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イチジク近縁種イヌビワのゲノム配列を解読、病害に強い品種改良に

2020-03-05 | 科学・技術
 かずさDNA研究所、農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)果樹茶業研究部門、国立遺伝学研究所、広島県立総合技術研究所、福岡県農林業総合試験場は共同で、イチジク (Ficus carica)の近縁野生種であるイヌビワ(F. erecta)のゲノムを解読した。イヌビワはイチジクを枯らす病気に強い抵抗性をもつ。病気に強いイチジクの品種改良に役立つ。研究成果は、国際科学雑誌「The Plant Journal」に1月24日にオンライン公開。
  背景
 イチジク(Ficus carica)の近縁野生種で、日本では関西より西側の地域に自生しているイヌビワ (F. erecta)は、イチジクの生産に大きな被害を及ぼす「株枯(かぶかれ)病」に対する強い抵抗性を持つことが知られている。株枯病は、土壌微生物が原因で起こる病気で、苗木の移植などにより感染が拡大し、発病すると成木でも短期間で枯死してしまうことから、イチジク栽培に大きな被害をもたらしている。そこで、イヌビワとイチジクとを交雑することによってイヌビワのもつ株枯病抵抗性をイチジクに導入する試みが進められている。しかしながら、イチジクとイヌビワとの交雑が困難な上に、たとえ交雑できたとしても耐病性の判定に時間と労力がかかるため、幼苗での早期判別が重要である。さらに、イチジクは雌雄異株なので、品種育成では食用に適した雌株と交配に使用する雄株を早期に選抜する必要がある。
 このため、イチジク株枯病に抵抗性をもつ品種開発の効率化を目指して、イヌビワのゲノム解読を行った。なお、イチジクのゲノムは、2017 年にかずさDNA 研究所、福岡県農林業総合試験場、九州大学の共同研究により解読が完了している。
 この研究成果により、イチジクの株枯病真性抵抗性遺伝子を保持し、かつ、ゲノム背景がイチジクに近い雌株系統を幼苗段階で早期に選抜できるようになり、品種改良の効率化が期待されている。
 本研究でかずさDNA研究所は、研究立案、ゲノム配列の解読と解析、および研究の取りまとめを、農研機構はイヌビワとイチジクの後代の育苗を、国立遺伝学研究所(先進ゲノム支援)はPacBio Sequel を用いてゲノム解読における基盤情報を提供した。
  研究成果の概要と意義
 ① 連続した10,000 塩基以上の長いDNA 配列を一分子レベルで解析できるPacBio ロングリード技術を使用してイヌビワのゲノム配列データを収集し、3 億3160 万塩基対のゲノム配列を決定した。
 ② イヌビワのゲノム配列中に、51,806 の遺伝子を見出した。
 ③ イチジクとイヌビワの戻し交雑第1世代を用いてゲノム上の同じ領域の塩基配列の違いを容易に比較することができるddRAD-Seq 法により検出したDNA 多型を使用して遺伝地図上にゲノム配列を位置付け、株枯病真性抵抗性の候補遺伝子を同定し、DNA マーカーを開発した。
 ④ 塩基配列の違いをゲノム全体にわたって調べることができる全ゲノムジェノタイピング分析により、イヌビワの持つ株枯病抵抗性を保持し、かつ、ゲノム背景がイチジクに近づいた系統を幼苗段階で選抜できるようになった。
  将来の波及効果
 ① ゲノム情報をもとにした育種が可能になり、株枯病抵抗性をもつイチジク新品種の育成が加速される。
 ② イヌビワは株枯病抵抗性の他にも様々な病害虫に対する抵抗性を持つことが知られており、本ゲノム情報が基盤となってイチジク育種に役立つ遺伝子が今後も見つかることが期待できる。
 ◆用語解説
 〇ゲノム
 生物をその生物たらしめるのに必須な最小限の染色体のひとまとまり、またはDNA全体のことをいう。
 〇真性抵抗性遺伝子
 病害に対する抵抗性をもつ遺伝子は、病気に侵されない真性抵抗性と、病害の程度が状況によって異なる罹病性に分けられる。
 〇DNA 多型
 ゲノムDNA 中の塩基配列にみられる配列の差異(変異)。
 〇DNA マーカー
 遺伝子の目印となるDNA 配列。導入したい形質に関わる遺伝子をDNA マーカーの有無で確認して個体を選抜することができる。

 曇り、時々日が差し、時々小雨・・変化が大きい・・でも寒い。
 散歩での寂しい景色。枯れ木に採られずに残っているイチジクの実。
 実と言ったが、壺の形をした果嚢(かのう)である。”イチジク”(イチジクの仲間も)は、若いものの中で花が咲いて外からは花は見えずに実となる。このため、”イチジク”を漢語では”無花果”の字をあてた。日本語名の”イチジク”は中国語の「映日果」での音読”エイジツカ”の転訛とする説、1ヶ月で熟す(一熟:いちじゅく)からの説がある・・よく分からない。
 イチジク(無花果、映日果)
  樹、その果実も言う
 別名:伝来時に、蓬莱柿(ほうらいし)、南蛮柿(なんばんがき)、唐柿(とうがき)
 学名:Ficus carica
 クワ科イチジク属
 落葉高木
 原産地はアラビア南部。不老長寿の果物とも呼ばれる
 栽培は6千年前からと言われ、旧約聖書にも登場する果物
 インドから8~9世紀ごろに中国へ、中国から日本に17世紀に渡来した
 渡来したのは葉の切れ込みが浅い品種。明治以降のは葉の切れ込みの深い品種で、これを洋種として区別する
 雌雄異株だが、日本で栽培されているのは雌株のみ。受粉しなくても果嚢が熟す単為結実(たんいけつじつ)の品種である。
 実が熟すのは8月~9月頃