缶詰blog

世界中の缶詰を食べまくるぞ!

『缶詰の現場から』マルハニチロ北日本・青森工場

2014-12-04 14:27:43 | 取材もの 缶詰の現場から


青森市に着いたのは夕刻であった



 読者諸賢よ!
 今年もいよいよ押し詰まってきたが、僕はぷらりと工場見学に行ってきた。
 マルハニチロ北日本の青森工場であります。
 同工場はサバ、ホタテ、イカを中心に缶詰を生産している。とくにサバ缶の生産量は約8割と主力事業だ。
(ちなみに日本で一番売れてるサバ缶はマルハニチロブランド。サバ缶市場の約5割を占めている)
 青森工場では、ほかにも“死ぬほど辛い”新シリーズ[アジアン味]や[おうちでバル気分]シリーズ、他社ブランドの受託製造も行っている。
 取材時は山崎工場長にお話を伺い、場内を製造課・奥山課長にご案内いただいた。折しもサバ缶生産の最盛期だったので、その生産ラインをとくとご覧いただきたいのであります。




山崎氏(右)と奥山氏。満面の笑顔なのは前夜一緒に呑んじゃったからである




冷凍サバを解凍するスペース。八戸港で鮮魚のサバを調達した日は、むろん生のまま使う
このあと金属検知機で釣り針などが残ってないかチェックする




サイズを大別する。缶詰に使えない小さな魚体はパイプのすきまから下へ落ちる仕組み




さらに手作業でサイズを分け、カッターで切るために頭を揃える(これは小さいほう)
このラインの左奥でカッターが回転しているのだ




頭を落とし、内臓を除去し、筒切りになったとこ。身が新鮮なのがよく判る
このあと再度、金属検知機へ




身の大きさや向きを揃えてラインへ収め、自動肉詰フィラーという便利な機械で缶に詰める




身が横になったり缶からはみ出たりしたものは手で直す。重量チェックとその調整も行う




調味液を入れて…




中の空気を抜きつつフタを密封




じゃんじゃん作られております!




レトルト殺菌釜で加熱。同時に骨まで柔らかくなり、味も中まで染みこむわけだ




X線検査を経て賞味期限印字を行い、箱詰。最後に保管倉庫へ


 取材中とくに興味を惹かれたのは、場内を清潔に保つための様々な工夫があったこと。
 その意志は当然、商品作りにも反映されるわけで、例えばこんな手作りの注意書きがあちことにある。



 奥山氏によれば、こういうカイゼンは従業員が自ら行っているそうだ。これには缶服してしまった。
 
 近年は大手メーカーよりも中小メーカーに注目が集まりがちだが、製造現場の苦心はどちらも変わらない。一番大切なのは心配りであります。
 マルハニチロ北日本の青森工場では、確かにその心配りが見られましたゾ。
 
 
 
 



 
 

モルディブ取材日記 その5 最終回

2014-09-27 13:06:07 | 取材もの 缶詰の現場から
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モルディブ人はとにかくよく笑う。そして女性はシャイだ。


 ほかの島の生活を見せてもらったあと、我々は再びフェリバル島へ戻った。
 我々とはすなわち、僕と伊藤氏である。
 前回の「モルディブ取材日記その4」から、実に8カ月ぶりの更新となる。
 あれから春が過ぎ、夏も去り、秋になってしまった。
 しかしそんな時の流れを感じさせず、まるで
「何事もなかったかのように…」
 更新してしまうのが、この缶詰ブログの特徴なのであります。
 まっ、それはともあれ…。
 フェリバル島滞在も明日まで。我々は島内をじっくり見てまわった。

 


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島内の移動に自転車を貸してもらった
ブレーキが壊れてるが快適である




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誰もいない砂浜。本当に砂が白い。
シュールストレミングを置いたのは伊藤氏のイタズラ




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翌朝の食事風景
ツナ缶を使ったマスフニ(中央)と円盤形パン・ロシィが並ぶ




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 お別れの時。
 2泊のあいだ心を込めて歓待してくれたこと、東日本大震災のときに義援金とツナ缶を贈ってくれたことのお礼を申し上げた。
 すると
「来てくれてありがとう。これまでの日本の支援を我々は決して忘れない」
 と、逆に彼らからお礼を言われ、贈り物までもらってしまった。
 こうなると、恩返しの応酬であります。
 昨年は「倍返しだ!」という台詞が日本で流行したが、どうせ倍返しするなら恩を返したいと思う。




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 高速ボートに乗り込み、クレドゥ島へ渡る。
 ここはクレドゥアイランド・リゾート&スパという施設があり、世界中の観光客が集まってくる大きなリゾート島なのであります。
 我々はここで2泊の日程をもらい、施設の取材をすることになっている。
「突然、欧米っぽい雰囲気になりましたなァ」と僕。
「ずっと島民と一緒にいましたからね。ここは欧米人観光客しかいないようです」と伊藤氏。
「やっ、あれは何ですか。けしからん!」
「何がですか?」
「女性が水着で歩き回ってる。隣の男も短パンではないか」
「落ち着いてください博士。それが普通です」
 それまで敬虔なイスラム教徒のあいだにいたものだから、女性は肌の露出が極めて少なく、男だって長ズボンにシャツという姿だったのだ。
 それが、いきなりセパレーツの水着姿で歩き回っている様子を見ると
「けしからん!」
 という気持ちが湧き上がってくる。
 しかし、憤慨していてもしょうがない。よく見れば、セパレートの水着姿は大変喜ばしいものであった。
 こうして、クレドゥ島到着後、ものの10分で我々の精神は欧米化してしまった。




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スタッフに海上コテージを見せてもらう。
床下に波が打ち寄せる様はいかにもモルディブ的



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我々が泊まったのはこういうタイプ
目の前は砂浜、そしてインド洋である




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天蓋付きベッドがロマンチック
だがオジサン1人寝であります




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開放的すぎるトイレ。隣にはシャワーもある




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開放的すぎるジャクージ。夜空には南十字星が見えた




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島の西端は砂嘴になっている
先端まで歩くと、まるで海に浮かんでいるようだ




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コテージ前の寝椅子。モンスーンの時期で風が強かった




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2泊を過ごしたあと、水上飛行機が迎えにやってきた




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機上から眺める“インド洋の真珠”
何度見ても、ため息が出るほど美しい




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首都マーレに戻った我々は市場へ向かった




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キングココナツを頬張る筆者
甘いだけでなく、酸味と発酵したうま味があった




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魚市場の2階でひと休み。スイカのジュースは初体験!




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 こうしてモルディブの旅は終わった。
 缶詰工場の取材では、一眼レフのほかムービーカメラも持ち込ませてもらい、貴重な映像を収めることが出来た。
 というのも、フェリバル社の工場に日本のカメラが入ったのは初めてだったのだ。
 ほか、クレドゥアイランド・リゾート&スパでも映像を撮り、それらを短いムービーにまとめて、都内のイベントでみなさんにお見せすることが出来た。
 滞在中はもちろん、帰国してからも充実した旅となったのであります。
 これらすべての旅程を手配していただいたモルディブ大使館に、心から謝辞を贈りたい。
 シュークリア!(ディベヒ語でありがとうの意)。

 

 モルディブ取材日記その1へ







モルディブ取材日記 その4

2014-01-08 14:43:31 | 取材もの 缶詰の現場から
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モルディブの建物はカラフルだ


 フェリバル島の、缶詰工場レポートの続きであります。




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 缶に詰めた身肉は重量をチェックし、すべて同じ内容量になるよう細かく調整する。




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 調味液(塩水や真水、オリーブオイルなど)を入れたらフタをかぶせ、奥にある機械で巻き締める。
 中の空気を抜きながら締めるので『真空巻締機』と呼ばれているのだゾ。




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 密封された缶詰は外側を熱湯できれいに洗う。油などがついているからだ。その後、この巨大なカゴに詰めていく。




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 カゴごと、このレトルト殺菌釜という機械に入れる。
 これは言わば巨大な圧力鍋。熱水を利用し、内圧を上げることで、120℃近くまで温度を上げて缶詰を加熱殺菌できるのであります。




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 ラベルを貼れば缶成! この日はイギリスの高級スーパー『ウエイトローズ』のラベルが貼られていた。
 モルディブのツナ缶は7~8ユーロで売られている高級品なのだ。




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 これは製缶工場、つまり新品の缶を作る工場。
 何とフェリバル島には製缶工場もあるのだ。海外から鉄板を輸入し、ここでカットし、缶の形に成形している。




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取材が終わって遊ぶ二人
船着き場に群がる魚にパンくずを与えている




 他の島にも連れて行ってもらうことになった。ナイファル島というところだ。
 荷物も人も運搬する万能船『ドーニ』に乗り込み、潮風を浴びながら海上を進む。
 日本に単身赴任していたというフセイン氏が隣に座り、あれこれと世話を焼いてくれる。
 フセインは、日本にいたと言うわりには日本語をあまり話さない。英語で話しかけてくる。
「これから行く島は漁民が多いところだ」
「ンーフーン」(僕)
「小さい島だが人口は増えている」
「アーハーン」
「だから土地が足りなくなっており、海を埋め立てて、島を拡張しているのだ」
「オー。イッツ、ベリーイントレスティング」
 こんな幼稚な会話でも、ちゃんと仲良くなっていけるのだ。


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砂の地面。だから未舗装でも清潔感がある




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日本の資金援助で建てられた学校
校長先生にお会いし、中も案内してもらった




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食品店で缶詰チェック! 豆類、トマト、フルーツが多い




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なぜかお見送りしてくれた店員。島民はみんな朗らかだ




 つづく!
 モルディブ取材日記その1へ




モルディブ取材日記 その3

2013-09-28 14:14:30 | 取材もの 缶詰の現場から

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これがモルディブのツナ缶工場だ!

 翌日。
 オジサンふたりは、マーレ島から飛行場のある島に渡り、そこから水上飛行機に乗って北に向かった。
 眼下にはインド洋。その上に環礁がいくつも浮かんでいる。
 環礁の周囲の浅いところはエメラルドグリーンで、その周りの海はくっきりとした紺碧だ。
 その様子、まさしく「インド洋の真珠」であります。

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「うおーすげー。美しすぎる!」
「まさに」
「うおーうおー」
「まさに」
 人間、本当にコーフンすると、表現が幼稚になるのであります。

右画像:インド洋に浮かぶ環礁。上に見えてるのは翼の一部
※撮影:伊藤氏

 約40分の飛行を終えると、水上飛行機はクレドゥ島という島に着水した。
 今度はここで、高速ボートに乗り換えるのだ。
 波の上を跳ねながら、まさに高速ですっ飛んでいくと、周囲にはリゾート島や無人島がいくつも見える。
 潮風が心地好い。水面が眩しい。
 やがてボートが減速を始めると、目の前に緑豊かな小島が現れた。
 その島が、今回の旅のメインテーマであるフェリバル島なのであります。




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水産加工業者・フェリバル社の施設しかない島

 ゲストハウスで一泊させてもらって、翌日...。
 いよいよ、工場を見学させてもらうことになった。
 ここには漁港があり、フェリバル専用の漁船もある。
 その船で獲ってきたカツオやキハダマグロは、すべて一本釣り漁法のみ。
 というのも、モルディブでは、自国で獲れる魚を
「将来に亘って大事に育てていこう」
 と、網による大量漁獲を禁じているのだ。
 そうして獲ってきた魚は、漁港の目の前にある倉庫に入り、温度管理された海水にいったん浸けられる。
 その後、生のまま缶詰にしたり、冷凍加工したりするわけだ。
 この工場は、1977年(78年という人もいる)に日本水産が建てたものだ。
 水産加工に必要な設備を揃え、モルディブ人にその扱い方、メンテナンスなどを教え、やがてその工場一式を同国に売却した。
 その買取り資金は、日本政府によるODA(政府開発援助)が活用されたらしい。
 今では、ここで作られるツナ缶が、モルディブの重要な産業になっている。ツナ缶は、同国が輸出している唯一の水産加工食品なのだ。
(水産加工ではもう1社、国営のMIFCOという会社があり、そこでもツナ缶が作られている。MIFCOとフェリバルは元々同じ会社だったが、途中で国営と民営の2社に分かれたという)




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①生もしくは冷凍していた魚を、まずは内蔵とエラを落としてきれいに洗う。
(取材した日はキハダマグロを加工していた)




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②きれいになったキハダマグロを網棚に乗せ、高温の蒸気で一度蒸す。画像はその網棚をクッカーに入れたところで、なぜか笑顔でポーズをとってくれた。




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③一旦冷やした②のキハダマグロは、この広大な作業場に移される。床、壁まできれいに磨き上げられているのに注目!




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④一尾ずつ手作業で、頭と尻尾を落とし、骨を抜き、皮を剥いていく。血管なども取り除きフィレの状態にするのだ。途中で出た細かい肉も、残さず集められる。




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⑤フィレと細かい肉に分けられた状態。すごくキチンとしてるぞ!




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⑥フィレと細かい肉を、溝状のラインに詰めていく。これは「チャンク」と呼ばれる、塊肉とフレークの混ざったツナ缶を作るため。ほかにも、細かい肉だけを入れる「フレーク」、フィレだけを入れる「ステーキ」など、ツナ缶のタイプによって詰め方を変える。




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⑦さっきのラインが流れていく先に、カッターと缶が待ち受けている。身肉はここで垂直にカットされて、缶に詰められるのだ(ロータリー状に缶が並んでいるのが見える)。




 つづく!
 モルディブ取材日記その1へ






モルディブ取材日記 その2

2013-08-07 09:42:12 | 取材もの 缶詰の現場から

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首都マーレの朝。建物がカラフルだ

 13時20分、成田空港発。
 19時10分、スリランカの首都・コロンボ到着。乗り継ぎのため1時間、空港内で過ごす。
 21時5分、モルディブへ到着。
 時差を入れると、実質11時間45分かかった計算だろうか。
 だいたい、ヨーロッパの主要都市に行くのに近い感覚であります。
 モルディブの国際空港はフルレという島にある。そこから首都島・マーレまで、15分かけて船で移動する。
 マーレには空港を作るスペースがないのだ。




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空港から首都まではドーニと呼ばれる船で移動
蒸し暑くて汗が流れるが、走り出すと快適

 船着き場に行くと、聞いていた通り、タクシーのお迎えが来ていた。
 まずはホテルへチェックインする。
「黒川さん、お腹は空いてませんか?」20130610img_0787
 伊藤氏が言う。
「そんなに空いてないけど、せっかくだから何か食べに行きますか」
 と僕。
「今回の旅は、マーレでの滞在時間がほとんどないですからね。行きましょう」
 夜の10時過ぎ。
 フロントで「食堂はないか」と聞くと、魚市場の2階にあるという。
「地元の人しか行かないところだ。そんなとこでいいのか?」
 フロントの人はしきりに聞いてくる。
 観光客がなぜそんなところに行きたがるのか、不思議に思っているのだ。
「そういうところに行きたいぜひ行きたい」
 僕と伊藤氏の共通の意思は固い。
「じゃあ車で送ってってあげます」
 到着したのは港のすぐ近くにある魚市場だった。教えられた通りに階段を上がると、確かに食堂がある。
 ほかに客はひとりもいない。
 ガルディアというカツオのスープと、魚のカレー、ライス、豆を潰してチップスにしたものを頼んだ。
 蛍光灯の青白い灯りに照らされた、簡素極まる安食堂だ。
「味には期待できないかも」
「まあ、それも経験ということで」
 ところが、ところが・・・。
 すごく美味しいんであります。
 ガルディアは塩味ベースであっさりしていて、カツオの出汁がたっぷり出ている。大きな切り身のカツオもジューシーでウマい。
 カレーは粘度がなくさらっとしていて、ものすごく辛い。辛いが、その中に強烈なうま味がある。
「かか、辛い! けどウマい!」
 止まらないのだ。
 全身が汗だくになったが、気分は爽快である。
 その汗を飛ばすため、ホテルまで歩いて帰ることにした。
 夜のマーレはスクーターの洪水だ。
 若者たちが、2人乗りをし、行くあてもなく、ひたすら道路を走り回っている。
「エネルギーが余ってるんでしょうなあ」
「うらやましいですなあ」




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恐らくマーレで一番大きいスーパー。これは肉の缶詰コーナー

 途中、スーパーに立ち寄る。
 もちろん、缶詰売り場のチェックであります。
「やっ、品揃えがすごいぞ!」
 フルーツ、肉、魚、蔬菜(野菜や豆など)の缶詰が整然と並んでいる。
 長さ4メートル程度の缶詰棚が2面あり、そのほかの場所にも様々な缶詰が置いてある。
 例のモルディブ特産のツナ缶も置いてある。
「あったあった! ありましたよ!」
 オジサン2人はコーフンし、思わず声を張り上げてしまう。
 しかし、モルディブのツナ缶がモルディブにあるのは、考えてみれば当たり前のことであった。
 それでも
(ここで頑張っていたか。そうかそうか!)
 友人に再会したような気分だったのだ。




 つづく!
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