閑寂肆独白

ひまでさびしい本屋のひとりごと

芥川龍之介のこと

2017-11-25 08:58:45 | 日記
店に女性の来客あり、以前わが店から芥川の全集を買ってくださったとのこと、それで卒論を書いたそうである。このところ小生にとっても芥川づいているなあと思いながらの対応。いろいろ話しているうちに 故松原新一氏の指導を受けたとのこと。小生が彼の研究室の最後の片づけをしたというと びっくり!彼に大変面倒をみてもらったとのことで涙ぐむ一幕でした。そこで思い出して、芥川についてあることを聞いてみた。それは
小生がずっと以前に読んで記憶にありその後確認できていないこと、2件。
一つは 芥川は大変な風呂嫌いで 匂いがするほどだったということ、本当にずっと前何か目を通した中に書かれてあって 妙に記憶に残っているのだけれど、さて一体誰のなんの本であったか覚えがないし、その後出会っていない。彼の文学本質論からは離れた「ゴシップ」であろうけれど、作家の全身像を思い彫琢するについては刻む溝の一本であってより影印がはっきりするというものだろう。酒癖のこと、金銭のことなど作家の実態・クセなどはいろいろ書かれているけれど「匂い」は写真では窺がうことはできない、また身近に接した人でないとわからないことでもある。 ささいなことだけれどやはり「大事」と思う。
 もう一本は 芥川の小説化としての資質、あるいは分類に関して。彼は江戸期の、あるいは中国の小説説話類を相当読みこんでいたらしい。彼の作品はほぼすべて「元ネタ」があることは知られている。有名な「雲の糸」は仏教説話であることはだれでもわかる。彼自身の一からの「創作小説」は無い。という論説、これも 誰のどの本で読んだか定かでない。
 小説のありようはいろいろ、これだけ「情報」あふれている今日、ある程度の下敷きになるものがあるのは仕方がないだろう。その点 明治の近代口語文学の嚆矢であったり確立に努めた人たちはやはりすごいことをやっていたと思うべきだろう。ただし本人はもとより家族親族のことを暴き縷縷愚痴る日本流の「私小説」はいただけないですね。 いかに個人の煩悶であっても「創作」の色気のあれこれがなければいけないと思いますが 諸賢は如何。  以上2点 彼女も知らなかった。
 ただの物知りの与太知識なら根拠はどうでもいいけれど、今のわが店ではちと座り心地がよくない。さればとて今更芥川の関連書ひっくり返す気にもならず。
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古本屋のしごと

2017-11-09 08:01:16 | 日記

本日で天神・丸善ギャラリー即売会が終わる。 途中から売り上げの集計を聞いていないので結果はわからないが、出品メンバーのうちでは最低の様子である。
 この秋の即売会は目録を出さない、はがきの案内と新聞広告である。わが方としては、何を持っていくかについていつも目標が定まらずあまり面白くない。で、ほかの店の品ぞろえはといえば圧倒的に「新本」あるいはそれに近いものが多く、またそういったものがよく売れるのも事実ではある。しからばわが店も出せばいいではないかということになるのだけれど、これが難しい。そういう傾向の本を処分してくださるお客さんがわが店の周辺にはいない。美術・音楽・思想など、どの分野を見ても圧倒的品ぞろえ、わが店で30冊出せるなら相手は150冊はあるぞ、という具合。やはり大学生などがいる町との違いが如実に出てくる。ではわが店は何が売れるかといえばやはりもう少し古い、資料・堅い本、そして地図・チラシ・パンフ類。 もとよりわが店は行き当たりばったりのお客を相手にするのは苦手で、スーパーでの即売を早くにやめたのもそれが一因。スーパーでの買い物の残り銭で中古の文庫・漫画・雑誌を売るのはブックオフ様の店に任せていい。
われらは「古書」を売ろう というのだ。定価の割引というのではなく、本の価格の再評価をお客に提示している、と思う。それが古本屋の仕事だろう。百円均一やバーゲンがわが店がしなければならないとは思いたくない。目録を出し(簡単でもいい)こんなものが出ますという案内をしてその気に(買う気)なってきてもらわなければ、何があるかわからないでは財布を膨らませてはこないだろう。 でもほかの業者は目録を嫌がる、「面倒、何を目録にするかわからない、とりあえずお客さんは来てくれるのだからそれでいいではないか」と。
 彼らはみんなで一緒に「売れるものを売る」極端に言えば「ややこしいものは嫌だ」。わが家はほかの店と「区別」して他とは違う物があります、こんなものがありますとアッピールしたい。 この差は埋めるのは難しい。先の春のギャラリー展である店が目録掲載の品がほとんど売れず、経費倒れだ、次回は目録なしでやろう という話になっている。反対するほどの気力なく目録発行の責任は持てないのでやむをえないことになるだろう。ちなみに わが店の目録の成績は決して悪くはないのだ。出品点数のうち売れた割合はたぶん一番良い成績。金額はさほど高いものではないけれどそれだけ顧客へ受け入れられた出品をしてきたと思っている。

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