自殺か他殺か、その答えは当分(あるいは永久に)出ないだろう。死亡報道の直後からモスクワから聞こえてくるのは、事業の失敗と家族問題(離婚)により将来に絶望した末の自殺というシナリオのみ。換言すれば、プーチン政権としては自殺で早期に記憶の彼方に押しやってしまいたい意図(プーチンにとって天敵であった彼の死を聞けば誰でもロシアの謀殺を疑う)が透けている。たしかに、同じく英国への亡命者でかつてパートナーだったアビラモビッチとの巨額訴訟に敗訴して手元の骨董品まで換金していたという事だから絶望説はもっともらしく聞こえる。
一方、イギリス政府としては自殺よりも他殺(謀殺)のほうが都合が良いのだろうかという事だが、最近のロシアの横暴ぶりには、イギリスとしてもいつまでも目をつむり続けるわけにはいかず、ここは徹底的に調査するのではないか。そして、首尾よく何らかの対ロシア交渉上の手札(ロシアエージェント関与の物証など)を手にすることが出来れば儲けものである。いずれにせよ、これまでのこの種謀殺事件と同様、真相は闇から闇へ葬られることになる。
エリツインに取り入って政権中枢に潜り込み、死にゆくエリツイン後継としてプーチンを押したのだが、結局、プーチンの「虎の尾」を踏んでしまったのは、ベレゾフスキーの痛恨のミス。KGB出身者がエリツインの後釜として相応しいと読んだまではよかったが、やはりすこしKGBを見くびっていたようだ。それが文字通り墓穴を掘った。