缶詰blog

世界中の缶詰を食べまくるぞ!

モルディブ取材日記 その1

2013-06-23 11:26:59 | 取材もの 缶詰の現場から
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現地での移動手段は水上飛行機とボートだ


 読者諸賢よ!
 缶詰ブログでは、これまでモルディブと日本との「缶詰つながり」をお伝えしてきた(過去記事はこちら)。
 今回、そのモルディブへ取材に行ってきたので、ここにご報告申し上げたいのであります。




 6月某日。
 朝のNHKラジオ出演を終え、そのまま渋谷から成田エクスプレスに乗り込んだ。
 スリランカ・エアラインに乗り、途中コロンボで乗り換え。そこからモルディブへ向かう6泊7日の旅が始まったのだ。



 同行するのは食品輸入業者・川口貿易の伊藤さん。
 伊藤さんは今回、英語の出来ない僕のガイドをしてくれる。
「ナ、ナイストゥー、ミートユー」と僕。
「私は日本人ですよ、落ち着いてください。今から緊張しなくて大丈夫です」と伊藤さん。


 成田空港で搭乗手続きをしていると、モルディブ大使館のカリール大使と、その奥さんがやってきた。
 たまたま奥さんが僕らと同じ便で一時帰国するので、大使はその見送りに来たのだという。
「良い旅を」と大使。20130610img_0783
「ありがとうございます。今回は諸々、お世話になります」


 実は今回の旅は、現地での宿泊や食事、移動のすべてをモルディブ大使館にコーディネートしてもらったのだ。
 我々は、ともかく首都マーレへ行けば、誰かが迎えに来ており、ホテルまで連れて行ってくれるという。
 翌朝も、誰かがホテルへ現れ、次の移動先まで案内してくれるという。
 まるで
「おとぎ話のような...」
 旅なのであります。



 飛行機に乗り込んだ我々は、しばらくモルディブやスリランカの話しをしたのち、後ろが空席であるのを発見し、前後に分かれてゆったり2席を所有することにした。
 パソコンを取り出し、しばらく原稿書きに没頭する。
 9月に新しい本を出す予定があり、その原稿をいよいよ書いていかないとマズいのであります。
 指はキーボードを叩きつつも、頭の中にはこれまでのモルディブ大使館との交流が思い浮かぶ。
(最初に大使にお会いしたのは去年の5月だったな。伊藤さんが引き合わせてくれたんだっけ)20040625
(一国の大使といえば、すごく身分の高い人のはずだなァ。そんな人と会えるなんて、不思議な縁があるもんだなァ)

 2011年の東日本大震災のときに、モルディブは特産品のツナ缶を約68万缶、被災地へ贈ってくれた。
 そのツナ缶を作る工場は、実は70年代に日本企業が立ち上げたものであります。
 輸出産業の少なかったモルディブへ、日本はこれまでODAを使った支援などを継続してきた。
 その規模は、2国間の援助としては最大規模なのだそうな(外務省サイト参照)...。

 何となれば...。
 東日本大震災のときに、モルディブがツナ缶や破格の義援金で日本を支援してくれたのは、モルディブ人にとっては
「これまでの支援への恩返し」
 という思いがあるのだ。
(外交だろうが産業だろうが、最後はやっぱり人だな。人の思いが物事を動かすんだなァ)
 高度一万メートルを時速900キロですっ飛びながら、そんなことがしきりに思い浮かんだ。
 原稿は何とか、一本だけ書き上げた。

 つづく!




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 中段:スリランカ・エアラインの機内食は辛いカレーだった。このあとモルディブでは酒が飲めないので(同国はイスラム教)、今のウチに飲んでおく

 下段:首都マーレを囲む防波堤。日本が無償資金協力で建設したもので、2004年12月のインド洋津波の際、首都を水没の被害から守ったことで知られている(画像提供・モルディブ共和国大使館)

    
 


『缶詰の現場から』由比缶詰所

2011-12-10 15:34:00 | 取材もの 缶詰の現場から

 年の瀬であります。
 激動の2011年も、間もなく終わってしまうのであります。
 そんな折も折、筆者は取材に出掛けていった。静岡県清水区由比にある株式会社 由比缶詰所であります。



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看板にも年季が入っている

 ツナ缶や桜エビの瓶詰で知られる同社の創業は昭和8年(1933年)のこと。
 日本で初めてツナ缶を商品化したSSK清水食品が昭和4年創業だから、その4年後のことだ。
 由比缶詰所も老舗企業といっていいのであります。
 現在は他社から生産を委託されているほか、自社ブランド[ホワイトシップ]でこだわりのツナ缶を製造している。
 そのツナ缶がどれくらいこだわっているかというと、

 ①「自分たちで食べたいツナ缶を作ろう」と開発
 ②製造したら最低半年間は寝かせてから出荷
 ③ビンナガ(マグロ)を使用
 ④高級綿実油&イタリア産オリーブ油を使用

 缶詰には食べ頃があって、とくにツナ缶油漬けは半年から1年過ぎてからが美味しい。
 油とマグロの身が馴染んでいくからだ。
 そのツナ缶のお味については、日をあらためてお伝えするとして...。
 今回のレポートでは、日本で唯一の虹鱒を使った缶詰の製造現場をご紹介したい。



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本社社屋前にて
道路を挟んで向かい側が工場だ

 先ほど委託生産のことを書いたが、この虹鱒缶も同じく柿島養鱒という企業から製造を依頼されている。
 商品名は鱒財缶(そんざいかん)。「鱒は財産」という語呂合わせだと推測するが、こういうネーミング、筆者はかなり好きであります。



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いざ潜入! 省スペースで効率的な作業場だ




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切り分けた虹鱒の身を大釜に投入
水溶性たんぱく質の除去が目的なので
60秒で引き上げられる




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引き上げたらすぐに冷水へ




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水を切ったところ。皮目が美しい
身がまだピンク色なのがお分かりだろうか




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その切り身を手作業で詰めていく
ちなみに使用前の缶を空缶(くうかん)と呼ぶ




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バジル液を注入。イタリア産オリーブ油が使われている
缶詰は工業製品というより、人の手で作られる製品だ




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今度はラインを流れていき...




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食塩水を注入
これで塩味が加わる




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このあと中の空気を抜きつつフタを締める
速すぎて被写体ブレしております




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密封された缶詰は別室(画像奥)へ向かう




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缶の外側を洗剤と熱湯で洗浄
よく水を切って...




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このあと専用のカゴに収まって加熱殺菌される




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このレトルト殺菌釜に缶詰がカゴごと入る
これは内部が回転する殺菌釜であります。ふふふ




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ずらりと並んだ空缶




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フタが規定通り巻締めてあるかチェック
缶詰工場はどこも職人集団が揃っている




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これが完成品の鱒財缶(そんざいかん)
こうなるまで数多くの行程と人手が必要なのだ




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敷地内にある直売所
取材中も地元の人が大勢買いに来ていた




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おまけ画像。昔は敷地内に浴場があった
かつて期間工がいた頃の名残りであります




 今回の取材でとくに印象に残ったのは、工場で働くスタッフがみな若かったこと。
 全員が日本人で、黙々とプロらしく仕事をこなしていたのだった。
 地域の雇用を創出し、地元パワーで良質のものづくりを継続していく。まさに製造業の魅力を発揮しているのが由比缶詰所だったのであります。


 ※この記事は『缶詰まにあくす』“鱒財缶 バジル”にトラックバック!


 
 


『缶詰の現場から』福井缶詰

2010-08-31 16:14:17 | 取材もの 缶詰の現場から

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福井缶詰の商品の一部(最奥はリリーブランド
同社がノルウェーサバにこだわるのは何故か?

「夏山や 通ひなれたる 若狭人」
 与謝蕪村の俳句であります。
 大汗をかきながらも、山道をすいすい歩んでいく行商人の姿が目に浮かぶようだ。
 この行商人が運ぶのは鯖。ところは鯖街道。
 すなわち、若狭の小浜湾から京都を結ぶ若狭街道のことであります。
 若狭で獲れた鯖にひと塩して、街道を上っていくと、ちょうど京都へ着いた頃合いで、塩が慣れて食べ頃になったという。
 これが世に言う“若狭のサバ”。
 しかし、そんな若狭のサバが、今はほとんど獲れなくなったことをご存じだろうか。
 今回の『缶詰の現場から』は、そんな若狭・小浜湾で、ノルウェー産のサバを使ってサバ缶を作り続ける福井缶詰を取材してきた。




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風光明媚な小浜湾
このすぐ近くに福井缶詰がある




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これが本社及び工場。昭和18年創業であります

「日本も80年代までは500g以上の大サバが獲れていた。それが今はゼロ歳から1歳程度の、小さなローソクサバと呼ばれるサバが多く水揚げされている」
 こう語るのは、同社代表取締役社長の重田軍治氏であります。
 なぜ大きく育つまで待たず、ローソクサバなんぞ獲ってくるのか。それは「オリンピック方式」という、各漁業者が競争するように漁獲する日本のサバ漁に原因がある。
 つまり、先により多く獲った漁業者が儲けるのだ。そして、漁獲した総量が漁獲可能量(TAC)に達したところで
「はい、今シーズンはここまで」
 お上から操業停止の通達が出る。
 これだと、最新の設備(魚群探知機や巻き網など)を持った大規模船団が圧倒的に有利だ。売値が高い大きなサバを先に獲っていく。すると中小規模漁業者は、残されたローソクサバを数多く獲るしかない。
 売値の安い小さいサバだから、漁獲量を増やすしかないわけであります。
 いずれ親となって卵を産むはずのサバまで獲っているのだから、このままでは日本のサバは壊滅してしまう。しかし漁業者としては、生計を立てるためにローソクサバまで獲らざるをえない。
「何と無策な...」
 重田社長はその現状を、深く憂えるのであります。




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同社のサバ缶はすべて手詰めだ

 これに対し、ノルウェーでは2歳魚以下は漁獲できない規則がある。
 ちなみに年齢と体重の関係を大ざっぱに示すと、

 1歳 300g
 2歳 450g
 3歳 550g
 4歳 700g
 ※三重大学准教授・勝川俊雄氏のデータを参照

 当然、大きいほうが売値は高い。つまりノルウェーでは、幼いサバを守りながら大型サバを売って、儲けが出るようにしてるわけだ。
 重田社長も同国を
「漁業の先進国と言える。日本は発展途上と言わざるをえない」
 と残念そうに語っていた。
 何となれば...。
 福井缶詰は、日本のサバ資源を守るためにも、高価なノルウェーサバを輸入して缶詰に使っているのであります。
 しかもノルウェーサバは、脂の乗りが何と日本のサバの約2.5倍ある。そして安全に管理された生け簀で育てられている。
「化学汚染がなく寄生虫もいない養殖魚だから、逆に価値がある」
 ノルウェーはこういう概念を持っているのだ。「天然物こそ最上」とばかりは言ってられないではないか。




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半解凍状態で手詰めされたサバ
半解凍ゆえ調整(切分け)が容易。つまり鮮度が保てる




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まず蒸し煮にする。これはサバ缶では珍しい工程




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蒸して浮いてきた余分な水分・脂分を捨てる
このノウハウが冷凍サバを極ウマに変えるのだ




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 同社のサバ缶を開缶すると、缶汁が澄みきっているのが分かる。
 製造工程に工夫を凝らした証左であります。




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 かくのごとし。
 こってりと脂が乗っているが、飲み込んだ後は口中に残らない。サバ缶好きのあいだでは、同社のサバ缶は
「文句なしにウマい」
 と評判だ。
 そしてこのサバ缶。菱食のリリーブランドからも『旬海庵』というシリーズで出ている。
 つまり、同社はリリーのOEMメーカーでもあるわけだ。




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カニ缶の製造ラインの様子

 さて、そんな福井缶詰はカニ缶でも自信作を持っている。
 同社オリジナルブランド『マーメイド印』の『紅ずわい蟹 脚肉ほぐし』は、重田社長イチオシの缶詰だ。
 兵庫県の香住(かすみ)港で水揚げされた紅ズワイガニを、約3時間で“冷蔵”陸送して、フレッシュパック(生詰め)している。それは
「従来のカニ缶とは一線を画する」
 と重田社長もおっしゃる。果たしてどんなお味なのか、近いうちに当ブログで紹介する予定であります。

 御食国(みけつくに)として、平安時代から朝廷に食料を献上してきた若狭の国。そんな歴史も伝統もある土地で、日本の漁業制度に警鐘を鳴らし、既成概念にとらわれない缶詰作りを続ける福井缶詰。
 そのまっすぐな志、まるで戦国武将のような缶詰企業でありました。

 


『缶詰の現場から』ホテイフーズコーポレーション

2010-02-27 15:15:36 | 取材もの 缶詰の現場から

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缶詰ブログ独占スクープ! 左の2つがホテイの新商品だ
(3月発売予定。詳細は本文を参照のこと)

 今回の『缶詰の現場から』は、静岡市に本社を置くホテイフーズコーポレーションであります。
 ホテイフーズといえば焼き鳥缶が代名詞。読者諸賢も、きっと昔から馴染みのある商品だと思う。
 しかしここで一寸、思案していただきたいのだ。
 焼き鳥というもの、本来は串に刺さっていて、その焼きたてを店で頬張るもの。
 それが串なし状態で、しかも缶に詰めちゃってる。
 何と大胆な発想だろう。
 この既成概念をひっくり返した焼き鳥缶は、昭和8年に創業したホテイフーズ(創業時は三共商会という名称だった)が、昭和45年12月に発売を開始したもの。もちろん、日本で初めての商品でありました。




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これがホテイフーズの本社



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本社近くにある蒲原工場。その昔の東海道・蒲原宿にあるのだ

 それでは早速、焼き鳥缶の出来上がる様子を見てみよう。
 応対してくださったのは取締役・販売部長の若山俊一氏と、販売部・販売企画課リーダーの高木剛彦氏。
 工場内では工場長の澤野好宏氏に案内をしていただいた。



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 まず赤外線コンロで火を通した後、こうして本物の炭を使って仕上げる。
 真っ赤に焼けた炭に脂が滴り落ち、それがたまらなく香ばしい煙となって肉にまとわりついていく。
 この行程、まさしく“焼き鳥”であります。
 この専用の焙焼炉は、約3年を掛けて開発したもの。このように缶詰企業で使われる機械は、メーカーと共同で開発したオリジナルのものが多いんですぞ。



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 使用される鶏肉は、開発当初からずっと国産鶏のみ。モモ肉と胸肉を半分ずつ使う。
 焼き上がった肉をこのカッターで1口大にカットし、金属探知機を通して次の行程へ。



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1缶ずつの分量にして缶に入れ...



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更にウエイトチェッカーで計量して微調整を行う
このように缶詰はたくさんの人の手が関わって出来るのだ
この後は調味液(タレ)を注入していく



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これは真空巻締機。減圧と巻締(蓋を閉じる)を行うんです
巻締の後はX線検査機で巻締具合をチェックする



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外側もきれいに洗浄して...



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専用のカゴに積んで、レトルト殺菌釜へ投入
ここで缶ごと加熱殺菌するから、缶詰は無菌状態になるのだ!



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加熱後は冷却水が入れられる
これはその水を抜いているところ



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缶の内圧をチェックし、規定外のものは除外される
缶蓋に賞味期限と工場名をインクジェットで印字するが、
印字内容もコンピューターでチェックされるのだぞ



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最後に再びX線検査機で異物混入がないかチェック
こうして幾重にも品質チェックが行われてるんですなァ

 このように作られるホテイフーズの焼き鳥缶は、現在たれ味、塩味、たれ味辛口、ガーリックペッパー味、カレー味和風の5種類。この順番は、売上の多い順であります。
 このラインナップに、3月から新たな味付けが加わる。それが冒頭の画像にある手羽元たれ味と、柚子こしょう味なのだ。
 手羽元たれ味は何と、手羽元を骨付きのまま使っている。一度油で揚げて旨味を閉じこめてから、ピリ辛タレで仕上げている。



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 これがその中身。ゴロッと3本、手羽元が缶詰から出てくる様はかなりインパクトがある。
 頬張ってみると、肉は鶏独特の歯応えを残しつつ、うっとりと柔らかい。身が骨からきれいにはがれるのが快感であります。
「骨付きでの缶詰化は恐らく当社が初めてのはず」
 と、販売企画課リーダーの高木氏がおっしゃる。
 もともと焼き鳥缶が日本初だったのに、今回またまたお初商品を開発したのだ。
 ついでに言えば、この焼き鳥缶シリーズのパッケージにはおおば比呂司氏のマンガが描かれている。通常の缶詰は写真かイラストが使われているのだから、このマンガを使ったパッケージデザインも実は日本初だったのだ。
 お初をいくつも誕生させるホテイフーズ。恐るべし手腕である。



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 これが柚子こしょう味。従来の塩味をベースにしながら、そのあっさりした風味を生かしつつ柚子を利かせるのに苦心し、開発には約1年を掛けたという。
 柚子の素晴らしい芳香のあとでピリッとした辛さがやってきて、酒のアテにはたまらない味付け。柚子も唐辛子も国産というこだわりだ。
 ひそかにヒットの予感であります。



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このコマーシャル、憶えてますか?

 ホテイフーズの焼き鳥缶は、今年で発売40周年となる。
 まさに「企業に歴史あり」と言わねばならない。
 同社では手羽元たれ味・柚子こしょう味のほかにも、40周年記念として『揚げさんま』缶や、輪切り玉ねぎが丸ごと入った『ドレッシングツナ』缶など、新商品を10数種投入していく計画だという。
 老舗のナショナルブランドでありながら、果敢にお初商品に臨んでいくホテイフーズ。あっぱれな缶詰企業でありました。




 この記事は『缶詰が好きです』の“ほていの焼き鳥・柚子胡椒”にトラックバーック!!


『缶詰の現場から』社団法人日本缶詰協会 研究所

2009-12-23 13:36:51 | 取材もの 缶詰の現場から

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日本缶詰協会の発行している缶詰手帳
缶詰に関する規格や法規が載っている
2010年版は表紙が赤でカッコいいのだ

 今回の『缶詰の現場から』は年末特別編であります。
 いつもは缶詰企業を取材するのだが、今回は社団法人日本缶詰協会研究所を取材したのだ。
 その日本缶詰協会というのは、我が国の缶詰企業(工場を含む)の約88%が会員になっている社団法人。
 その会員企業が生産する缶詰の総数は、日本の缶詰生産量の90%以上にもなる。
 言ってみれば、日本の缶界の総元締めなのであります。
 その日本缶詰協会が所持する研究所は、神奈川県横浜市にあった。




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 横浜のシーサイドライン(横浜新都市交通)に乗って、福浦駅で下車。
 金沢産業団地内にあり、観光地の八景島にもほど近い場所だ。



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 これが研究所の入り口。
 周囲はとても静かで、じっくりと研究に取り組めそうなロケーションであります。



20091106img_4323 まずは3階の食品化学研究室へ。
 ここでは品質、栄養、衛生に関しての化学的な実験を行っていて、計測室や準備室、研究員の居室などがある。
 ところで筆者は、化学にはまったくヨワい。ヨワいのだが、話を聞いたり、見たりするのはすごく好きだ。
 科学的なことにワクワクするのは男子の性(さが)なのかもしんないですなァ。



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 どうです、この光景。ワクワクしませんか?
 手前にあるのは食品の固さを数値化する機械。食感という曖昧な感覚も、数値化することで標準化できるのだ。



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 これは分光光度計という機械で、食品の成分を分析した結果。
 アスパラギン酸など、含まれている成分が分かるんですぞ。



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 これは缶の巻締部分を顕微鏡で見ているところ。
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 巻締というのは右の略図にある通り、缶詰のフチの部分を巻いて締めることだ。
 ここが規定通りに巻き締められていないと、密封されていないことになり、保存性が保てないということになる。
 缶詰の要諦の第一は、缶蓋と本体との巻締なのだ。
 ちなみにこの顕微鏡の画面には2つの巻締部が映っているが、どちらが正しい巻締か分かるだろうか。
 正解は左側。缶蓋と本体が二重にきっちりと丸まってます。



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 こちらは1階のプラント室。
 缶詰工場とほぼ同じ設備が並んでいて、材料さえあれば缶詰が作れるところだ。
 レトルト殺菌釜の前にいるのは、取材当日に案内してくださった駒木勝所長であります。



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 これは缶詰の内部、特に中心部の温度が測れる装置。
 前出のレトルト殺菌釜で加熱殺菌するときに大事なのは、缶詰の中心部分が規定の温度に達しているかということ。
 熱湯や蒸気で過熱すると、当然ながら熱は周囲から中心部へと伝わっていく。
 だから中心部を殺菌するためには、ある程度の時間をかけて加熱する必要があるのだ。
 これが缶詰の要諦の第2なのであります。

 殺菌するためには加熱すればいいんだけど、一般的に加熱時間が長ければ、食品は柔らかくなってしまう。
 すなわち食感が変わってくる。
 この“安全性”と“食感”のかねあい、これが各企業のノウハウが生かされる部分なのですなァ。
 缶詰というのはノウハウのかたまりなのであります!



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 これは手動式の巻締機。筆者も体験させてもらった。
 ハンドルを回していくと、まず第1のローラーが缶蓋の周囲を丸める。ここで最初の手応えがある。
 そのまま回すと第2のローラーが缶蓋と本体を巻き締めていくのだ。巻締が終わると手応えがすっと軽くなるので分かる。



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これがその巻締ローラー部のアップ
真ん中の円柱は上から押さえつける役目をする




 この研究所の最も大きな役割は、会員企業から送られてくるサンプルを分析することにある。
 例えば成分分析などは、各企業でも測定機器を持っているとはいえ、公平中立的な立場にある日本缶詰協会の研究所で分析してもらうことで、公正な結果というお墨付きをもらえることになるのだ。
 だから同研究所では、日々、分析と研究を行っているんであります。

 この取材が実現したのは、日本缶詰協会の増田寛行専務理事と、前出の駒木所長、並びに戸塚英夫次長のおかげでありました。
 さらに筆者を同協会に紹介してくれたのは、清水食品の阿部齊社長だった。
 人と人とのつながりの大事さをあらためて思い、みなさんには感謝多謝であります!