軍事挑発を続ける北朝鮮に対して、米国と中国が一定の範囲で共闘することとなった。今回の安全保障理事会決議で、金融面での踏み込んだ制裁が科されることになったことは、メッセージという面で評価されるものだ。問題は、実際に中国がこれを履行(遵守)するか、水面下で骨抜きにするかにかかっているが、順当であれば、当然後者の選択となり、中国は米国に対する自国のカードとして北朝鮮を引き続き温存することになるだろう。
ただ、全人代開催中の中国からすれば、現在の北朝鮮の体制を支援していることで海外からの無用な(中国共産党にとって)注目を浴びることの無いよう、協調的な姿勢を示すことは習体制にとってもより実利に適っている。
シリアのアサド政権の例を持ち出すまでもなく、経済制裁などが本当に効果をあらわすまでには時間がかかるものだ。ただ、北朝鮮の場合には、膨大な軍人の食糧を確保しなければならず、また、金一家の散財も相当なものなので、シリアやイランなどに比べると金融制裁の効果は出やすいかもしれない。いずれにせよ、当面、北朝鮮としては、自殺的な挑発活動を強化してゆくしかないだろう。一方で、大量の難民発生におびえる中国としては、いずれ北朝鮮体制のすげ替えに着手せざるを得ないことから、何らかの北朝鮮処分が全人代終了後に本格化するのではないか。
いずれにしても、戦争を知らない北朝鮮指導部が戦争を弄び始めるとは中国にとっても厄介なことである。中国と異なり、北朝鮮指導部は金正日をふくめ、ハイジャックや爆破、誘拐などの陰惨で残虐なテロ活動を除いて戦争の経験は一切ない。即ち、朝鮮戦争以降、北朝鮮軍は自国民以外に銃口を向けたこともないのである。