順天堂大学大学院医学研究科耳鼻咽喉科学の神谷和作准教授、田島勝利大学院生らの研究チームは、老人性難聴の初期に起こる新たなメカニズムを明らかにした(2月28日)。研究チームが内耳の「ギャップ結合」という分子の複合体に注目して解析したところ、この分子が老化に伴って崩壊・減少し、老人性難聴の進行に関与する可能性が示された。このメカニズムの解明により、当研究チームが現在開発中の内耳ギャップ結合を標的とした薬剤や遺伝子治療が老人性難聴にも適用できる可能性がある。本研究はネイチャー系列誌「Experimental & Molecular Medicine」に掲載。
本研究成果のポイント
〇老人性難聴の初期に起こる新たなメカニズムを明らかにした
〇老化に伴って内耳の「ギャップ結合」という構造体が疎水化・断片化し、タンパク質量が低下していた
〇ギャップ結合の異常は遺伝性難聴の原因と共通しており、同じ治療法が適用できる可能性
背景
老人性難聴(加齢性難聴)は老化に伴う進行的な聴力障害で、場合によっては40代で補聴器がを必要になる例も少なくない。最近では、認知症の発症リスクを高める最も大きな要因に中年期以降の聴力低下(老人性難聴)が含まれるとのデータが報告され、老人性難聴への早期予防が認知症予防の最重要項目の一つであると考えられている。
今回着目した内耳ギャップ結合は内耳のイオン環境を整える重要な分子構造であり、遺伝性難聴では、検出される遺伝性難聴の半数程度はギャップ結合遺伝子(GJB2遺伝子など)の異常によるコネキシン26遺伝子変異型難聴であることがわかってきた。
研究チームでは2014年に内耳ギャップ結合構造の崩壊による遺伝性難聴の発症メカニズムを解明、2015年にモデル動物の遺伝子治療実験によりギャップ結合の修復と聴力回復に成功、2016年にはiPS細胞から内耳ギャップ結合を作る基盤技術を開発し、内耳ギャップ結合を標的とした創薬や遺伝子治療の技術開発を進めています。その中で老人性難聴にもこれらの新しい治療法が役立つ可能性があると考え、メカニズムの解析を進めた。
内容
研究チームは、老人性難聴の初期の変化が病態進行のメカニズムや治療法を探る鍵となると考えた。まず、モデル動物(マウス)を用い聴力が急激に低下する時期を特定し、その際に内耳に起こる遺伝子やタンパク質の変化を観察した。従来の報告では、老人性難聴は内耳の有毛細胞と呼ばれる感覚細胞の脱落が主な原因という説があったが、病態初期には有毛細胞はまだ正常に存在していた。しかし、内耳の重要な分子構造であるギャップ結合の複合体とその構成成分であるコネキシン26とコネキシン30を解析したところ、若年期に比べてギャップ結合複合体の構造が著しく崩壊しており、構成成分であるコネキシン26とコネキシン30タンパク質の量も大きく減少していた。そこで、ギャップ結合複合体の構造を詳細に解析したところ、老化初期の内耳(32週齢)ではこの構造は分断され、2マイクロメートル程度と若年期(5マイクロメートル程度)に比べて大きく減少していた。さらにタンパク質量を測定すると老化初期の内耳では若年期の約40%に減少していた。次に、ギャップ結合タンパク質の生化学的な特性を調べたところ、老化の影響でギャップ結合は脂質に取り囲まれたり共存するようになるという性質の変化があることが分かった。
以上の結果から、この現象が安定したギャップ結合複合体を維持することを妨げて分解されやすくなり、タンパク質量が低下することでギャップ結合の劣化・老化につながっていることが考えられた。さらに、ギャップ結合機能の低下は、内耳が活動するためのリンパ液の電位の低下や、内耳の感覚細胞である有毛細胞の活動低下を伴うため、老化による聴力の低下に大きな影響を与えることが考えられる。
今後の展開
研究チームは内耳のギャップ結合を修復するための医薬品や遺伝子治療ベクターの開発を進めている。現在、老人性難聴の根本的治療法や治療薬はないが、将来的には、研究チームが開発中のギャップ結合タンパク質を安定化する薬剤やコネキシンを補充する遺伝子治療の開発によって老人性難聴の予防や聴力の回復が期待できる。
・ ・ ・
因みに、国立国際医療研究センターなどの調査でわかった、「喫煙は耳の聞こえにも悪い影響をもたらすらしい。」
追跡より、年齢や高血圧、糖尿病の有無などを踏まえて分析すると、たばこの本数が多いほど聴力低下の傾向がある。
〇1日21本以上吸う人は吸わない人に比べて高音域で1.7倍、低音域で1.4倍だった。
〇調査時に5年以上禁煙していた人は、聴力低下のリスクは吸わない人とほとんどかわらなかった。
〇中年期の聴力の低下は、認知症にかかるリスクを高めることも指摘されている。
◆用語説明
〇老人性難聴
加齢性難聴(老人性難聴)は、加齢によって起こる難聴で、「年齢以外に特別な原因がないもの」である。加齢性難聴は誰でも起こる可能性がある。
一般的に50歳頃から始まり、場合によっては40代で補聴器が必要になる例も少なくない。65歳を超えると急に増加するといわれる。その頻度は、60歳代前半では5~10人に1人、60歳代後半では3人に1人、75歳以上になると7割以上との報告がある。
最近では、認知症の発症リスクを高める最も大きな要因は中年期以降の聴力低下(老人性難聴)であるとのデータが医学誌Lancetで報告され、認知症予防の観点からも老人性難聴への早期予防が最重要項目の一つであると考えられている。
〇ギャップ結合
コネキシンは6個の集合体により細胞膜に分子の通り道を作り、隣の細胞の集合体と連結して細胞と細胞をつなぐトンネルを作る。このギャップ結合は分子量約1000以下の低分子やイオンを濃度勾配によって透過させ、細胞間の物質輸送を可能とする。
〇コネキシン26・GJB2変異遺伝性難聴(コネキシン26遺伝子変異型難聴)
コネキシン26は遺伝子GJB2(GAP JUNCTION PROTEIN, BETA-2)により合成され、内耳のギャップ結合を構成する主要タンパク質の一つ。最も高頻度に検出される遺伝性難聴の原因因子。 GJB2変異遺伝性難聴(コネキシン26遺伝子変異型難聴)は、我が国では遺伝性難聴の50%以上もの割合を占めるとされており、常染色体劣性と常染色体優性の遺伝形式を持つ感音性難聴。
晴れ~曇り。気温が昨日より高くなった。昨日の最高気温は10℃以下で、今日は14℃で最低気温は8℃・・春の気温だよ。
畑に行った。梅に花が咲き出している。花色は白~桃色だ。ひと月前に榴岡天満宮の梅の開花を見たが、畑での開花を見ると感激。
”ウメ”が満開となると、次の開花は桜(吉野桜)だね。”ウメ””サクラ”、どちらも花見は良いね・・桜が咲くころに病が収まってくれ・。
奈良時代に「花」と言えば梅(の花)。別名も、風待草(かぜまちぐさ)・好文木(こうぶんぼく)・春告草(はるつげぐさ)・・などと多い。平安時代中頃から、梅より桜(の花)が好まれるようになり、江戸時代以降は花といえば「桜」となる。
ウメ(梅)
梅の果実も梅と言う
学名:Prunus mume
バラ科サクラ属、落葉高木
原産地は中国、奈良時代の遣隋使か遣唐使が持って来たと言う
開花時期は1月~4月
種類により開花期が異なる
梅には300種以上の品種があり、野梅系・紅梅系・豊後系の3系統に分類される
本研究成果のポイント
〇老人性難聴の初期に起こる新たなメカニズムを明らかにした
〇老化に伴って内耳の「ギャップ結合」という構造体が疎水化・断片化し、タンパク質量が低下していた
〇ギャップ結合の異常は遺伝性難聴の原因と共通しており、同じ治療法が適用できる可能性
背景
老人性難聴(加齢性難聴)は老化に伴う進行的な聴力障害で、場合によっては40代で補聴器がを必要になる例も少なくない。最近では、認知症の発症リスクを高める最も大きな要因に中年期以降の聴力低下(老人性難聴)が含まれるとのデータが報告され、老人性難聴への早期予防が認知症予防の最重要項目の一つであると考えられている。
今回着目した内耳ギャップ結合は内耳のイオン環境を整える重要な分子構造であり、遺伝性難聴では、検出される遺伝性難聴の半数程度はギャップ結合遺伝子(GJB2遺伝子など)の異常によるコネキシン26遺伝子変異型難聴であることがわかってきた。
研究チームでは2014年に内耳ギャップ結合構造の崩壊による遺伝性難聴の発症メカニズムを解明、2015年にモデル動物の遺伝子治療実験によりギャップ結合の修復と聴力回復に成功、2016年にはiPS細胞から内耳ギャップ結合を作る基盤技術を開発し、内耳ギャップ結合を標的とした創薬や遺伝子治療の技術開発を進めています。その中で老人性難聴にもこれらの新しい治療法が役立つ可能性があると考え、メカニズムの解析を進めた。
内容
研究チームは、老人性難聴の初期の変化が病態進行のメカニズムや治療法を探る鍵となると考えた。まず、モデル動物(マウス)を用い聴力が急激に低下する時期を特定し、その際に内耳に起こる遺伝子やタンパク質の変化を観察した。従来の報告では、老人性難聴は内耳の有毛細胞と呼ばれる感覚細胞の脱落が主な原因という説があったが、病態初期には有毛細胞はまだ正常に存在していた。しかし、内耳の重要な分子構造であるギャップ結合の複合体とその構成成分であるコネキシン26とコネキシン30を解析したところ、若年期に比べてギャップ結合複合体の構造が著しく崩壊しており、構成成分であるコネキシン26とコネキシン30タンパク質の量も大きく減少していた。そこで、ギャップ結合複合体の構造を詳細に解析したところ、老化初期の内耳(32週齢)ではこの構造は分断され、2マイクロメートル程度と若年期(5マイクロメートル程度)に比べて大きく減少していた。さらにタンパク質量を測定すると老化初期の内耳では若年期の約40%に減少していた。次に、ギャップ結合タンパク質の生化学的な特性を調べたところ、老化の影響でギャップ結合は脂質に取り囲まれたり共存するようになるという性質の変化があることが分かった。
以上の結果から、この現象が安定したギャップ結合複合体を維持することを妨げて分解されやすくなり、タンパク質量が低下することでギャップ結合の劣化・老化につながっていることが考えられた。さらに、ギャップ結合機能の低下は、内耳が活動するためのリンパ液の電位の低下や、内耳の感覚細胞である有毛細胞の活動低下を伴うため、老化による聴力の低下に大きな影響を与えることが考えられる。
今後の展開
研究チームは内耳のギャップ結合を修復するための医薬品や遺伝子治療ベクターの開発を進めている。現在、老人性難聴の根本的治療法や治療薬はないが、将来的には、研究チームが開発中のギャップ結合タンパク質を安定化する薬剤やコネキシンを補充する遺伝子治療の開発によって老人性難聴の予防や聴力の回復が期待できる。
・ ・ ・
因みに、国立国際医療研究センターなどの調査でわかった、「喫煙は耳の聞こえにも悪い影響をもたらすらしい。」
追跡より、年齢や高血圧、糖尿病の有無などを踏まえて分析すると、たばこの本数が多いほど聴力低下の傾向がある。
〇1日21本以上吸う人は吸わない人に比べて高音域で1.7倍、低音域で1.4倍だった。
〇調査時に5年以上禁煙していた人は、聴力低下のリスクは吸わない人とほとんどかわらなかった。
〇中年期の聴力の低下は、認知症にかかるリスクを高めることも指摘されている。
◆用語説明
〇老人性難聴
加齢性難聴(老人性難聴)は、加齢によって起こる難聴で、「年齢以外に特別な原因がないもの」である。加齢性難聴は誰でも起こる可能性がある。
一般的に50歳頃から始まり、場合によっては40代で補聴器が必要になる例も少なくない。65歳を超えると急に増加するといわれる。その頻度は、60歳代前半では5~10人に1人、60歳代後半では3人に1人、75歳以上になると7割以上との報告がある。
最近では、認知症の発症リスクを高める最も大きな要因は中年期以降の聴力低下(老人性難聴)であるとのデータが医学誌Lancetで報告され、認知症予防の観点からも老人性難聴への早期予防が最重要項目の一つであると考えられている。
〇ギャップ結合
コネキシンは6個の集合体により細胞膜に分子の通り道を作り、隣の細胞の集合体と連結して細胞と細胞をつなぐトンネルを作る。このギャップ結合は分子量約1000以下の低分子やイオンを濃度勾配によって透過させ、細胞間の物質輸送を可能とする。
〇コネキシン26・GJB2変異遺伝性難聴(コネキシン26遺伝子変異型難聴)
コネキシン26は遺伝子GJB2(GAP JUNCTION PROTEIN, BETA-2)により合成され、内耳のギャップ結合を構成する主要タンパク質の一つ。最も高頻度に検出される遺伝性難聴の原因因子。 GJB2変異遺伝性難聴(コネキシン26遺伝子変異型難聴)は、我が国では遺伝性難聴の50%以上もの割合を占めるとされており、常染色体劣性と常染色体優性の遺伝形式を持つ感音性難聴。
晴れ~曇り。気温が昨日より高くなった。昨日の最高気温は10℃以下で、今日は14℃で最低気温は8℃・・春の気温だよ。
畑に行った。梅に花が咲き出している。花色は白~桃色だ。ひと月前に榴岡天満宮の梅の開花を見たが、畑での開花を見ると感激。
”ウメ”が満開となると、次の開花は桜(吉野桜)だね。”ウメ””サクラ”、どちらも花見は良いね・・桜が咲くころに病が収まってくれ・。
奈良時代に「花」と言えば梅(の花)。別名も、風待草(かぜまちぐさ)・好文木(こうぶんぼく)・春告草(はるつげぐさ)・・などと多い。平安時代中頃から、梅より桜(の花)が好まれるようになり、江戸時代以降は花といえば「桜」となる。
ウメ(梅)
梅の果実も梅と言う
学名:Prunus mume
バラ科サクラ属、落葉高木
原産地は中国、奈良時代の遣隋使か遣唐使が持って来たと言う
開花時期は1月~4月
種類により開花期が異なる
梅には300種以上の品種があり、野梅系・紅梅系・豊後系の3系統に分類される