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寄生植物「ストライガ」の撲滅に期待される分子を開発

2019-01-02 | 科学・技術
 近年、世界では人口爆発や環境の変化による食糧危機が起こっている。北アフリカに位置する大国スーダンでも大きな問題となっている。ナイル川の恩恵もあり肥沃な大地での農業が盛んに行われているが、近年「魔女の雑草」の異名を持つ「ストライガ」という植物による農業被害が深刻化してきた。
 ストライガは、スーダンの主食であるソルガムやミレットに寄生して栄養を奪い、枯らせる。被害は日本の本州の約2倍の面積に及び、損失額は数千億円から1兆円にも達する。経済的に余裕のないスーダンでは大規模な対策を施すことが難しい。
 名古屋大の研究チーム、土屋雄一朗特任准教授(植物生理学)らは、ストライガの種は養分をほとんど蓄えておらず、発芽から4日以内に寄生できないと枯れてしまうことに注目した。近くに穀物があると勘違いして発芽の合図となる「ストリゴラクトン」という分子をまねた人工的な分子の開発に取り組んだ。
 1万2千種類の分子で実験して発芽を促すものを見つけ出し、さらに改良して「SPL7」という分子を開発。「琵琶湖の水量に小さじ1杯分」というきわめて薄い濃度でストライガを発芽させる一方、穀物の成長には影響しないことを確かめた。研究チームは来年、ケニアの農場で試験を始める。
 チームは「農業被害を起こす別の寄生雑草を殺す薬も、同じ方法でつくれるのではないか」と言う。
 ◆ストライガ(Striga)
 ストライガはトウモロコシやキビなどイネ科の穀物の根に寄生し、栄養や水分を吸い取って枯らせてしまう。アフリカのサバンナ地域の耕作地の40%に影響を与え、サハラ以南のアフリカだけで40万ヘクタールの耕作地に影響を与え、3億人の生活に影響しているとされる。「魔女の雑草」と恐れられる。
 ストライガは、1個体につき50万の種子を生成し、種子は20年程度、土壌中に生存し続けることができる。種子の大きさは、200μm程度と小さく土壌に落ちた種の回収は困難である。一年草であり、種子の状態で越冬する。宿主の根から分泌される物質を検知すると発芽し、宿主の根の細胞に侵入するための吸器を発育させる。宿主の根から分泌される物質にはストリゴラクトンが含まれており、その物質がストライガの種子を発芽させるのを促進するシグナル伝達分子である。地下に寄生部を形成し、その状態で4~7週間を過ごし、その後、地上に出現し、開花し種子を生成する。種子は風、水、動物に付着する土壌によって容易に広がる。
 ストライガの生活環の大半が地面下に行われるため、それに対する対策が困難である。地上部に現れる前に発見できない場合、作物の損失を低減することができない。