読者諸賢よ、聞いて驚け。
これは高木商店の新商品〈本まぐろ水煮 ツナ缶〉であります。
ツナ缶!!
高木商店といえば、長年サバやイワシなどの青魚缶を造ってきた名手である。
それがなぜ、競争の熾烈なツナ缶市場に参戦してきたのか?
営業担当のT氏に問うと、
「これ、ツナ缶という名前を付けていますが、一般的なツナ缶とは製法が違うんです」
と、不敵に笑う。
なんとこのツナ缶は、原料のツナ(マグロやカツオ)を蒸煮(じょうしゃ)していないという。
一般的なツナ缶の製造は、頭と尾、内臓を取り除いた身を、まず蒸すことから始まる。
その後、身を冷やしてから皮を剥き、使いやすいサイズにカットして缶に詰めるのだ。
最初の蒸煮工程がないツナ缶なんて、聞いたことがない。
じゃあこれは何なのか? 品名の前半にある「本まぐろ水煮」が本性なのであります。
開缶した様子。匂いは一般的なツナ缶と変わらないように思える。
が、嗅覚を総動員してみると、マグロ以外の匂いがしない。
日本のツナ缶の多くは、野菜エキス(タマネギエキスなど)等を加えてある。うま味が増すからだ。
しかしこの本まぐろ水煮には、野菜エキス等が入っていない。原材料は本マグロと塩、それだけ。
ゆえにマグロを加熱しただけの、ごく素朴な匂いがしている。
固まっていた肉をほぐしてみた。
繊維状にほぐれるのは一般的なツナと同じ。だが、はがれる際にコラーゲンが抵抗している感覚がある。
この肉は、本マグロを刺身用に切り分けた際の、余った端材を活用しているという。
つまり刺身用の本マグロと同等の肉なのだ。だから、肉の中にコラーゲン(いわゆるサシ)が入っているわけ。
そのままひと口食べると、水煮なのに脂が乗っている。コクがあり、酸味をともなったうま味が強い。
歯ざわりは一般的なツナよりも、どちらかというと煮豚に近い。脂とコラーゲンのおかげでしっとりしている。
ちなみに、缶汁は約40ml入っていた(画像の缶に入っている液体)。これもうま味が強く、塩もしっかり利いていて、思わず舌が鳴る。
その塩も、山口県長門市の〈百姓の塩〉を使っている。釜炊きした海水を杉樽で熟成させたという、こだわりの塩であります。
原材料名:本まぐろ(日本、メキシコ)、食塩
内容量:90g
製造&販売:高木商店
価格:497円(直販サイト価格)
食塩相当量:0.9g(1缶90gあたり)
DHA:2349mg
EPA:2403mg(ともに目安値)