閑寂肆独白

ひまでさびしい本屋のひとりごと

 「文庫や」の末路 と 新聞記者

2013-08-08 07:35:59 | 日記

 「文庫や」の末路 と 新聞記者

 少し前、新聞に「古本の山に苦悩」という見出しの記事が出た。十年ほど前になるか、「古書界の風雲児」というような惹句で、ほとんどの新聞はもとよりTVでも紹介された文庫専門古書店の末路である。奥さんの実家の伝手で よそから来て、文庫専門の古本屋を北九州で始めた。読んでしまった死蔵されている文庫を「活かす」という触れ込みで、ほとんど只で受け入れた本を、ボランティアという名の只の労働力を使ってやるという話だったと思う。北九州の古本組合に加入しようかという話があったそうだ。小生は会う機会がなかったが、たまたまTVで彼の対応を見る機会があったのでどんな話し振りかを垣間見てはいる。組合加入の話で対応した同業者の話ではとても「まともに相手できない」という話だった。 古本業界で彼を評価するものはいなかったし、「いつまで続くやら」という風だった。あにはからんや、である。小店にも彼の指示を受けたと思われる一覧表を手にした「文庫の背取り屋?」が数回来たことを覚えている。品切れ、絶版の文庫を探してくるとそれなりに買い上げてくれる仕組みで、よく事情を呑み込んでいない善意の「本好き」連中をけしかけ、無手勝流に文庫を集めては「文庫専門店」という触れ込みで結構な値段で売っていた。

しかし 当時の報道はそうではなく、いろんな褒め言葉で彼を持ち上げ、「眠れる古書業界にカツを入れる」というような表現もあったと思う。小生の言う「おっちよこチョイの掘り出し物」感覚である。当時、すでにブック・オフが展開中でもあったし、古本の流通に関係した人たちでこの店の先行きを楽観視した人はいなかったのではないか、それよりも、タダで受け入れた本を「売って」どうして「美談」になるのか不思議であったし、多弁・饒舌で煙に巻く彼の話ぶりをほんとうに「信用できる」と思った人がどれだけいただろうか。しかし新聞記者はその多弁・饒舌に無批判に乗って、本の送付先を記事の中に明示し、読者に「無償譲渡」することを煽った結果、この新聞記事を「信用して」本を送った多数の善意の人たちが発生した。いわば「詐欺」の幇助をしたわけだ。これ等の記事を書いた連中は今この事態をどう考えているだろうか。小生はこれまでに、報道機関と接する機会は少なくない方だと思うけれど、記者の不誠実・付和雷同・不遜な態度などに結構悩まされてきた。本に関することに限ってもこれで2度その能力を疑う事例をこの欄に書いたことになる。通信機器が発達し、以前に比べれば記事の作成は楽?になり、時間の余裕はできている(ハズ)。場当たりのつっかけ記事ではなく、もう少し周りを見据えた記事を書ける「常識・教養」を身につけてほしいですね。  

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