この一か月、コロナ騒動は続き、今月に入っては大雨。 田舎の静かであるはずのわが店にも火の粉は降ってくる。ただし相変わらずあまり読まないので書物に関する話題は少ない。少し暇なのでこの際と思ってズット触らなかった物置同然の書棚などの整理をしてみている。「なんでこの本をとっていたのかな」と思って開くと「ああそうか!と思い出すことがあった。 上前:「やわらかなボール」 広野:「昭和三方人生」の二冊を見つけた。いずれも表題には大牟田を思わせるものはないけれど、前者は熊谷一弥のことが書かれている日本のテニスの創成期の話で、書き初めに大牟田のことが出てくる。後者は三方「馬方・船方・土方」で生涯を通した人の想い出を綴ったものだけれど、「土方」の中に昭和13年に大牟田の宮浦坑に採用され16年前半までの日記が載っている。
いずれも大げさな記述ではないけれど戦前の大牟田の様子がうかがえて面白い。 しかし 大牟田の郷土史に関心の或る人にどれだけ知られているだろうか。 どこの町でも「町おこし」の一環で有名・著名人の発掘・顕彰をやっているけれど、わが店の目からすると「なんかなあ?!」というものが多い。大牟田でも先の閉山二十周年を記念して大阪で(地元大牟田ではなく!)想い出の企画展示があってわが店も少し絡んだのだけれど、そして今までになかった切り口の「大牟田の歴史」を綴っていて、良い企画であり記録の本が出来上がったのは十分評価される、しかし、その案内チラシを見ると一番上段に「この本には三池・大牟田の文化の全てがあります」という惹句が掲げてある。 それはないでしょう、というのが小生の感想。 これまでにわが店に来られて、伝記などを書きたいが資料はないか、という話はいくつもあった(うまくいった例の一つが清水:「毒煙都市」)熊谷もその一人、ほかに貝谷八百子、神作濱吉、蓮尾蓮乗、保少年、あるいは白狼、少し変わって遊郭についてなどなど。「文化」の切り口は多様で、「全て」というのは言い過ぎと思った次第。テニスに次いで終戦後のノンプロ野球の歴史からは「東洋高圧野球部」も外せないだろう、書き残すべきことはほかにもまだあると思うのですが。