缶詰blog

世界中の缶詰を食べまくるぞ!

缶詰のある風景『オーパ!』

2005-10-28 13:59:04 | 連載もの 缶詰のある風景

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 この皿一枚に米、豆、シチュー、魚の煮たの、何でもかんでもいっしょくたに入れ、そのなかで切ったりきざんだり、まぜこぜの猫飯にして食べるのだと教えられる。(中略)~猫飯はこの国全土の習慣なんだという。(中略)
「この船の料理は例外じゃないんです。類型にして典型です。これからさきずっとこんなもんですよ。覚悟して下さいな」
 開高健『オーパ!』 集英社文庫


 これは開高健がブラジルに行ったときの様子だ。広大なアマゾン河を遡る船、「無敵艦隊のオオカミ号」に乗船して、食事の作法を教わっているところなのである。
 一枚の皿だけで食べるという風習は、東南アジアやインドのほうでもやっていたように思う。しかし取り分けた料理をみんな混ぜてしまうのはあまりないのではないか知らん。私には韓国しか思い浮かばない。
 このお食事の再現にもっともふさわしい缶詰さんとして、ブログ仲間のdii-chaiさんがお土産で買ってきてくれた『沙仁魚』が堂々のエントリーを果たしたのである。パチパチパチ(拍手音)。


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 かくのごとし。現地アマゾンの雰囲気を強調するため、皿はへなへなアルミ製とした。アマゾンには行ったことないけど。
 予想よりはずっと美味そうである。しかし、これを食べる前に、スプーンでごちゃごちゃと混ぜ込まなければならないのである。そういう企画にしてしまったのである。若干、勇気の要る作業だ。


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 かくのごとし。あまりにも凄絶な光景なので、モザイク処理を施さざるを得なくなった。失せがちな食欲を奮い立たせ(そんな言い方はないでしょうに)、えいやあっと一口。
 おっ、意外といけるではないか。あらためて缶詰表記を見ると、
『Sardines In Tomato Sauce』と書いてある。そのトマトスープには、魚の旨味がたっぷりと含まれていて、それが白飯に染みこんでいる状態なのだ。これが不味いはずはない。魚部分はまさにオイルサーディン。
 ああしかし、見た目の何とネコ飯なことか。残りは慌てるようにかっこんでしまった。

 読者諸賢よ。料理の見た目というのは、本当に大事なものなのでござるなあ。


内容総量:155g
固形量:93g
原材料名:タイ語のため不明


缶詰のある風景『ハツカネズミと人間』

2005-09-13 15:19:39 | 連載もの 缶詰のある風景

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 ジョージはたきぎの山に歩み寄って、枯葉に火をつけた(中略)。豆の缶詰を三個取り出す。それをほのおに触れない程度に近づけて、火のまわりに置く。
「この豆はたっぷり四人分はあるぜ」とジョージが言う。
 レニーはたき火ごしにジョージを見詰めた。「おらあ、豆にケチャップをかけるんが好きだな」とがまんしながら言う。
「おい、ケチャップはねえんだよ」ジョージはどなった。「ねえものにかぎって、おめえはほしがるんだからな」
 ジョン・スタインベック『ハツカネズミと人間』訳/大浦暁生 新潮文庫


 スタインベックは、キャンピングの情景を描くのが巧い。ヘミングウェイに勝るとも劣らずといった描写力である。
 しかし豆の缶詰なんて、そんなに消費されているものであろうか? 米国の小説にはよく登場するけれども。
 私の知っていることは、以下の通り。

1、豆は身体にいいから食べなさい、とママに言われて育った。
2、生産量が多いから安い=ビンボーさんでも食べられる。
3、調理が面倒なので豆の缶詰で済ませてしまう。
4、しかし本当は、豆よりいい物を食べたがっている。


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 かくのごとし。これはひよこ豆というものだ。哀れなレニーの替わりにケチャップをかけてみた。
 
 アメリカの豆料理と言えば、ポーク&ビーンズが思い浮かぶが、この二人は豆だけを缶詰から直に食べている。他には乾し肉一つとて持っていない。
 渡りの労働者である彼らは慢性的に貧しいのだ。しかし、夢はポッケから溢れるほどに持っている。
 その夢が後の悲劇につながろうとは、火を前にして豆を頬張っている今の二人には、まったく予想出来ないことなのである。ジンセイなどというものは、ほんの些細なきっかけで全てがひっくり返ってしまうものなのである。
 といっても、これは小説だけどね。


固形量:227g
内容総量:439g
原材料名:ひよこ豆、砂糖、食塩、塩化カルシウム、酸化防止剤(EDTA-Na)、漂白剤(亜硫酸塩)
原産国:米国

追記:いかんいかん、お味を書くのを忘れていた。表面にはわりと歯ごたえがあり、中はさりさりと粒子感がある。大豆や小豆のようなねっとり感がないのだ。これは煮込み料理にいいだろうなぁ。


缶詰のある風景『剣客商売』&『駅弁の丸かじり』

2005-07-14 21:55:29 | 連載もの 缶詰のある風景
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「ありゃ、ひどいものさ」などと、ものごとにこだわらぬ秋山小兵衛さえも、あまり、鰻を好まぬようだ(中略)。
 それが、上方から伝わった調理法で、鰻を腹から開いて、食べよいように切り、これを焼くという...そうなってから
「おもったよりも、うまいし、それに精がつくそうだ」
と、江戸でも、これを食べる人が増えたそうな。
 池波正太郎『剣客商売 辻斬り』 新潮文庫


 なぞと、江戸っ子の風情をたっぷりと味わえるのが、池波作品の醍醐味である。
 この話しに登場するのはまぎれもなくウナギ料理。私も好物だが、ここは庶民派缶詰&瓶詰さんのブログなのである。ウナギの蒲焼きをご紹介することなど、まずは

「なきものとみてよい...」

 となるのである。
 ところが、あったのですよ。えらく安価なうなぎ蒲焼き缶詰さんが。それもなんと、肝の部分だけを集めた缶詰さんが。
 こうなるともう一作、ご登場願うことになるのである。


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 もっと、“だけもの缶”というものがこの世にあるのではないか(中略)。サンマの塩焼きはハラワタがおいしい。サンマの塩焼きハラワタだけ缶”というのも売り出してほしい(中略)。シーチキンマヨネーズおにぎり”の中心部の具と接触するあたりのゴハンはおいしい。この“接触するあたりのゴハンだけパック”というのもいいかもしれない。
 東海林さだお『駅弁の丸かじり』 文春文庫


 今回入手した、カニ缶風に紙に包まれている、このうなぎの肝だけ集めた缶詰さん。これこそ東海林さだお氏言うところの、“だけもの缶”に違いない。肝となれば、もう、世界中の食べ物の中でも、一番美味しいものとして珍重されているエライお方なのである。フォアグラだって、あん肝だって、みんな肝なのだ。
 ちなみに私が「一番美味い!」と断言出来るのは、かわはぎの肝なのである。こいつの前ではフォアグラなんか到底敵わないのである。ブロイラーのレバーみたいなものである。

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 どうも話しがズレっぱなしではあるが、薄切りショーガを砂糖酢に漬けたやつを添えて、まずは一口。
 おお、ほろ苦さとタレの甘みの混成部隊。よーっく冷やした白ワインに合います合います。こりゃあたまらんですなあ。もう一口。
「ふむ。こいつ、よくできておるわい...」(池波氏)
「これ、かなりおいしいかしんない」(ショージ氏)


内容量:50g
原材料名:うなぎのきも(国産)、しょうゆ(大豆、小麦を含む)、みりん、砂糖
原産国:日本(浜名湖食品)

追:防災用の缶詰さんにもこんなの入れたら楽しいか“しんない”、ということで、ブログ上で災害情報を欠かさない『J'sてんてんてまり』“05.7.12まで”にトラックバックでござる  


缶詰のある風景『哀愁の町に霧が降るのだ』 

2005-03-03 22:35:20 | 連載もの 缶詰のある風景
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 そこでゆうべの残りのめしに沢野がパチンコで取ってきたビン詰めの海苔とウニをペタペタとつけてともかく空腹感をのがれた。~中略~夕方六時ごろ戻ると椎名と沢野が本を読んでいたので
「てめえら本など読んでいないでめしでも作れ」と言うと
「とうちゃん、めしならもう炊いてあるよ」と言った。
 しかしおかずがないのでまた海苔とウニでめしを食った。
 椎名誠『哀愁の町に霧が降るのだ』 新潮文庫

 我が缶詰ブログに、とうとう高貴なお生まれの瓶詰めさんがいらした。ウニの本場、長崎は壱岐からおいでいただいた『粒うに瓶詰め』である。こんな高級品を食するのは一体何年ぶりか知らん(実はいつものスーパーの特価品である)。
 昔からウニは高級食材のはずなのだが、何故かこのウニの瓶詰めは子供の頃のほうが身近だったように思う。ひょっとして昔は、非常に安価なエセ商品があったのかもしれない。「生ウニ不使用」などといった、常軌を逸した商品があったのかも知れない(そんな馬鹿な)。
 さて、この作品はエッセイストの椎名誠氏が書いた傑作お笑い青春自伝である。ビンボー学生が六畳一間に何人も集まり共同生活をしていくのだが、おかずは何を作ったとか、金のないときにいかにして酒を飲んだとか、そんな飲み食いの様子がとても面白いのだ。

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 かくのごとし。独特のアルコール臭が実に良ひ良ひ。これは生のウニとは全く違った食べ物ではあるのだが、しかし“我が輩は瓶詰めウニであるなーにか?”とでも問いかけてくるような、確固たるアイデンティティを持っていらっしゃるのだ。
 最近巷で流行の「熱々の白飯に最も合う食材は何か?」に対する回答として、この瓶詰めウニさんも堂々のエントリーをさせていただきたいと思う。

内容量:60g
原材料名:塩うに、エチルアルコール、調味料(アミノ酸等)、安定剤(グァー)、甘味料(ステビア、甘草)、カゼインNa(原材料の一部に乳、大豆を含む)
原産国:日本


缶詰のある風景『あるエッセイ』 

2005-03-01 19:18:29 | 連載もの 缶詰のある風景
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 昨年末、OCNブログ粋人であるalbero4さんから、クリスマスプレゼントとして素敵な缶詰セットをいただいたのであった。少しずつご紹介させていただいたのだが、いよいよ今回で最後である。
「末期の水」といった感を拭い得ない。
「やべえネタがないぞう」といった気持ちも沸き上がる。
 その最後の一缶を、『缶詰のある風景』シリーズとして叙述してみたいのである。今回は森瑤子さんのエッセイだ。
 ああしかし。実はこのエッセイ、まだ読んだことありません。ほんの小さなエピソードの聞きかじりだけが、小生のおつむに記憶されているのであります。それは、かの瑤子女史が、手早くオイルサーディン丼を作るということ。

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 プルタブを引っ張って開けてみると、実に大きなヒコ鰯さんが4尾。国産缶詰では見たこともないボリュームである。「よしよし...」と思わず頬を緩めて調理にかかった。
 このメニューにはいくつかのレシピがあるのだが(オイルサーディン丼とGoogleで検索するといっぱい出てきます)、私はこんな具合にやってみた。即ち
1、ヒコ鰯さんが身にまとった油を適度に残したまま、フライパンへそっと移す。
2、にんにくの薄切りを投入して中火で加熱。
3、にんにくに火が通ったら白ワインを振る。アルコールが飛んだら醤油を投入。一寸煮詰める。
4、白飯にそっと乗せ、ねぎや大葉などの香草を盛る。
 以上である。注意すべき点は、加熱中にヒコ鰯をひっくり返さないこと。すぐに身が崩れてしまうからだ。

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 かくのごとし。いやはや脱帽しました瑤子さん(友達かよ)。空腹だったことを差し引いても、大変に美味であった。一合炊いた飯を全部平らげてしまったほどだ。こんな一品を、酒を飲んだあと、もしくは夜なべで小腹が減ったときにさりげなくササッと作ってもらったら、世の男性諸賢はまいってしまうだろうなあ。
 しかし、私は誠に遺憾ながら、自分で作ってしまったのである。ううっ(以下滝涙)。

内容量:125g
原材料名:イタリア語表記のため不明(とうとう最後までこれだ) 
原産国:イタリア

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