鱒を食べ終わると、骨を火の中に入れ、今度はベーコンをもう一切れのパンに挟んで食べた。それからリトリスはコンデンス・ミルクを入れた薄い紅茶を飲み、ニックはミルクの罐に開けた穴に二本の細長い木片で栓をした。
「充分食べたかい?」
「うん、たくさん食べた」
アーネスト・ヘミングウェイ『最後のよき土地』訳/谷阿休 朔風社
これは主人公のニック少年が、妹のリトリスと冒険に出かける小説であります。
キャンピングの描写が素晴らしく、何度読んでもわくわくする傑作であります。
ところで、ニック少年は、この『缶詰のある風景』シリーズでは二回目の登場となるのだ。
興味と時間のある御仁は、過去記事の缶詰のある風景『二つのこころのある川』もご覧になられたし。
昨今は、缶入りのコンデンス・ミルクなぞ、なかなかお目にかかれないのだが。
そうそう。こうやって、穴を二つ、両端に開けたものだったなあ。
一つは無論、空気穴である。これを開けないと、大気圧のせいで中身が出てこないのだゾ。
かくのごとし。
小さい穴から、粘度の高い液体が出てくるさまは、なぜか快感をともなっている。
滴り落ちて広がる波紋も、あくまでもたおやかに、ゆったりと広がっていく。
一斗缶から塗料を注いだりする作業も、ワタクシは好きなんであります。
で、こうしてニック少年の物語通りに、木片で栓をしたわけであるが...。
肝心のミルクを、ぺろりと舐めてみると、ちっとも甘くないのであります。
幼い頃、かき氷にエバミルクをかけ回して、最後に罐をぺろりとやった時の、あの甘さが皆無なんであります。
そこで、あらためて缶詰さんを眺めてみると。
“無糖れん乳”だそうです。
そんな商品があるなんて、聞いてないよう。
この甘くないミルク、どうしよう?
内容量:170g
原材料名:生乳
原産国:日本・北海道