学病院の夜

2014-10-14 17:51:25 | B,日々の恐怖



   日々の恐怖 10月14日 大学病院の夜



 昔の話なんだけれど、腰椎の手術のために大学病院の整形外科に3ヶ月ほど入院したことがあった。
検査をして手術し、寝たきりの状態が1ヶ月くらいあって、回復が進むにつれて、喫煙者だった俺は煙草が吸いたくてしょうがなかった。
 やっと固定の期間が過ぎてリハビリをするようになると、病院のロビーに行ってやっと煙草を吸うことができるようになった。
当時は今のように院内全部禁煙というわけではなかった。
 そのうち、入院が長引くにつれて夜眠れなくなった。
それで、6人部屋だったけれど毎夜遅くまでイヤホンでラジオの深夜放送を聞いていた。
 その夜もそうしていて、2時過ぎ頃一服してから寝ようと思って病室をそっと抜け出した。
整形はそうでもないが、大きな病院なので内科の階では毎日のように死者が出ているようだったけれど、病院の夜は看護室は明かりがついていて宿直の医師や看護師さんがいるし、俺のように眠れずに病院内をうろついている入院患者もけっこういて、怖いと思ったことはなかった。
 エレベーターで1階のロービーまで降りて、喫煙所で煙草を吸っていると救急の待合室が見える。
指定病院なので、こんな時間でも救急の待合室には赤ちゃんを抱いた若い母親などが7、8人くらいはいた。
 煙草を吸い終え、自動販売機で缶コーヒーを買って、病室に戻ろうとしてエレベーターまでの廊下を歩いていて、ふっと後ろを振り返ると、俺の後ろ少し離れたところに車いすの婆さんの後ろ姿が見えた。

“ 俺って、あんな婆さんとすれ違ったかな・・・?”

不思議に思って、俺は向きを変え婆さんの後ろ姿を見た。
 婆さんの縮れた白髪の薄くなった頭が、ゆらゆらと前後に揺れていた。
車椅子の婆さんだから、普通、介護の人がついている筈なのに一人って何か変だ。

“ ヤバいかも・・・。”

そう思って、俺は後ずさろうとしたが、体が硬直したように動かなかった。
 そして、前後に小刻みに動いていた婆さんの頭の揺れが大きくなって、首が俺のほうを向いてがくんと倒れた。
首の骨が折れたのでなければありえないような動きで、俺はもろに逆さになった婆さんの顔を見てしまった。
しわだらけの顔は真っ白で、両目のまぶたが赤い。
 俺は、

“ うわっ!”

と思ったがやっぱり体が動かない。
 そのまま、どうしたらいいのかと固まっていたら、一人の女性が通路の奥から、こっちに歩いて来た。
50代前半くらいで、白衣は着ているもののこの病院の看護師の制服ではないので女医さんかもしれない。
 女性は車いすの正面にくると婆さんの肩に手を置いて、もう片方の手でゆっくり婆さんの頭を起こした。
そして、俺のほうをチラッと見て、

「 大丈夫ですよ。」

と言った。
 その瞬間、婆さんが動物のような速い動きで女性の腕に噛みついた。
女性はちょっと驚いたような顔をしたものの、噛みつかれた腕はそのままにして、もう一方の手で婆さんの頭を何度も擦った。
 女性は噛まれた腕をそっとはずすと、

「 病室に戻りなさい、こんな時間に出歩いてたらだめでしょう。」

と言った。
その言葉は、俺に言った言葉か、婆さんに言った言葉か分からなかった。
 そして、その後、女性はくったりと頭を垂れた婆さんの車いすを押して、廊下を真っ直ぐ進んで行った。
俺はエレベーターで病室まで戻ってベッドに入り、今見たものは何だろうと考えていたが、いつの間にか眠ってしまった。


 次の朝、この病室担当の若い看護師さんが体温を計りにきたときにこの話をすると、

「 珍しいものを見たわね、それは○○さんでしょう。
この病院に、夜だけ時々来てもらってる方なの。
絶対、他の患者さんには、この話はしないでね。」

と、念を押して言われた。
そして、それ以上の詳しい話はしてくれなかった。
 それ以後、俺は退院するまで夜中に出歩くのはやめることにした。
その後、無事退院はしたけれど、あの女医さんがあの時来なかったら、俺は一体どうなっていたのだろうと今でも思う。










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四枚の写真 10月13日 P10

2014-10-13 19:28:09 | _7,四枚の写真
四枚の写真 10月13日 P10 、大峰正楓の小説書庫でUPしました。


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日々の恐怖 10月12日 追憶

2014-10-12 18:49:54 | B,日々の恐怖



   日々の恐怖 10月12日 追憶



 弟は不思議な子だった。
後で知ったけど、見え過ぎて何度も死ぬ目にあったらしい。
 昔、小学生の頃、弟と一緒にアニメのビデオ見てたら、弟が突然横を向いて手を振った。
そっちの方向は台所、しかも電子レンジしか見えない。
思わず、

「 なにしてんの?」

と声かけたら、弟は私のほうを向いてしばらくジッと目を見てきた。
そして私の肩に手を置き、10秒くらいして、

「 台所見てみて。」

と言った。
 白い着物着た髪の短い少女が静かに立ってて、私は悲鳴を上げた。
弟の手が離れると、すぐにその少女は見えなくなった。
 弟は、

「 ○○おばさんだから、大丈夫だよ。」

と言い、

「 見守ってくれてるんだ。」

とも続けた。
 後で知ったが、父の姉が○○という名前で、ちょうどそのときの私たちの年頃に交通事故で亡くなったらしい。
ただ父も祖母(祖父はすでに他界していた)も弟には話したことがないと首を傾げていた。
 弟は、

「 本人から聞いた。」

とあっけらかんとしていた。
後にも先にも、私が幽霊を見たのはそのときだけだった。
 しばらくして、弟が交通事故にあった。
数箇所骨折し、一ヶ月程度の入院を余儀なくされた。
 お見舞いに行った際、両親が医者に話を聞きに行ったとき弟がぽつりと言った。

「 ○○おばさん、やっと居なくなったね。」

どうやら、守っているんじゃなくて私に憑いていたらしい。
 弟曰く、最初は本当に見守っていた。
だがブラコンだった叔母は、仲のいい姉弟を見て姉の私に嫉妬を感じ始める。
そこで段々危ない存在になってきたので、私の代わりに弟がその呪いをわざと受けたらしい。
弟が事故にあったとき、元々は私が行く用事を弟が代わりに行ってくれたのだ。

「 俺に憑いてるほうが怖いから、大丈夫かなって・・・。」

と弟はのんびり言った。
 弟がよく見えるのは主にそいつのせいで、弟自身が用済みになるまでは守ってくれると約束していたらしい。
そこまで話して弟は口をつぐんだ。

「 俺は多分、これのせいで早死にするけど、姉ちゃん守れてよかった。」

と小さく呟いた。
小4が何言ってんだ、と思いながらも私は何故か泣いた。
 去年、弟は23歳の若さで自殺した。
遺書も何も一切なし、高卒で働いていて数年勤めた勤務先での評判もよかったし、対人関係も悪くなかった。








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しづめばこ 10月11日 P328

2014-10-11 22:28:09 | C,しづめばこ
しづめばこ 10月11日 P328  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


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日々の恐怖 10月9日 天体観測の夜

2014-10-09 18:46:53 | B,日々の恐怖




   日々の恐怖 10月9日 天体観測の夜




 俺が小学生だった80年代頃の話です。
友達のAとBと一緒に、Bが誕生日祝いで買ってもらった天体望遠鏡を使って天体観測をすることになった。
 俺の家とAの家は住宅街だったし、Bの家はうちから若干離れていた田舎だったけど庭でできそうもなかったので、Bの家の近所の神社の境内でしようということになった。
夏休み中だったのでBの家で一泊する事になり、ある程度夜更かしを許された俺達は10時頃までゲームをしていた。
そして、そろそろ行くかと、虫よけスプレーなどして準備万端で、いざ神社へ向かった。

 境内に入ると虫の声が少ししていただけでほとんど何も聞こえず、天体望遠鏡を設置して懐中電灯の明かりを消すと真っ暗になった。
最初は星座の名前を調べたりしてワイワイとやっていたが、だんだん飽きてきた。
低倍率の天体望遠鏡で見えるのは、ほとんど代わり映えしない恒星ばかりだったからだ。
 そろそろ帰ろうかという事になり、ライトを探すがどこにあるのか分からない。
管理していたAが、

「 どこだっけ?」

と言いながら手探りで探し始めた。
 すると、どこからか、

“ コーン・・・コーン・・・。”

という音が響きだした。

「 なんだろう?」

Aが泣きそうな顔で必死に探している中、俺とBはその音が気になり、音の出処である神社の隅に行ってみた。
 俺たちは神社の鳥居をくぐって左手側の広場で天体観測をしていたんだが、音は右手側の林からしていた。
音の方から明かりが見えた。
遠目でも分かったが、白っぽい服の人間だった。
 俺は丑の刻参りを知っていたので焦った。
Bはよくわからないといった感じで、小声で、

「 何あれ?」

とか聞いてきた。
叫びたい気持ちを抑え、

「 ヤバそうなので戻ろう。」

とBに言おうとしたその時、Aが後ろから、

「 お~い、懐中電灯あったぞ~!」

と叫びながら、懐中電灯のライトをぐるぐるとこちらに向けながら走ってきた。

“ コーン・・・コーン・・・。”

という音が止まった。

“ バレた・・・終わった・・・。”

そう悟った。

「 逃げるぞ!!」

と俺が叫ぶと、AとBはポカーンとしていたが、俺がダッシュで逃げるのを見てパニくったのか、Aは泣きながら付いてきた。
 しかしBは、

「 天体望遠鏡!!」

と言って広場の方に行ってしまった。
 鳥居を抜け、階段下の駐車場まで逃げた俺達は、Bを1分ほど待ったが、Bはこない。

「 どうする?」

とAと相談したが、Aは何が何だか分からない様子だ。
そもそも、煽られて逃げただけだから仕方ない。

“ 戻ってBの親に言うべきか・・・、自分の親に言うべきか・・・。”

どうしようかと思っていると、階段の上から明かりが降りてくる。
 Bが天体望遠鏡を握りしめ、泣きながら降りてきた。
その後ろには、手に蝋燭を持った白装束らしき女が一緒で、俺はビビッた。
 逃げたい気持ちを抑えBの名前を呼んだが、泣きじゃくっているBから返事はない。
Aがライトを当てると、Bはあちこちに怪我をしていた。
 すると、女がいきなり、

「 ごめんね。」

と謝ってきた。
女は泣いていた。
 少して、落ち着いた俺たちに女は話した。
丑の刻参りをしていたが、俺たちに見つかり失敗した。
俺は殺されると思ったが、女は失敗した程度で、諦めに近い感情があっただけだったらしい。
 だが、そのあと大きな音がして、驚いて広場の方に行くと、盛大に転んだBが傷だらけになっていた。
泣き叫ぶB。
 自分のせいだと思った女は、責任を感じ泣いてしまったらしい。
幸いBは擦り傷だけで大丈夫そうだった。
傷を清めの水で洗った後、Bは泣くこともなくあっけらかんとしていた。
 そのあと、駐車場にあった自動販売機で女にジュースをおごってもらい、少しだけ話をした。
女は市街に住むOLで、嫌な上司にいじめられてる、という内容だった。
それで、その上司を呪うために丑の刻参りをしたらしい。
 話していると普通の女の人で、自動販売機の明かりで見たその顔はむしろ美人な人だという感想だった。
ちなみに、白装束らしきと思っていたのは、ただの白っぽい服だった。
 その後、

「 もしBの怪我が酷かったら電話して。」

と、電話番号を貰った。

「 夜8時以降か、日曜日しか繋がらないけど・・。」

と言っていた気がする。
 そして俺が天体望遠鏡を持ち、Bの家まで帰った。
親には話さなかった。


 一週間後、Bは何事もなく完治したので、女の人に一報入れておこうということになった。
綺麗な人だったし、もう一度会うのもいいかもとか少し期待していた。
多分、俺以外もみんな期待していただろう。
 何故か口達者というだけで俺が電話することになった。
女が出て、

「 あの時は本当にごめんね。」

みたいなことを言ってきたので、

「 気にしないでください。」

とだけ言った。
すると、女が心底うれしそうに言った。

「 そうそう、あの時の呪い、効いたよ。」

俺は何が起きたのかは聞けなかった。
結局、それから女に連絡はしていない。











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四枚の写真 10月8日 P9

2014-10-08 18:56:40 | _7,四枚の写真
四枚の写真 10月8日 P9 、大峰正楓の小説書庫でUPしました。


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しづめばこ 10月7日 P327

2014-10-07 20:38:50 | C,しづめばこ
しづめばこ 10月7日 P327  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


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日々の恐怖 10月6日 デスマーチのQ&A

2014-10-06 19:16:17 | B,日々の恐怖


    日々の恐怖 10月6日 デスマーチのQ&A


 コンピュータソフトウェア会社に勤めるM君から相談を受けた話です。
M君から、

『 この前の年度末のデスマーチですけど・・・・。
出る出ると噂の我が仕事場、同僚の8割が怪奇現象を体験している。
トイレで鏡見ると後ろに知らない女が立ってたり、納期に追われてない時期、誰も居ない時間帯に防犯装置に何かが引っ掛かって、アルソックが飛んできて、

「 やれやれ、またか。」

と言いながら帰っていったりとか。
 オカルトは好きだが全然見たこと無いし、こんな職場に居るのに一度も心霊体験をしてなかった。
一度でいいから俺の前にも出てきてくれと思いながら仕事をしていたのだが、納期間際だと勿論そんな悠長な事は言ってられず。
先月の年度末の納期間際、よりによって一番忙しい時にそいつは現れた。
 あとはバグ取りのみという仕事中。
潰せども潰せども終わらないバグ取りに、俺を含む数人発狂寸前。
トイレを済ませていざ机に向かおうとした時、突然照明が明滅し始めた。
 照明が落ち真っ暗闇。
そんな中、突然俺の目の前に見知らぬ女が現れた。
同僚じゃない。
受付の女の人でもない。
紛れも無く見知らぬ誰か。
 なんの前触れもなく目の前に現れた。
リングの貞子のように長い黒髪、顔は見えない。
白いワンピースに同じく白い肌、どう見ても生きてる人間の肌色じゃない。
そこで俺の意識は途切れ、気が付けば自宅のアパートの布団の中だった。

 ぼーっとしながら時計を見ると遅刻寸前であることに気付き、慌てて出社した。
電車内で意識が途切れる直前の光景を思い出し、

“ アレが俺の心霊初体験か。
見た瞬間気絶なんて、俺もヘタレだなぁ・・・”

と、5日徹夜だった脳細胞が少しは機能を取り戻しつつあるのを確認しながら会社に着いた。
しかし、なんだか同僚がよそよそしい、っていうかあからさまに避けられている。

“ アレ、これイジメ?
そういや気絶した後、気がついたらアパートだったし、覚えてないながらも仕事途中で帰ったからハブられ中か?”

と、割と落ち込みながら年度末の掃除に取り掛かろうとしたら上司が現れたので、昨日の事を謝ろうと思い切って声を掛けた。
そしたら、

「 ちょっと、こっちに来て・・。」

と言われ、別室に行くよう促された。

“ よっぽどマズイことしたのか、それとも昨日の怪についてだろうか?”

それで、別室で聞かされた話は、非常にマズイ話だった。
 上司によると、俺が気絶したあとの顛末はこうらしい。
いきなり現れた白い女に向かって、俺は突然グーパンチ。
ITドカタで落ちた筋力の、何処にそんな力が残っていたのかと思うほど渾身のパンチだったらしい。
吹っ飛んだ白い女に、俺はさらに追い打ちをかけたそうだ。

「 ○○行目のバグもお前のせいか、○○行目のも!お前が、お前が!!」

どうやらここ数日の仕事の鬱憤を、全部その物の怪にぶつけたらしい。
その間の記憶なんてありゃしないが。

「 5日徹夜というのは、まともな人間だとたいがい壊れる。」

とは上司の談。
 どう考えても人間でない相手にマウントポジションで殴りまくる様は、同じく発狂寸前だった同僚たちを正気に戻し、ドン引きさせる程であったとか。

 今、俺は上司に都合をつけてもらい、一区切りの長期休みを貰っている。
しかし、来月から出社するのが怖い。
同僚との空いてしまった距離を埋められる自信がない。
 いや、あの女も冷静になって考えりゃ、怖かった。
その白い女は、俺と上司だけでなく、その場に居た全員に見えてたそうな。
それで、それを殴りつけた俺は今、同僚の中で超危険人物認定中と思われる。
 付け加えると、

「 キョエェェェェェェ!!!!」

とか、俺はこの世のものとは思えない叫び声を発していたらしい。
 少なくともその時の事は上司から説明されただけだし、まだ同僚には恐ろしくて確認していない。
まあ、まだ、来月頭まで休みだし。
 それから、一応お寺さんに行く前に心療内科に行ってみた。

「 過労によるいくつかの疾患は見られるけど、統合失調症ではない。」

と言われたから、どうやらオレらの見たアレは、少なくとも統失の見せた幻では無いらしい。
 一応、そんな感じで空元気でも良いから頑張ってみる。
まあ、余計なもん持ち帰ってるかもしれんので、ガキの頃からお世話になってるお寺さんに明日行って来ようと思っている。』



と、だいたいこんな感じのことを言われたので、



『 同僚を殴り倒したとかパソコン叩き壊したとかじゃないんだから、なにも気にせず、

「 長期の休みをいただきありがとうございました~!!
リフレッシュして、また元気に仕事しまっす!」

でいいんじゃないか。
 気になるなら健康祈願でも仕事順調でも、適当にご祈祷してもらって、

「 念のため、ご祈祷もしていただきました~!!」

と付け加えたら、さらに良いよ。
周囲も安心するでしょうし・・。』



と言ってみましたが、M君からは半年経っても何の連絡もありません。
どうしてるんでしょうかね?









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しづめばこ 10月5日 P326

2014-10-05 18:13:21 | C,しづめばこ
しづめばこ 10月5日 P326  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


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四枚の写真 10月4日 P8

2014-10-04 20:00:04 | _7,四枚の写真
四枚の写真 10月4日 P8 、大峰正楓の小説書庫でUPしました。


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日々の恐怖 10月3日 陶器の狐

2014-10-03 14:20:41 | B,日々の恐怖



  日々の恐怖 10月3日 陶器の狐



 小学生の頃、学校の畑を掘ったら、土の中から陶器の狐が出てきた。
真っ白の陶器で出来た狐のお面みたいなやつで、他にもたくさん出て来て、七福神やら打出の小槌やら縁起物もあった。
 小学生だから、

「 これはお宝だ!」

と、気に入ったものを勝手に取って教室に持ち帰った。
 狐はひとつしかなかったが、掘り起こした私自身が手放さなかったのと、他の子が“釣り目でこわい”と言って嫌がったので、私はお狐さんを喜んで持ち帰った。
近くで見ていた先生も、特に何も咎めなかった。
 それで、帰ってからしばらくは大事に大事に机の引き出しに入れておいたんだけれど、中学に上がってから、テレビで人形供養とかそんな番組を見て、

“ 私のお狐さんも、神社に納めた方がいいんじゃないかな・・・。”

と思い始めた。
 そもそも、小学校の畑に埋まっていた物なので、小学校に電話して事情を聞いてみたが、よくわからないとのことだった。
それで、どうしたものか?と家族に相談したところ、

“ 地面に埋まっていた物なら、神社かどこかにお返した方が良いかもしれない。”

ということになった。
 ちょうどこの時、家族で京都に旅行する予定があった。

“ 狐なら稲荷神社がいいだろう、どうせなら総本山の伏見稲荷が良いのでは・・。”

と、旅行に陶器のお狐さんも持って行くことになった。
お狐さんが手元から無くなってしまうのは寂しかったけれど、潮時かなとも思ったし、伏見稲荷に行くのはすごく楽しみだった。


 旅行当日のことだった。
割れたりしないよう厳重にくるんだお狐さんをバッグに入れて、行きの新幹線で私は爆睡中だった。
 その夢に茶髪の兄ちゃんが出てきた。
夢の中で現実と同じく京都行の新幹線に乗っているんだけれど、乗客が私とその兄ちゃんしかいなくて、二人で向い合せに座っている。
兄ちゃんはジーパンに白いTシャツ、腕には紫色のリストバンドをしていて、茶髪で色が白かった。
 茶髪の兄ちゃんは困った顔で言った。

「 あのさ~、神社行くのは良いけど、伏見はやめようぜ。
嬢ちゃんも、急にエライ人んとこ行けって言われたら困るだろ?
俺、ずっと地元に居たいのよ。
のんびりして~の、な?
頼むよ。」

兄ちゃんの紫色のリストバンドは、お狐さんが割れないよう、ずっと引き出しの中にしまっていた時から包んでいた物だった。
 京都に着いて伏見稲荷には行ったけれど、お狐さんを納めるのはやめて、神社の人に、

「 こういう物があるのだけれど、どうすればいいですか?」

と質問するだけにした。
 神社の人は、

「 ご近所の稲荷神社か、氏神様にお納めください。」

と教えてくれたので、帰ってから地元の稲荷神社に持って行くことにした。
 京都から帰ってから、地元のお稲荷さんに行く前日、また夢にあの茶髪の兄ちゃんが出て来て、

「 世話になったな~、これ嬢ちゃんに返すな。」

と、紫色のリストバンドを私に返してくれた。
翌日、お狐さんは無事に地元の稲荷神社に納められた。
 自分の思いが夢になったと言われれば、そうだろうけれど、私としてはこれで良かったと納得しています。











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しづめばこ 10月2日 P325

2014-10-02 08:12:16 | C,しづめばこ
しづめばこ 10月2日 P325  、大峰正楓の小説書庫で再開しました。


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四枚の写真 10月1日 P7

2014-10-01 16:33:45 | _7,四枚の写真
四枚の写真 10月1日 P7 、大峰正楓の小説書庫でUPしました。


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