神戸医療産業都市推進機構先端医療研究センター脳循環代謝研究部の研究グループは、投与した造血幹細胞が血管内皮細胞に「細胞内で欠乏しているエネルギー源(グルコースなど)」をギャップ結合を介して直接供給することが、障害されている血管内皮細胞の再生をスタートさせるトリガーであることを発見した。
成果は、幹細胞が障害された細胞に分化あるいはサイトカインなどで「命令」を与えて再生をスタートさせているのではなく、幹細胞が障害された細胞で欠乏している「エネルギー源」を直接供与することが再生をスタートさせる鍵であることを示しており、再生医療において全く新しいパラダイムが存在することを明らかにした。
研究成果は、2020年2月21日に、国際学術誌「Stroke」にオンライン掲載。
背景
造血幹細胞を使った再生医療は、四肢虚血、心筋梗塞、脳梗塞、新生児脳性麻痺など、多くの治療困難な疾患を対象に行われてきた。私達のグループでも、難治性四肢虚血患者に対する自己骨髄単核球細胞移植の臨床試験(Taguchi et al. Eur J Vasc Endovasc Surg. 2003)、重症心原性脳塞栓症患者に対する自己骨髄単核球細胞移植の臨床試験(Taguchi et al. Stem Cells Dev. 2015)を行い、その治療効果を示してきた。しかしこれらの造血幹細胞移植がどのように血管再生を促進し、脳神経の回復まで行うのかについて、造血幹細胞の血管内皮細胞への分化や、サイトカインのパラクライン効果などが提唱されてきたが、否定的な結果も数多く報告されており、その本質は全く不明であった。
研究手法・成果
まず、血管内皮細胞と造血幹細胞を一緒に培養することで、血管内皮細胞にどのような変化が起こっているのかを検討した。その結果、血管内皮細胞と造血幹細胞が接する状態で培養した場合のみ、血管内皮細胞の活性化が見られ、細胞同士が直接接することで、何らかの影響を与えていることがわかった。
次に、骨髄組織における造血幹細胞と血管内皮細胞の直接的な接着に重要であるギャップ結合に着目した。細胞と細胞は、各々の細胞が細胞膜で区切られているため、細胞の中身(細胞質)が直接的に移動することは基本的にはない。しかし、ギャップ結合は細胞質と細胞質を直接つなぐ細いトンネルのような働きを有しており、細胞間がギャップ結合で繋がると、分子量1500以下の低分子であれば濃度勾配に従って移動することが知られている。そこで造血幹細胞に低分子の蛍光物質を封入し、脳梗塞モデルマウスに投与したところ、造血幹細胞に封入した蛍光物質が脳梗塞巣の障害された血管に移行していることがわかった。さらに、造血幹細胞から血管内皮細胞へギャップ結合を通って流れる分子の一つがグルコースであり、グルコースの供給がトリガーとなり、血管内皮細胞では低酸素誘導因子(HIF1-α)の活性化が起こり、その後の血管再生起点となっていることを明らかにした。
波及効果
我々が発見したメカニズムは、宇宙ステーション/宇宙船に例えるなら、ダメージを負った宇宙ステーション(障害を受けた脳組織)の救助に小さな宇宙船(造血幹細胞)を派遣→宇宙ステーションとドッキング→狭いハッチ(ギャップ結合)を開けて連結→ハッチから修復に必要物資を搬入→ダメージを負った宇宙ステーションの修復(再生)を促進、という救助システムと全く同じであった。幹細胞を使った再生医療のメカニズムが、このような合理的な修復システムに基づいていたことは、大きな発見で、再生医療に新しいパラダイムを提示するものである。
今回の研究では、幹細胞による障害細胞への直接的な低分子化合物供給の重要性が明らかになり、投与幹細胞の品質管理や細胞機能の向上、さらにメカニズムの解明により、幹細胞が不要な再生医療の可能性も開かれたと考えている。
今後の予定
今回の研究は、理化学研究所(神戸市)、日本赤十字社/医薬基盤研(箕面市)、フラウンホーファーIME研究所(ドイツ)、ウォーリック大学(英国)との共同研究の成果である。今後も、これらの研究者らと①幹細胞の機能向上研究、および②幹細胞が不要な再生医療開発を行い、脳梗塞患者および認知症患者に対する新規治療法開発を続けていく予定である。
◆用語解説
〇ギャップ結合
接触する細胞同士をつなぎ分子量1500以下の小さい分子やイオンを通過させる細胞間結合。細胞の細胞膜にはコネクソンと呼ばれるトンネルのようなタンパクが存在し、接触する細胞のコネクソン同士が繋がると、小さい分子やイオンが隣接細胞の細胞質から細胞質へと直接移動する。
〇低酸素誘導因子(HIF1-α)
細胞が酸素不足状態に陥った際に誘導されてくるタンパク質。ヒト遺伝子の約2%が直接あるいは間接的に制御されており、血管再生にも重要な役割を果たしている。
今日の天気は、曇り~小雨~曇り、時々晴れ。ハッキリしない天気だな。
散歩道沿いの玄関前の小さなお庭に、”フッキソウ”の花が咲いている。今年の冬は暖冬だから早く咲きだしたのかな。
茎頂に穂状花序の雄花、雌花が付く。雄花・雌花ともに白色で花弁が無く、雄花は茶色の太い4本の雄蕊を持ち、雌花は2本の花柱を持った子房がある。雄花は花序の先に沢山で、雌花はその下に付く。多数の葉が茎にラセン状に付き、荒い鋸歯を持つ光沢のある革質の葉で、密に互生して輪生に近く見える着き方である。
名(フッキソウ:富貴草)の由来は、青葉が絶えない常緑性から、その姿を繁栄に擬えたとされる。別名は、キッショウソウ(吉祥草)、キチジソウ(吉事草)と縁起が良い。因みに、ユリ科には”キチジョウソウ”がある・・吉祥草:草・常緑、学名:Reineckea carnea、赤い実を付ける。
ツゲ科フッキソウ属は東アジアと北アメリカに5種が分布する匍匐性の常緑の小低木である。”草”のように見えるが、地下茎が横に這って繁茂する小低木である・・木だ!!。
フッキソウ(富貴草)
別名:吉祥草(きっしょうそう)、吉事草(きちじそう)。
学名:Pachysandra terminalis
ツゲ科フッキソウ属
常緑小低木
原産地は日本、中国
開花時期は4月~5月
成果は、幹細胞が障害された細胞に分化あるいはサイトカインなどで「命令」を与えて再生をスタートさせているのではなく、幹細胞が障害された細胞で欠乏している「エネルギー源」を直接供与することが再生をスタートさせる鍵であることを示しており、再生医療において全く新しいパラダイムが存在することを明らかにした。
研究成果は、2020年2月21日に、国際学術誌「Stroke」にオンライン掲載。
背景
造血幹細胞を使った再生医療は、四肢虚血、心筋梗塞、脳梗塞、新生児脳性麻痺など、多くの治療困難な疾患を対象に行われてきた。私達のグループでも、難治性四肢虚血患者に対する自己骨髄単核球細胞移植の臨床試験(Taguchi et al. Eur J Vasc Endovasc Surg. 2003)、重症心原性脳塞栓症患者に対する自己骨髄単核球細胞移植の臨床試験(Taguchi et al. Stem Cells Dev. 2015)を行い、その治療効果を示してきた。しかしこれらの造血幹細胞移植がどのように血管再生を促進し、脳神経の回復まで行うのかについて、造血幹細胞の血管内皮細胞への分化や、サイトカインのパラクライン効果などが提唱されてきたが、否定的な結果も数多く報告されており、その本質は全く不明であった。
研究手法・成果
まず、血管内皮細胞と造血幹細胞を一緒に培養することで、血管内皮細胞にどのような変化が起こっているのかを検討した。その結果、血管内皮細胞と造血幹細胞が接する状態で培養した場合のみ、血管内皮細胞の活性化が見られ、細胞同士が直接接することで、何らかの影響を与えていることがわかった。
次に、骨髄組織における造血幹細胞と血管内皮細胞の直接的な接着に重要であるギャップ結合に着目した。細胞と細胞は、各々の細胞が細胞膜で区切られているため、細胞の中身(細胞質)が直接的に移動することは基本的にはない。しかし、ギャップ結合は細胞質と細胞質を直接つなぐ細いトンネルのような働きを有しており、細胞間がギャップ結合で繋がると、分子量1500以下の低分子であれば濃度勾配に従って移動することが知られている。そこで造血幹細胞に低分子の蛍光物質を封入し、脳梗塞モデルマウスに投与したところ、造血幹細胞に封入した蛍光物質が脳梗塞巣の障害された血管に移行していることがわかった。さらに、造血幹細胞から血管内皮細胞へギャップ結合を通って流れる分子の一つがグルコースであり、グルコースの供給がトリガーとなり、血管内皮細胞では低酸素誘導因子(HIF1-α)の活性化が起こり、その後の血管再生起点となっていることを明らかにした。
波及効果
我々が発見したメカニズムは、宇宙ステーション/宇宙船に例えるなら、ダメージを負った宇宙ステーション(障害を受けた脳組織)の救助に小さな宇宙船(造血幹細胞)を派遣→宇宙ステーションとドッキング→狭いハッチ(ギャップ結合)を開けて連結→ハッチから修復に必要物資を搬入→ダメージを負った宇宙ステーションの修復(再生)を促進、という救助システムと全く同じであった。幹細胞を使った再生医療のメカニズムが、このような合理的な修復システムに基づいていたことは、大きな発見で、再生医療に新しいパラダイムを提示するものである。
今回の研究では、幹細胞による障害細胞への直接的な低分子化合物供給の重要性が明らかになり、投与幹細胞の品質管理や細胞機能の向上、さらにメカニズムの解明により、幹細胞が不要な再生医療の可能性も開かれたと考えている。
今後の予定
今回の研究は、理化学研究所(神戸市)、日本赤十字社/医薬基盤研(箕面市)、フラウンホーファーIME研究所(ドイツ)、ウォーリック大学(英国)との共同研究の成果である。今後も、これらの研究者らと①幹細胞の機能向上研究、および②幹細胞が不要な再生医療開発を行い、脳梗塞患者および認知症患者に対する新規治療法開発を続けていく予定である。
◆用語解説
〇ギャップ結合
接触する細胞同士をつなぎ分子量1500以下の小さい分子やイオンを通過させる細胞間結合。細胞の細胞膜にはコネクソンと呼ばれるトンネルのようなタンパクが存在し、接触する細胞のコネクソン同士が繋がると、小さい分子やイオンが隣接細胞の細胞質から細胞質へと直接移動する。
〇低酸素誘導因子(HIF1-α)
細胞が酸素不足状態に陥った際に誘導されてくるタンパク質。ヒト遺伝子の約2%が直接あるいは間接的に制御されており、血管再生にも重要な役割を果たしている。
今日の天気は、曇り~小雨~曇り、時々晴れ。ハッキリしない天気だな。
散歩道沿いの玄関前の小さなお庭に、”フッキソウ”の花が咲いている。今年の冬は暖冬だから早く咲きだしたのかな。
茎頂に穂状花序の雄花、雌花が付く。雄花・雌花ともに白色で花弁が無く、雄花は茶色の太い4本の雄蕊を持ち、雌花は2本の花柱を持った子房がある。雄花は花序の先に沢山で、雌花はその下に付く。多数の葉が茎にラセン状に付き、荒い鋸歯を持つ光沢のある革質の葉で、密に互生して輪生に近く見える着き方である。
名(フッキソウ:富貴草)の由来は、青葉が絶えない常緑性から、その姿を繁栄に擬えたとされる。別名は、キッショウソウ(吉祥草)、キチジソウ(吉事草)と縁起が良い。因みに、ユリ科には”キチジョウソウ”がある・・吉祥草:草・常緑、学名:Reineckea carnea、赤い実を付ける。
ツゲ科フッキソウ属は東アジアと北アメリカに5種が分布する匍匐性の常緑の小低木である。”草”のように見えるが、地下茎が横に這って繁茂する小低木である・・木だ!!。
フッキソウ(富貴草)
別名:吉祥草(きっしょうそう)、吉事草(きちじそう)。
学名:Pachysandra terminalis
ツゲ科フッキソウ属
常緑小低木
原産地は日本、中国
開花時期は4月~5月