閑寂肆独白

ひまでさびしい本屋のひとりごと

古本屋の消長。その2

2024-06-28 23:22:56 | 日記

 先に古本屋のなくなることを書いた。 ここ数年で 北九州・福岡・大分熊本の各組合に十軒以上の組合への新規参入があったようだ。ようだというのは小生は同業者との付き合いが少なく、またほかの業者の消息にあまり興味がなくそれとなく聞こえてくる範囲でしか情報がないという事なのだ。そのうち数人は「市場」で見かけるのでそれとなくどんな風なのか見えてくる。

 ある新規参入者は どんな事情か知らないがマスコミにかなり紹介され新聞数社のほかTVの報道もあったそうだ。元、あるいは本職?はデザイナーらしく其転身もマスコミの興味を引くらしい。「新しい古本屋が開業」というのでどんな本を扱うのかにはわが方も関心あり。ところが、熱心に見たり入札したりする品は何と雑誌ばかり。それもまさに今はやりの半裸・全裸の写真満載の「ムック」類ばかり。台車一杯買って意気揚々である。これが「古本屋」と言えるのかとこちらが顔が赤くなる。 50年ほど前この業界に入ったころ、同世代の者が福岡・北九州で7・8人いた。それぞれ店の立地や様子は違っていたが、市場に出てくる品をまさに「満遍なく」見、触り、先輩に聞き、今の自前の店にすぐ役に立たなくともまず「古本の世界」を知ろうと努めていた。身の程知らずの品を買って笑われた(好意的に)ことも珍しくなかった。明治物・和本・紙物・文書・肉筆もの、なんでもとりあえず触ってみようとしたように思う。

 しかしながら このごろの参入者で古いものに関心を持つのは殆どいない。何かの折に品物を「これは○○だ」とか品物のことを触れると「何でそんなこと知ってんですか」「よくわかりますね」という。しかし自分で知ろうとはしない上に関心がないと本を捨ててしまうのだ。福岡の市場は不要の本を捨てていく場所を用意してあるが、ここが危ない。朝、市場の開始前にすでに捨てる者がいるのだが、ある時、「赤毛のアン・村岡訳」の綺麗なのが数冊あった、拾ってあたりを探ると10冊揃っている!しかも最初の版。せめて市場に出すくらいの「本」に関心を持てないのかとあきれてしまった。持って帰っての結果、半年を待たず一万円で売れた。今の業者はネットを知らない者はいない。積極的な関心はなくとも入手した品がどんなものかくらいは調べろよ、そして価格が判れば自分で売ればよいではないか、と思うのは「古い人間」。自分の関心がないものはまず眼中にないらしい。まさにタコ壺人間。 今福岡の市場で古いものに関心を寄せるのは小生を含め4・5人しかいない、しかも皆60歳以上。会場の8割は今はやりの半裸・全裸の写真満載の「ムック」類、アニメ・漫画・CDなどで埋め尽くされている。

 これらの品は今は大人気だが おそらく十年くらいしか続かないだろう。単なる「流行」に過ぎないと思う。されば、今のような出版業界を見ていると「古本業界」そのものが相当淘汰されるに違いなく、その時になって「不易」なる物に関心を持っても間に合わないだろう。「古本屋・背文字ばかりの学者なり」と言われていたが、今や背文字のある本が捨てられつつある。 新刊や娥なくなりつつあるのを嘆き、心配する記事は多いが、古本屋の現状を知る記者はいない。

 「本を読む人間がいないから売れない」こんなにはっきりしたことはない。

 今更嘆き節をいくら並べても時すでに遅し、少子化・人口源も同じだ。

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古本屋の消長

2024-06-02 22:39:02 | 日記

 このところ 廃業する店 そのつもりのはっきりしている店、幽霊的存在の店の話がよく聞こえてくる。斯くいう我店も 店じまいを視野に入れているのだが、 同世代、ほぼ同時に業界に入った仲間で今も生き残っているのは半数に満たない。生き残っているのも年齢からしてここ数年で消えざるを得ない者ばかりという古書業界の身の回りである。 いざ店を完全に片付けるというのは相当に大仕事で在庫の整理だけでも現在売れ残っている本を市場に出しても採算が合わないかもしれないのだ。九州に限らず 東京の神田の各市場の情報を見てもべらぼうな量の出品、毎週10トントラックでとかカーゴ10数台とか。その中のかなりの量が同業者の廃業によるものだという。

古本屋は借金をしていないのがせめてもの救いだと以前きいたことがある。この頃は営業機材のリースという曲者がいて途中で解約となると思いがけない出費を強いられる。我店ではある複合機のリースに警報機を加えた契約をしていたがこれがこの6月で仕舞える。

これが大変な損失であった。勧められて入れた複合機は大きすぎて邪魔で1年で引き取ってもらい、代わりに家庭用のコピー機が来たがこれで十分、しかし数年で壊れて今は自費購入の器械だがズット順調。警報機は2年6か月で故障、修理を頼んだら保障は2年で切れていて修理に2万円以上かかるという、これも修理しても我店には役に立たないとわかって壊れたまま放ってきた。結局何も役に立たなかったにもかかわらず契約だけは残ってそれがやっと来月おしまいになる。

 自前で買ったら数十万程度しか掛からなかったであろう器機に全く無駄に2百万円以上払ってきたことになった。 今はリースは一切受け付けていない。PCに関しては管理してくれる人と契約しているので周辺の事も相談に乗ってもらえ、必要なものは自前で買う事にしたのだ。

 本の仕入れは制限しているつもりでも市場でそれなりの物を見るとやはり手が出てしまう。 在庫は一向に減らない。通販はそれなり動いているが一冊づつの取引なのでなかなか嵩が減るところまで行かない。店だって同様でその上誰も入ってこないとあっては在庫が減るわけはない。百円均一と特価台だけは減ってガサガサ状態だが、安売りする本をそんなに用意しているわけはなく、500円千円という本を100円にはできない。それでも換金できた方がよいではないか、という人もいるが、安売りは本に対して失礼だと思うのだ。

 少し昔になるが、弊店の際在庫整理に苦労する話は聞いたことがなかったと思う。  「消長」と書いたが「長」の方は次の機会に書こう。

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