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低濃度CO2を還元できる電気化学触媒としてレニウム(Re)の錯体を発見

2019-01-18 | 科学・技術
 東京工業大学理学院化学系の熊谷啓特任助教、西川哲矢大学院生(当時)、石谷治教授らの研究グループが、二酸化炭素(CO2)を捕集する機能を持つレニウム(Re)の錯体が、低濃度のCO2を還元できる電気化学触媒として機能することを発見した(18年12月)。(詳細は、英国王立化学会誌「Chemical Science」に掲載された)
 化石資源の燃焼で排出されるCO2を電気エネルギーで還元する反応について、国内外で精力的に研究が行われている。研究で用いられるのは純粋なCO2であることが多いのに対し、実際に火力発電所や工場などの排ガスに含まれるCO2は約10%(数%~十数%)であることから、効率よくCO2だけを還元できる方法が求められている。
 研究グループは、ある種のレニウム錯体が、高いCO2捕集機能とCO2を電気化学的に還元する触媒機能を合わせ持っていることを見出した。捕集されたCO2は炭酸エステルとして錯体に固定化され、この錯体を電気化学触媒とすることで、低濃度(1%ほど)CO2でもそのままCOに還元できることが確認された。COは化学原料として有用で、水素と反応させることで人造石油を合成することができる、と言う。
 これにより、排ガスに含まれる低濃度のCO2が、太陽光など再生可能エネルギーから変換した電気エネルギーによって直接資源化できる可能性がでてきた。実現すれば、排ガスが直接資源化できる可能性があり、大量のエネルギーを必要とする濃縮過程を経なくてよくなる。地球温暖化抑制にも貢献する技術である、と言える。
 研究グループでは今後、この新触媒のCO2捕集能のさらなる向上や、卑金属錯体の利用も視野に入れた上で、実用的な技術へと展開させていきたいとしている。
 ◆レニウム(英: rhenium)
 元素記号は Re。原子番号75の元素。レアメタルの一種(地殻中の存在量は1ppb程度)。
 マンガン族元素の一つで、銀白色の金属(遷移金属)。
 比重は21.0、融点は3100 °C、沸点は5800 °C(融点、沸点とも異なる実験値あり)。常温、常圧で安定な結晶構造は、六方最密充填構造 (HCP)。単体では最も硬い金属である。
 ◆錯体(complex)
 金属イオンに配位子(ligand)と呼ばれる分子やイオンが結合したものが錯体。
 錯イオンも錯体と同じく金属イオンに配位子が結合したものであるが、その名の通りそれ自身がイオンであるため +又は-の電気を帯びている。しかし金属は通常陽イオンであり、陰イオンの配位子が結合すると電荷が打ち消しあって中性になるときがある。この場合はイオンとは呼べないので、このような中性のものも含めて錯体と呼ぶ。
 金属イオンとしてはNa+のような典型元素のときもあるし、Fe2+のような遷移金属の場合もある。配位子としてはCl-のような単純なイオンの場合もあれば、アンモニアのような簡単な中性分子の場合もあれば、もっともっと複雑な分子の場合もある。
 100年以上昔、錯体が最初に作られたころは錯体はどの様な構造の化合物なのかわからず 複雑なものということでcomplexと名付けられ、日本語では錯綜の錯を用いて錯体と訳された。