ジョージはたきぎの山に歩み寄って、枯葉に火をつけた(中略)。豆の缶詰を三個取り出す。それをほのおに触れない程度に近づけて、火のまわりに置く。
「この豆はたっぷり四人分はあるぜ」とジョージが言う。
レニーはたき火ごしにジョージを見詰めた。「おらあ、豆にケチャップをかけるんが好きだな」とがまんしながら言う。
「おい、ケチャップはねえんだよ」ジョージはどなった。「ねえものにかぎって、おめえはほしがるんだからな」
ジョン・スタインベック『ハツカネズミと人間』訳/大浦暁生 新潮文庫
スタインベックは、キャンピングの情景を描くのが巧い。ヘミングウェイに勝るとも劣らずといった描写力である。
しかし豆の缶詰なんて、そんなに消費されているものであろうか? 米国の小説にはよく登場するけれども。
私の知っていることは、以下の通り。
1、豆は身体にいいから食べなさい、とママに言われて育った。
2、生産量が多いから安い=ビンボーさんでも食べられる。
3、調理が面倒なので豆の缶詰で済ませてしまう。
4、しかし本当は、豆よりいい物を食べたがっている。
かくのごとし。これはひよこ豆というものだ。哀れなレニーの替わりにケチャップをかけてみた。
アメリカの豆料理と言えば、ポーク&ビーンズが思い浮かぶが、この二人は豆だけを缶詰から直に食べている。他には乾し肉一つとて持っていない。
渡りの労働者である彼らは慢性的に貧しいのだ。しかし、夢はポッケから溢れるほどに持っている。
その夢が後の悲劇につながろうとは、火を前にして豆を頬張っている今の二人には、まったく予想出来ないことなのである。ジンセイなどというものは、ほんの些細なきっかけで全てがひっくり返ってしまうものなのである。
といっても、これは小説だけどね。
固形量:227g
内容総量:439g
原材料名:ひよこ豆、砂糖、食塩、塩化カルシウム、酸化防止剤(EDTA-Na)、漂白剤(亜硫酸塩)
原産国:米国
追記:いかんいかん、お味を書くのを忘れていた。表面にはわりと歯ごたえがあり、中はさりさりと粒子感がある。大豆や小豆のようなねっとり感がないのだ。これは煮込み料理にいいだろうなぁ。