東京工業大学 元素戦略研究センター長の細野秀雄栄誉教授、同センターの叶天南特任助教、北野政明准教授らは、カルシウムとアルミニウムの酸化物C12A7(12CaO・7Al2O3)がサブナノサイズのケージから構成されていて、その最表面ではケージ構造が破れていることに着目し、その部分に白金原子を入れ込んで安定的に固定した単原子触媒の開発に成功した。
遷移金属の単原子触媒は、原子の周りの結合が不飽和なために、バルクの金属に比べて圧倒的に触媒活性が高いことや、金属原子の利用効率が極めて高いことから、活発な研究がおこなわれている。しかし、高温にすると担持された単原子金属が凝集してしまい、活性が低下することが問題であった。本研究成果は、この課題を克服するものである。
この成果は英国科学誌Nature Communicationsにて2月24日にオンライン公開。
要点
〇白金原子を担持体表面のケージ構造の破れ部分に入れ込むことで安定に固定した、新たな単原子触媒の開発に成功
〇従来の単原子触媒で問題とされていた、高温で原子が凝集してしまうという欠点を克服
〇担持体として12CaO・7Al2O3を用いることで、CaOやAl2O3より桁違いに高い活性と安定性を実現
背景
触媒として有効に機能する物質には、白金やロジウムなど高価な貴金属が多い。そうした金属の使用量を大幅に減少させる方法として、単原子として固体表面に固定(担持)する単原子触媒が熱心に研究されている。この単原子触媒は、バルクの金属と比べて原子の周りの結合が不飽和なので、高い活性が得られる。しかしほとんどの場合、担持された単原子は温度をあげると凝集し、通常の金属ナノ粒子触媒と同じになってしまうという欠点がある。いかにして単原子金属を固体表面に安定的に固定するかが技術的課題となっていた。
本研究のアプローチ
この課題に対して本研究では、単原子がちょうど収まる大きさの極小のケージに、目的とする金属の単原子を入れ込むことを目指した。対象とする金属には、最も代表的な貴金属触媒である白金を、そして触媒性能を左右する、白金を担持する固体(担持体)には、12CaO・7Al2O3(以下「C12A7」)を選択した。C12A7は、直径がサブナノメートルサイズの正に帯電したケージが3次元的に繋がった結晶構造をしており、これまでの基礎的研究によって、その最表面はゲージが破れた構造をしていることがわかっている。今回の研究の鍵となったのは、この破れたケージに白金原子を入れ込むことであった。そこで、[PtCl4]2-というアニオンの大きさが、破れたケージの入り口の大きさよりも少し小さいことに注目し、まずこのアニオンをケージの入口に入れ込んで、その後熱還元によってPt原子にして、単原子触媒を調製する方法を考えた。
単原子白金触媒の確認
調製した触媒について、高分解能電子顕微鏡(STEM)と広域X線吸収微細構造(EXAFS)によって、目指した通りに白金原子がC12A7表面に担持されていることが確認された。ケージのサイズより大きなPt錯体分子アニオンを用いた場合には、このような単原子構造は確認できなかった。また、通常の単原子触媒では金属の凝集が生じてしまう600 ℃という高温で加熱処理を行っても、単原子構造が保持されていることがわかった。
触媒性能
触媒反応としては、工業的に重要な様々な置換基を有するニトロベンゼン分子のNO2基の選択的還元を検討した。この水素化反応では、水素分子の開裂が律速段階となるが、C12A7骨格の酸素イオンによって配位された白金原子の環境は、水素が2つの水素原子になるよりも、H+とH-にヘテロリティックに解離するのに有利であると考えられる。実験では予想通り、分極したNO2基が H+とH-によって選択的に水素化され、目的分子が高収率で得られた。また、触媒の活性サイトの性能を示す指標であるTOF(Turnover Frequency)は、C12A7の構成成分であるCaOやAl2O3の上に担持した場合よりも桁違いに高い活性を示し、さらにこの触媒が熱的にも格段に安定なことがわかった。
今後の展開
C12A7は、市販のアルミナセメントの主な構成成分の一つで、安価でしかも環境調和性に優れている。これまでの走査トンネル顕微鏡観察による表面構造に関する研究で、ケージの破れを修復する処理方法も確立されている。また、表面再構成を伴う電子状態の変化についても研究が既に終了している。よって今後は、用途に応じた単原子触媒の設計が可能になる段階に進んでいけると期待している。本研究は、ありふれた元素からなる安価な物質と高価な貴金属の効率的利用を可能にしたものであり、「元素戦略」に対応した成果だといえる。
◆用語説明
〇広域X線吸収微細構造(EXAFS)
原子によるX線の吸収端から50 eV~1,000 eV程度までの範囲に観測される振動のこと。吸収端を与える原子から飛び出した電子(光電子)があちこちに衝突した結果、電子の波が重なりあって生じる。これを解析することで、どんな元素が、どのくらいの距離に、どのくらい存在するかなどの情報を得ることができる。
〇HAADF-STEM像
細く絞った電子線を試料に走査させながら当て、透過した電子のうち、大きな角度で散乱したものを環状の検出器で検出した像。原子番号に比例したコントラストが得られる。この試料ではカルシウム、酸素、アルミニウムに比べ、白金の像が強調されて観測される。
〇TOF(Turnover Frequency、触媒回転数)
1つの触媒サイトにおいて、単位時間あたりに生成物に変換できる分子数の最大値を表す。活性サイト当たりの触媒の活性の大きさの指標。
◆白金(Pt)の埋蔵量はわずか8万t
Ptは希少金属であり,世界全体の推定埋蔵量は約8万t程度と見られる。価格も3000円/gと高価な貴金属である。
自動車向けの現状の白金使用量のままでは、1000万台の燃料電池車を作るとなると、世界中の白金を使っても足りない、という試算されている。
天気は晴れ。少し風が強く寒い。
コンクリート塀際の小さな花壇。”ミチタネツケバナ”が小さな白い花を付けている。茎に沿って鋭角に細長い棒状の実(長角果)、小葉は小さく楕円形から円形。
タネツケバナ(種漬花)の名の由来は、種籾(たねもみ)を水に浸ける頃に花が咲くからとの説と、実が熟すと種を四方に飛ばして発芽させて繁殖力が強から(種付花)の説がある・・前者説が有力かな。田圃などの湿った所で多く見られるのは”タネツケバナ(種漬花)”、道(路傍)などのやや乾燥した所で育つのは”ミチタネツケバナ(道種漬花)”。見た花は、雄蕊が4本で、茎にほとんど毛がないので、”ミチタネツケバナ(道種漬花)”・・と思う。
ミチタネツケバナ(道種漬花、路種漬花)
アブラナ科タネツケバナ属
越年草または一年草
ヨーロッパ原産の帰化植物
渡来したのは新しく、1970年代と言われる
タネツケバナ(種漬花)は江戸時代に渡来したと思われる
開花時期は2月~3月
花は小さく白色、アブラナ科特有の四弁花(十字花)
果実は直立して花を挟んでいる
遷移金属の単原子触媒は、原子の周りの結合が不飽和なために、バルクの金属に比べて圧倒的に触媒活性が高いことや、金属原子の利用効率が極めて高いことから、活発な研究がおこなわれている。しかし、高温にすると担持された単原子金属が凝集してしまい、活性が低下することが問題であった。本研究成果は、この課題を克服するものである。
この成果は英国科学誌Nature Communicationsにて2月24日にオンライン公開。
要点
〇白金原子を担持体表面のケージ構造の破れ部分に入れ込むことで安定に固定した、新たな単原子触媒の開発に成功
〇従来の単原子触媒で問題とされていた、高温で原子が凝集してしまうという欠点を克服
〇担持体として12CaO・7Al2O3を用いることで、CaOやAl2O3より桁違いに高い活性と安定性を実現
背景
触媒として有効に機能する物質には、白金やロジウムなど高価な貴金属が多い。そうした金属の使用量を大幅に減少させる方法として、単原子として固体表面に固定(担持)する単原子触媒が熱心に研究されている。この単原子触媒は、バルクの金属と比べて原子の周りの結合が不飽和なので、高い活性が得られる。しかしほとんどの場合、担持された単原子は温度をあげると凝集し、通常の金属ナノ粒子触媒と同じになってしまうという欠点がある。いかにして単原子金属を固体表面に安定的に固定するかが技術的課題となっていた。
本研究のアプローチ
この課題に対して本研究では、単原子がちょうど収まる大きさの極小のケージに、目的とする金属の単原子を入れ込むことを目指した。対象とする金属には、最も代表的な貴金属触媒である白金を、そして触媒性能を左右する、白金を担持する固体(担持体)には、12CaO・7Al2O3(以下「C12A7」)を選択した。C12A7は、直径がサブナノメートルサイズの正に帯電したケージが3次元的に繋がった結晶構造をしており、これまでの基礎的研究によって、その最表面はゲージが破れた構造をしていることがわかっている。今回の研究の鍵となったのは、この破れたケージに白金原子を入れ込むことであった。そこで、[PtCl4]2-というアニオンの大きさが、破れたケージの入り口の大きさよりも少し小さいことに注目し、まずこのアニオンをケージの入口に入れ込んで、その後熱還元によってPt原子にして、単原子触媒を調製する方法を考えた。
単原子白金触媒の確認
調製した触媒について、高分解能電子顕微鏡(STEM)と広域X線吸収微細構造(EXAFS)によって、目指した通りに白金原子がC12A7表面に担持されていることが確認された。ケージのサイズより大きなPt錯体分子アニオンを用いた場合には、このような単原子構造は確認できなかった。また、通常の単原子触媒では金属の凝集が生じてしまう600 ℃という高温で加熱処理を行っても、単原子構造が保持されていることがわかった。
触媒性能
触媒反応としては、工業的に重要な様々な置換基を有するニトロベンゼン分子のNO2基の選択的還元を検討した。この水素化反応では、水素分子の開裂が律速段階となるが、C12A7骨格の酸素イオンによって配位された白金原子の環境は、水素が2つの水素原子になるよりも、H+とH-にヘテロリティックに解離するのに有利であると考えられる。実験では予想通り、分極したNO2基が H+とH-によって選択的に水素化され、目的分子が高収率で得られた。また、触媒の活性サイトの性能を示す指標であるTOF(Turnover Frequency)は、C12A7の構成成分であるCaOやAl2O3の上に担持した場合よりも桁違いに高い活性を示し、さらにこの触媒が熱的にも格段に安定なことがわかった。
今後の展開
C12A7は、市販のアルミナセメントの主な構成成分の一つで、安価でしかも環境調和性に優れている。これまでの走査トンネル顕微鏡観察による表面構造に関する研究で、ケージの破れを修復する処理方法も確立されている。また、表面再構成を伴う電子状態の変化についても研究が既に終了している。よって今後は、用途に応じた単原子触媒の設計が可能になる段階に進んでいけると期待している。本研究は、ありふれた元素からなる安価な物質と高価な貴金属の効率的利用を可能にしたものであり、「元素戦略」に対応した成果だといえる。
◆用語説明
〇広域X線吸収微細構造(EXAFS)
原子によるX線の吸収端から50 eV~1,000 eV程度までの範囲に観測される振動のこと。吸収端を与える原子から飛び出した電子(光電子)があちこちに衝突した結果、電子の波が重なりあって生じる。これを解析することで、どんな元素が、どのくらいの距離に、どのくらい存在するかなどの情報を得ることができる。
〇HAADF-STEM像
細く絞った電子線を試料に走査させながら当て、透過した電子のうち、大きな角度で散乱したものを環状の検出器で検出した像。原子番号に比例したコントラストが得られる。この試料ではカルシウム、酸素、アルミニウムに比べ、白金の像が強調されて観測される。
〇TOF(Turnover Frequency、触媒回転数)
1つの触媒サイトにおいて、単位時間あたりに生成物に変換できる分子数の最大値を表す。活性サイト当たりの触媒の活性の大きさの指標。
◆白金(Pt)の埋蔵量はわずか8万t
Ptは希少金属であり,世界全体の推定埋蔵量は約8万t程度と見られる。価格も3000円/gと高価な貴金属である。
自動車向けの現状の白金使用量のままでは、1000万台の燃料電池車を作るとなると、世界中の白金を使っても足りない、という試算されている。
天気は晴れ。少し風が強く寒い。
コンクリート塀際の小さな花壇。”ミチタネツケバナ”が小さな白い花を付けている。茎に沿って鋭角に細長い棒状の実(長角果)、小葉は小さく楕円形から円形。
タネツケバナ(種漬花)の名の由来は、種籾(たねもみ)を水に浸ける頃に花が咲くからとの説と、実が熟すと種を四方に飛ばして発芽させて繁殖力が強から(種付花)の説がある・・前者説が有力かな。田圃などの湿った所で多く見られるのは”タネツケバナ(種漬花)”、道(路傍)などのやや乾燥した所で育つのは”ミチタネツケバナ(道種漬花)”。見た花は、雄蕊が4本で、茎にほとんど毛がないので、”ミチタネツケバナ(道種漬花)”・・と思う。
ミチタネツケバナ(道種漬花、路種漬花)
アブラナ科タネツケバナ属
越年草または一年草
ヨーロッパ原産の帰化植物
渡来したのは新しく、1970年代と言われる
タネツケバナ(種漬花)は江戸時代に渡来したと思われる
開花時期は2月~3月
花は小さく白色、アブラナ科特有の四弁花(十字花)
果実は直立して花を挟んでいる