NHKスペシャルヤクザマネー~社会を蝕む闇の資金~
資金繰りに窮したベンチャー企業への融資を通じてヤクザマネーが表の企業を支配するということがおきている、という話。
資金調達は株主の他に、都銀・地銀・信用金庫等の融資という手段もあるのですが、ITバブルや新興市場の熱狂も覚めつつある今、銀行融資などの間接金融を軽視してきていたツケが回ってきたという考えもあると思います。
アーリーステージ(海のものとも山のものともつかない初期段階)ならともかく、一定の売上規模になれば金融機関との関係も構築しておく必要があるわけです。
逆に、銀行側も一定のリスクのある融資に臆病になっているという状況もあるとすると、金融仲介機能がうまく機能していないなかで暴力団の資金がリスクマネーの受け皿になっていて、そこで「ミドルリスク・ハイリターン」を享受しているという構図ともいえます。
ただ、ハイリターンを目指すヤクザマネーは、融資の金利だけでは当然満足せず、最終的には会社に出資してIPO(新規上場)を目指したり、会社の金を食い物にしたり、架空増資で一般株主を食い物にしたりということになるわけです。
しかし、資金繰りに詰まった経営者はその場をしのぐのに必死で、最終的には「物言う株主」どころか「手を出す株主」になるということまで思いが至らないのでしょう。
暴力団関係者の発言で
「国が目をかけている投資という方向についていって、新しいビジネスを開拓する」
というのがありました。
これは商売としては全くの正道であります(話は飛びますが確か香港の大財閥である長江グループ(ハチソン・ワンポワなどを傘下に持っています)を率いる李嘉誠もどこかで「インフラは必ず儲かる」と言っていたと思います。)。
つまりこの問題の始まりは「ベンチャー市場の創設」という政策の中にあるともいえます。
番組では証券取引等監視委員会と検察庁の意見交換というのんびりとした会議風景が映されていましたが、本当はヤクザマネーの「出口」(=換金手段)であるIPOや増資のところに目を光らせていればかなりの牽制効果はあるはずです。
なので問題はヤクザマネーに頼ってしまう企業経営者だけでなく、中身を吟味せずに上場を認めてしまう新興市場や、そういう怪しい企業のお先棒を担ぐ証券会社(HとかKとかが代表的と言われてますが)にもあると思います。
ただ、そちらの方へのつっこみはほとんどありませんでした。
本当はこの番組が5,6年前に、「ベンチャー市場の創設」という政策の負の部分をあえて問う(マザーズは何の母で、ヘラクレスは誰のための力持ちなのか)という切り口で作られていたら画期的だったと思います。
また、今回でもそちらへの突込みが足りないように思いました。
やはり今のNHKではお上に楯突くのは難しいのでしょうかね・・・