缶詰blog

世界中の缶詰を食べまくるぞ!

『缶詰の現場から』SSK 清水食品

2009-10-20 13:11:17 | 取材もの 缶詰の現場から
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SSKのオススメ缶詰の一部


 今回お邪魔したのは、静岡県静岡市にある清水食品株式会社の本社。
 SSKでお馴染みの清水食品だが、実はツナ缶を日本で初めて製造・販売した企業なのだ。いわばツナ缶のパイオニアなのであります。
 知ってました?




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SSK本社のある静岡市葵区の鈴与静岡ビル



 創業は1929年(昭和4年)のこと。
 その2年前に、静岡水産試験場で技師を務めていた村上芳雄が、米国向け輸出品としてツナの油漬缶詰を試作していた。
 当時の日本は外貨獲得が急務だったから、各産業で輸出品の開発が進んでいたのだ。ツナ缶は特に米国向けとして有望視されていた。
 試作品が好評を得たので、村上芳雄はその事業化を鈴木商店の6代目鈴木与平に相談してみた。
 鈴木与平とは、現在の鈴与株式会社の創業者。サッカーファンならよくご存じの、Jリーグの清水エスパルスを運営する会社の親会社なのであります。


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昭和4年5月のツナ缶の試作品


 さっ、昭和4年のことであります。
 当時の日本は不景気に見舞われており、静岡も例外ではなかった。ツナ缶の輸出業を始めることで失業者を救済し、ひいては日本経済の発展にもつながると考えた鈴木与平は、昭和4年12月に清水食品を設立した。
 折しもこの年の10月には、世界恐慌の引き金となったブラック・サーズデーも起こっていたから、暗い世相の中での決断だったと思う。
 翌年の昭和5年5月には米国にツナ缶を輸出開始。以後、清水港からの重要輸出品目となっていく。




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 一番奥が阿部齊(ひとし)代表取締役社長。その右側が生販統括本部の久保田知明次長。その右側はお客様相談室の犬本辰雄室長。
 取材のためにたくさんの資料と試食用缶詰を用意していただいた。




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創業時のことを説明してくれる阿部社長
とても気さくな方であります




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清水食品の創業時の社屋
現在はフェルケール博物館敷地内にある




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 清水区にあるSSKの子会社ツキジフーズの直売所
 SSKの商品とツキジフーズの商品が所狭しと並んでいて圧巻。
 代表商品のオーシャンプリンセス・ホワイトツナを試食させてもらった。びん長鮪の旨味が味わえて、実にウマし。




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 これはSSKのオーヅブルツナシリーズ。
 白しょうゆ、バター風味、ワイン風味の3種類がある(蓋の開いているのはワイン風味)。




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 ワイン風味を盛りつけたところ。
 原料となるツナはびん長鮪で、身をリーフ状にはがして使用している。
 だから断片が非常に大きいのだ。
 びん長鮪には脂がよくのっていて、そこに旨味の強い調味オイルが染み込んでいる。赤ワインがほのかに香るのが特徴であります。
 このオードブルツナシリーズは、11月15日の『缶詰酒場!~酒の肴になる旨い缶詰トークライブ~』で来場者へお土産として差し上げる予定。
 阿部社長に協賛をいただいたのだ。




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 今回の取材で心に残ったのは、阿部社長の缶詰製造・販売に対する情熱。
 素材選びから調味液の配合、はては空き缶のリサイクル率まで話題は幅広く、筆者としても大変聞き応えのあるお話だった。
「今後も缶詰製造には全力投球していく」
 と力強く宣言していた阿部社長。バイタリティー溢れる方でありましたぞ!



『缶詰の現場から』 岩手缶詰

2009-02-14 10:15:56 | 取材もの 缶詰の現場から

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 今回、取材をしてきたパッカーさん(缶詰生産業者)は、岩手缶詰株式会社であります。
 この会社を代表する缶詰はいくつもあるが、筆者はやはりこの『いか“すみ”丸ごと』が印象深い。
 濃厚なイカ墨も一緒に入っていて、缶汁が真っ黒けである。インパクト力抜群のイカ缶なのである。
 これは三陸産のスルメイカを“生”の状態で使用している。すなわち獲れたてだ。
 同シリーズのさんま水煮も、生の秋刀魚を使用している。
 岩手缶詰さんは素材の鮮度にこだわるパッカーさんなのだ。



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2月某日、新幹線で盛岡へ到着!
今回は盛岡工場の取材と相成った



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 いよいよ到着。彼方に名山・岩手山をのぞむ素晴らしいロケーションであります。

 岩手缶詰は昭和16年(1941年)に設立。
 時代は太平洋戦争の最中。国の指導により岩手県の6社が合同で『岩手県缶詰』を設立し、軍用の缶詰を生産していたそうだ。
 今の時代でいえば“ミリメシ”だが、こちらは筋金入りである。
 企業に歴史あり、である。
 今回筆者の訪れた盛岡工場が新設されたのは、昭和34年(1959年)のこと。
 ヤングコーン、エンドウ豆、ホワイトアスパラなど、当初は農産缶詰生産のために建てられた工場だった。
 やがて流通の発達により水産缶詰も手掛けるようになる。現在は製造第1部で缶詰を、製造第2部でレトルトパウチを生産している。
 その製造割合は約62%対38%。これは岩手缶詰全体の事業内容の割合とほぼ同じ数字になる。
 すなわち缶詰が6割強。冷凍食品・レトルトパウチやワイン、ジャムなどが4割弱なのだ。
 そのようなお話を、常務取締役・工場長の佐々木幸治氏にお聞きすることができた。Logo300
 プライベートブランド(PB)缶詰にはカラフルな企業ロゴ『icc』が冠されている。読者諸賢も一度は眼にしたことがあるかと思う。



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 お邪魔したときにはサンマ缶を製造していた。
 まずは頭と尾をちょん切るところから始まる。
 案内してくださったのは、製造第1部次長・佐々木貞利氏。



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スライサーを通過するとさんまが見事な背開きに
このあとバキュームで内蔵を取り除く



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まずバーナーで表面を香ばしく炙る
そのあと炭火の遠赤外線で火を通していく



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調味液投入の後、巻締機登場であります
中央に見える包みに上蓋が200枚装填されているのだ



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ランダムに缶を抜き取って、巻締めを検査
ノギスのような専用道具を使って計測する
※この缶は見本用です



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 珍しい光景に出会えた!
 圧力殺菌釜の中から、殺菌を終えた缶詰を取り出すところなのだ。
 缶詰たちが高温になっているため、いったん水を注入して冷ましてから取り出すという段取り。
 15分ほどかけてゆっくりと水を抜き、扉を開ける。
 この流れ出る水、水温は40℃ほどある。



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 ここが最終検査所。缶の厚みで真空度を測定する検査、缶印字の検査機、巻締検査機と並んでいる。
 不合格のものはエアによってラインからはじき出されてくる。
 ここまでの行程でも、X線による異物検査がライン毎に行われているのだ。
 岩手缶詰の経営理念の第1章には「品質保証」が謳われていた。
 理念に謳い、日々の業務で肌に染み込ませる。これはどの業種・業態でも肝要なのですぞ。



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 これはバキュームで缶詰をつかみ、自動で段ボールに装填する機械。
 こういった機械はほぼオーダーメイドだそうで、これも工場長と次長がメーカー側と話し合いを重ねて出来上がったそうだ。
「アイデアが必要だね」と、佐々木工場長が一言。
 重みのあるお言葉である。



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はやての車窓から さらば盛岡よ

 こうして、今回も内容の濃い取材をさせていただいたのであります。
 工場見学の様子は4月25日のイベント『缶詰ナイト2』で、更に詳しくお話する予定。
 ところで、缶界での岩手缶詰の愛称は「岩缶(いわかん)」さん。太平洋戦争の軍用缶詰から始まった岩缶さんの、現在の売れ筋缶詰は『盛岡冷麺缶』という、いわゆるラーメン缶と同種のもの。
 秋葉原で人気の沸騰したラーメン缶は、こんにゃくを麺として使用している。これが食感でマイナスにもなると思うのだが、冷麺となるとなぜかプラスに作用する。
 もともと冷麺の麺は歯ごたえがあり、こんにゃくの代用でもそれほど違和感を感じないのだ。
 歴史と革新の融合したパッカー、それが岩缶さんでありました。




『缶詰の現場から』 髙木商店

2009-02-02 12:59:18 | 取材もの 缶詰の現場から

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 読者諸賢よ!
 いよいよ、全国の缶詰企業を取材する新企画『缶詰の現場から』をお届けしたい。
 記念すべき第1回は『ねぎ鯖』シリーズというプライベートブランド(PB)を生み出した(株)髙木商店さんであります。

 さて、この冷たい金属に入った缶詰というやつ。
「工場でオートメーションで作られてるんだろう」
 と思われがちだが、そうではない。
 実は、皆さんの想像以上に人の手と眼が必要で、そういう意味では手作りに近いといえるのだ。
 そんなところも、この新企画で皆さんに伝わればいいなと思うのであります。


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この扉をくぐれば、いよいよ缶詰現場

 銚子漁港・卸売市場まで車で10分という立地にある髙木商店の創業は昭和初期。当初は自前の船を所持し、漁業を営んでいた。
 獲れた魚は市場に卸すだけでなく、自社で干物などの加工物生産も行っていたという。
 昭和36年に缶詰生産設備を導入して、さば、いわし、さんまの缶詰生産を開始。
 現在は缶詰生産部門、冷凍・冷蔵部門、サケのフィーレ製造などの水産物加工部門という3つの事業を営んでいるのであります。
 銚子漁港近辺には4社の缶詰企業があるが、大規模な冷凍・冷蔵倉庫を持つのは髙木商店だけ。
 その冷凍能力は日産230t、保管能力は12,000t。つまり、漁港にいい魚が揚がったら自前で保管しておけるわけで、他社から材料を仕入れる必要がないのだ。
 これが髙木商店の最大の特徴なんであります。


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この日はいわし缶を製造していた
手前の缶にいわしを手で詰めていく
取材に応じてくれたのは常務取締役の髙木貴史氏


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いわしは缶を閉じる前に高温で一度蒸す

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蒸し上がると余分な水分・タンパク質が出るので、
これを機械で缶を反転させて捨てる
この過程で青魚特有の臭みも除去できるのだ


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調味液注入であります


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皆さん、奥の機械が缶を閉じる巻締機であります
同時に真空加工も行うのですよ


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こうやって、巻いて締めるから巻締


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そして圧力殺菌釜で加圧加熱処理をする
もう、マニアにはたまらんですなあ


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段ボールに詰める前に、巻締が完全かチェックする
ここまでの行程でも金属探知機など安全措置が3カ所あった


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更にX線装置と探知用コンピュータがある
魚で一番多い異物は釣り針なのだそうだ
機械と人の眼による4重5重の安全措置が取られている


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さ、こちらがマイナス27℃の冷凍倉庫


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倉庫の一角が『ねぎ鯖』専用のさば置き場
この大きさ、色艶。素晴らしい個体であります


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 現場を出ると、髙木氏と営業の豊島氏が試作品の試食会を開いてくださった。
 写っているのは営業担当の豊島氏。
 巨大なブリカマを丸ごと使った缶詰など、試作品には意欲作が多かった。


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 現在、髙木商店では『ごぼういわし』という新シリーズも発売されている。
 このいわしも、やはり最高の個体を選び出して、大事に冷蔵しておくのだ。
「いい魚が揚がると、“これはPB缶詰用だ”といって仕舞いこむんです。どこまでもこだわって作りたいんですが、おかげで生産量が少なくて少なくて...」と、何でも率直に話してくださる髙木氏。
 工場見学でも、従業員の皆さんは仕事の合間に目礼をしてくださった。そんな暖かさも印象に残った取材でありました。



 次回の『缶詰の現場から』は岩手缶詰(株)さんの盛岡工場を取材予定であります。