缶詰blog

世界中の缶詰を食べまくるぞ!

どうにもとまらない缶つまシリーズ 稚鮎の油漬け

2013-05-16 09:38:41 | 魚介

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これが稚鮎の油漬けだ!

 僕が最初に好きになった歌謡曲は、山本リンダの[どうにもとまらない]だった。
 幼時6歳のときである。
 歌詞の内容も、彼女の踊りも、当時は理解を超えたものだった。
 理解は超えていたが、あの迫力、あのほとばしるエネルギーは
「こりゃすげえや!」
 少年の心を震わせたのであります。
 とめたくてもとめられない。
 いや、実はとめたくない。
 情熱のままに突っ走っていきたい。
 きっとあの歌は、そういう思いを表現したのだろうと、少年は推測したのだった。
 実は現在の缶界(缶詰業界)にも、「どうにもとまらない」シリーズが存在する。
 それは、K&K国分が展開する[缶つま]シリーズなのであります。




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焼いたネギに乗せチーズをトッピング
ウマい缶詰を見ると料理を作りたくなる

 そんな缶つまは、この春に新商品を追加してきた。
 その数、なんと8種類。
 その中に今回の[びわ湖産 稚鮎油漬け]が含まれているのだ。
 鮎の稚児を、ワタごと丸ごと軽く干し、それを綿実油に浸けている。
 オイルサーディンと同じ作り方であります。
 ひと口噛むと、精妙な苦みが口中に広がる。思わず、
「んー、これこれ。鮎のウマさはこれ」
 声が出る。
 初めは1尾ずつ、慈しむように食べていたが、やがて2~3尾まとめて口中へ。
 これが本当の贅沢というもの。
 折しも梅雨前の、一年でもっとも爽やかな季節。
 傍らには冷えた清酒。
 原稿の締め切りが迫ろうと、企画書作成が重なろうと、この至福は「どうにもとまらない」のであります。




 固形量:40g
 内容総量:80g
 原材料名:あゆ、綿実油、食塩(これだけ!)
 原産国:日本(K&K国分
 希望小売価格:500円(税別)






シーチキンとろで妄想なり

2013-04-10 11:22:58 | 魚介

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ゴールドパッケージでゴージャス

 日本で一番売れているのは、ツナ缶であります。
 そして、ツナ缶といえばシーチキンであります。
 シーチキンははごろもフーズの商品名で、商標登録されているもの。
 でも、日本ではみんな、ツナ缶のことを「シーチキン」と呼んでいる。
 ソニーのウォークマンのようなものであります。
 今回登場するのは、紛う方なきシーチキン。それも“とろ”と名の付いた高級品であります。




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美が宿る内観

 開缶!
 いかがでありましょう。ため息が出るほど美しい内観ではないか。
 あたかも、打ち寄せる波のごとし。
 あたかも、有名設計士の手による建築のごとし。
 あたかも、京都・竜安寺の石庭のごとし。
 だんだん例えがおかしくなってきたが、とにかく美しいことに異論はないと思う。
 はごろもフーズによると
「夏にとれた旬のびんながまぐろのとろ肉だけを使用しています」
 という。
 びんなが! そしてとろ肉!
 とろ肉とは恐らく、かまの付近から腹にかけての部分だろうと推測する。
 つまり、脂の乗った美味しいとこだけを使っているのだ。
 見た目が美しいだけでなく、美味しいとこを使っていたのだ。
 これは加熱などせず、そのまま味わってみたくなる。




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 かくのごとし。
 身肉を手で千切り、冷たいご飯と野菜と一緒にして、ライスサラダにしてみた。
 味付けはEVオリーブ油とレモン汁、黒コショウのみ。
 さてこそは、シーチキンとろをひと口...。
 むっ。
 歯応えがあり、かつ、しっとりと柔らかい。
 そしてうま味がある。ビンナガのうま味が、咀嚼するたび、じわっと湧き上がってくる。
 さすが“とろ”と銘打っただけある。
 がつがつと食べるのはためらわれた。ちびちびと、惜しむように食べていく。
 ついでに、缶に残しておいた身肉も食べていく。
 これは、あれだなァ。
 秋の夜更け、ひとりウヰスキーを呑みながら、その相手をさせたいツナ缶だなァ。
 しんとしずもった秋の夜。片手にはミステリーの文庫本。
 箸で身肉を一枚ずつ剥がしとり、口中へ投入。しっくりと慈しみながら味わう。
 すかさず、ウヰスキーをごくり。
 ふと気付くと、ベランダで秋の虫が鳴いてゐる。
 りりり、りりりと鳴いてゐる。
 いいものですなァ、秋といふのは...。
 やっ。春本番なのに、秋の妄想に入ってしまった。
 しかもその妄想に20分も浸ってしまった。
 それもこれも、このツナ缶のせいなのであります。




 内容総量:75g
 固形量:55g
 原材料名:びんながまぐろ、綿実サラダ油、食塩、野菜エキス、調味料(アミノ酸等)
 原産国:日本(静岡県清水・はごろもフーズ
 参考価格:450円


 


中骨缶でオーブン焼き

2013-02-28 15:11:45 | 魚介

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木の屋石巻水産のサケ中骨缶
身肉もたっぷり付いてかなりオトク

 魚が好きだ。
 肉もいいが、魚には肉と違った魅力がある。
 では、魚の魅力とは何か。
 それは魚体1尾の中に、様々な味わいがあることだ。
 顔周辺の、ぷるぷるとしたゼラチン質。
 皮のとろける食感。これは強火で炙れば、ぱりっとした食感に変化する。
 腹のあたりの脂が乗ったところ。
 そして、骨。
 骨がウマいなんて、よく考えると珍しいことではある。
 これが畜肉だったら、食べられるのは軟骨くらいだと思う。
 それが魚の場合、柔らかく煮込んだ骨が抜群にウマい。
 サクサク、ほろり。髄からはうま味が湧き出す。
 だからこそ、高温で加熱調理される魚の缶詰も、骨がウマいんであります。




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 さあさあ、本日も開缶!
 味がたっぷり染み出てそうな缶汁に、サケの中骨が浮きつ沈みつしている。
 中骨といいつつ、身肉がかなり付いているのが嬉しい。
 マグロでいう中落ちの部分だ。これは美味しいに違いない。




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 かくのごとし。
 中骨を耐熱皿にしき、上から下茹でしたじゃがいもスライスを乗せ、さらに中骨を乗せ...と3段重ねにしてみた。
 そこに缶汁をかけ、EVオリーブ油をかけ、ローズマリーを散らし、黒コショウをふってオーブンで焼き上げたのであります。
 こうすると、鮭のうま味、骨のうま味がじゃがいもに移り、またじゃがいものでん粉質が塩味のサケを柔らかく包み、それこそ
「互いを思いやった」
 関係が築かれたようだ。

 実はこのサケ中骨缶。開発したのは岩手県の宮古水産高校だといわれている。
 それは昭和61年のこと。同校で様々なサケの商品を作っている中、三枚におろしたあとの中骨を活用できないだろうかと、中骨だけ集めて缶詰にしてみた。
 これが、実に美味しかったのだ。
「大事な命だから、最後まで食べ尽くしてあげよう」
 この思いから誕生したのであります。
 それが、今では缶詰企業数社が製造するまでになった。木の屋石巻水産もまた、その1社であります。
 大根おろしで食べてもよし。小口切りのネギを混ぜこみ、醤油とEVオリーブ油で食べてもよし。
 使い勝手のいい缶詰でありますぞ。




 内容総量:180g
 原材料名:鮭の中骨、食塩(これだけ!)
 原産国:日本(木の屋石巻水産
 参考価格:230円




宇和島水産高のぶりだいこん

2012-12-16 12:15:02 | 魚介

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ほのぼの癒し系デザイン。校歌の歌詞も書かれている

 年の瀬であります。
 師走であります。
「年末年始を挟む関係で、原稿の締め切りが通常と違ってきます」
 などという連絡が入ってくる。
「年賀状のリストはどこ?」
 家人が問いかける。
「大掃除は終わりましたか」
 テレビからも諸事を催促される。
 よせばいいのに、毎日わざわざ日付を確認しては
(もうすぐ年が暮れるゾ)
 確認している。
 まったく慌ただしい月であります。
 そんなときに最適なのが、ほのぼの系缶詰の代表・ぶりだいこん。
「何が最適なの? 意味わかんねーし」
 などと突っ込まないで欲しい。
 あくまでも雰囲気で申し上げてるのであります。雰囲気!

 


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 開缶!
 大きく切り割った大根と、同じ大きさに揃えたブリの切り身が、風車のように美しく配置されている。
 そこから、醤油の利いたノスタルジックな匂いが立ち昇ってくる。
 缶に表記してある通り、これは宇和島水産高校で作られたものだ。
 各地の水産高校では、授業の一部として、生徒たちが缶詰を作っている学校がある。それらは催事や、地元の道の駅などで発売され、一般の人も買うことが出来るのであります。
 中身を深皿に移して、電子レンジで1分、加熱してみた。




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 かくのごとし。
 実は温める前に、どうにも待ちきれなくて、ひと切れのブリを食べてしまった。
 冬の低い気温の中でも、ブリは歯の間で柔らかく崩れた。脂が充分に乗っているのだ。
 しかも、香りがいい。血合いの多い部分を食べたのに、臭みは皆無。
「ではでは... 」
 温めたブリをあらためて、ひと口。
 やっ。常温よりもやや固くなっている。加熱しすぎたかも知れない。
 電子レンジの加熱は難しい。均一に温まらないし、火加減がよく分からない。
 とはいえ、このブリは素晴らしくウマい。きっといい原料を使っているのだと思う。
 ブリのうま味が染みた大根もまた、たまらない。

 それにしても...。
 この缶詰は高校生が作っているのだ。
 その作業中には、きっと
(いろんなドラマがあったろうなー)
 推測してしまう。
 ブリを逞しく切り分ける男子を、熱い眼差しで見守る女子も、いたかも知れぬ。
 女子の家庭的な一面を見せられ、思わず恋に落ちた男子も、いたかも知れぬ。
 ああ、若いって、いいなぁ。




 固形量:120g
 内容総量:170g
 原材料名:ブリ、大根、しょうゆ、砂糖、水あめ、みりん
 原産国:日本(愛媛県宇和島市・宇和島水産高校水産食品科 )




木の屋石巻水産のサバ缶が復活!

2012-12-07 15:02:37 | 魚介

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底抜けに明るい営業・鈴木氏(左)と広報・松友氏(右)
しかしあの3.11の大震災を生き延び、今も闘ってる2人だ



 宮城県は石巻市にある木の屋石巻水産
 金華さばを使ったサバ缶やクジラ須の子缶漢方牛大和煮缶などで人気だった缶詰企業だ。
 その社屋や工場は、一昨年の東日本大震災のときに、大津波で流されてしまった。
 やがて海水が引いた後には、石巻港から押し寄せた大量のヘドロ、泥、がれきが堆積していたが...。
 その合間に、きらりと光るものがあった。
 それが、在庫の缶詰だったのであります。




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震災後の5月の様子。強烈な臭気と刺激性ガスが発生していた



 このヘドロまみれの缶詰を掘り出し、丁寧に洗って、中身が無事なものを販売しようと提案したのは、世田谷区経堂の人々だった。
「どうして経堂なの?」
 こう思われる御仁も、いらっしゃると思う。
 実は、経堂北口の外食店の一部では、09年頃からサバ缶を使ったメニューを提供し、「サバ缶の町」として話題になっていたのだ。
 中でも木の屋の金華さば缶は、その味に心底惚れ込んだ店主や客が多かった。
 だから
「今まで木の屋さんにお世話になった。今度は我々が助ける番だ」
 この一念があったのであります。
 毎週、経堂と石巻を往復する車を手配し、ボランティアの人々が往復した。
 往路は冷蔵庫や水食料、ストーブなど寄付品を積み込んで。
 復路はヘドロまみれの缶詰を満載して。



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 こうして東京に持ち帰った缶詰は、試行錯誤して作った洗剤で洗いあげた。
 これは大変な作業だった。
 重油や海水が混じり合ったヘドロは容易に落ちず、しかも異臭を放っている。
「なるべく匂いが発散しないように...」
 周囲に気を配りながら、イベントカフェ[さばのゆ]を中心に洗浄を行った。
 また、洗いあげたのはいいが、紙巻きだったラベルはもちろん、剥がれ落ちている。
 ラベルには原材料名、販売者名などが書いてあり、これがないと商品として売ることは出来ない。
 そこで方便として
「復興義援金をいただければ、この缶詰を差し上げます」
 こういう形をとっての販売だった。
 缶詰を洗ったボランティアの延べ人数、およそ4,000人。
 この運動は、やがて「希望の缶詰」と呼ばれ、メディアでも話題になった。
 さばのゆ店主の須田泰成氏によって、同じタイトルの絵本としても出版されているのであります。



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ついに復活した木の屋さばみそ煮缶

 さて、そんな木の屋さんは現在、新工場の建設が進んでいる。来春には竣工予定だという。
 商品も少しずつ再販している。12月1日には、一番人気のあったさばみそ煮缶が販売されたのだ。
 ただし現段階では、自社工場がないため、同じ石巻の缶詰企業(サンヨー食品)に製造を委託しての販売であります。
 同じ缶詰企業同士、協力しあって前に進んでいるのだ。



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サバ缶復活を祝う[さばのゆ]のイベント
缶詰deゆる薬膳著者・池田陽子さんもやって来た

 今年は海水温が高かったこともあり、金華さばの水揚げがほとんどなかったという。
 だから今回は「石巻港水揚げ、脂の乗った旬さば使用」というみそ煮缶だ。



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 久しぶりに開缶!
 香ばしさと甘さを感じる味噌の匂いが立ち昇る。
 生サバを使い、高砂長寿味噌と喜界島粗糖で仕上げるなど、基本的な作り方は金華さば缶と同じだそうだ。



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かくのごとし。
缶汁を切って白髪ネギ、ゴマ油、白ゴマをトッピング



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 残った缶汁は、熱湯を注げば一人前の味噌汁になる。
 ネギを散らすだけでもウマい。サバの出汁と脂が溶け出ているからだ。




 かくのごとく...。
 木の屋さんは、少しずつではあるが立ち上がっている。
 その闘いはまだ続いている。しかし、まずは同社がサバ缶を再販できたことに快哉を叫ぼうではないか。




 固形量:120g
 内容総量:170g
 原材料名:さば、砂糖、味噌、食塩、でん粉
 生産国:日本(販売・宮城県石巻市/木の屋石巻水産 製造・宮城県石巻市/サンヨー食品