閑寂肆独白

ひまでさびしい本屋のひとりごと

 言っても始まらないが

2022-07-24 10:26:53 | 日記

 

 先だって 或る大学の研究者が来店し、挨拶もそこそこに書棚に向かい、黙っててきぱきと選んで 十点ばかり買い上げを決めたのを見て 報告したばかりですが 一昨日にも面識のない40歳くらいの来客、棚を一わたり見回してから目当ての棚で幾冊か手に取ってみた後、2冊を「是ください」。話しかけようとしたのだけれど乗ってこないのでやむなし。代金をいただいておしまい、その間十数分。

 わが方としてはこれぞ「古本屋のお客様」です。 入ってくるなり「〇●はないかね」等という輩は 正直言ってきてほしくないです。 

 店売りが不振で 「他所からの人」しか評価しないのをこのところボヤキ続けなのだけれど、見方を変えようと思う。というのが、これが食べ物屋だったらどうだろうか、と思った次第。いくら「伝統の、名物の、天下一品」といったところで地元の人が来なければ難しいのはこの度のコロナでよくわかった。食べ物屋は仕込んだものは期限があってむやみにストックできないので客がなければ商売を止めざるを得ない。 この点古本屋は「在庫商売」その通り、いくら時間がたっても食べ物のような「賞味期限」はないのだから これを良しとしなければいけない「仕事」なのだと言い聞かせることにした。「読む人を待つ」しかないのだから。

 もっとも店先の百均・特価くらいの売り上げでは電気代にしかならない、これは困るのだ。しかもその「常連」がいて(スーパーなどで時間切れ割引・特売を待つ、しかもそれしか買わない輩と同じく)「お得意様顔」されるのはホボ生理的にイヤなのです

 このところ「日本の古本屋」の通販が順調(と言っても全国平均にはまだかなり及ばない)で 助かっている。荷造りをしながら、いずれもこの店の店頭にあってはまず売れないどころか目をくれる人もいないだろう書物で うれしいやら悲しいやら、という感情は拭えませんね。

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久しぶりの来店。

2022-07-10 07:34:25 | 日記

 以前数回来てくださっていた某大学の教授が弟子の助手?と共に来店された。コロナのせいで 2年ほど大牟田にこれなかったという事だ。

わざわざ我店に、という事は言わずと知れる「炭鉱」関係の研究者である。 今回は連れのお弟子さんの方が 我が家の棚を喜んでもらってよかった。教授を含め、文系の研究者の目に留まるものは概ね似ていて、数回来店すればもう買うものがないという事になりがちです、そもそもそう沢山の種類の文献・資料が転がっているわけはないのだから。 このお弟子さんは文系ではあっても鉱山の採炭稼働・機械周辺の研究とあってちょっと見る目が違っていた。挨拶もそこそこに棚に張り付いて「是も・あれも」と ものの数分で10点ほど「是いただきます」  これまでほとんど動かなかった技術に関する研究誌や報告書。わが方ももとより「動く道具」への関心があるので意図的に集めて、「意地で維持」してきた品々で、売れてくれるのはうれしいけれども、一方で思うのは さて同種のものを再度入手できるか?

 今回に限らず炭鉱関係の来客に以前から「資源の枯渇」を訴え・お伝えしている。閉山後20年を超え、炭鉱に関係した人や機関はすでに周りにいなくなって、あそこにはまだあるかもしれない、という目途が立たなくなっていて、要するに資料を入手できる可能性がなくなってきている。 大手、中小を、あるいは私家版を問わず、「出版されたもの」であれば少なくとも数百、大手であれば数千冊は世に出回っているのだからそのうちに巡り合える可能性はある。しかしその本や論文を書く材料、元になる資料となるとそうはいかない。       

 このところ店への来客が激減していることは以前から書いています。今回のお二人のお買い上げは我店の「店頭販売」の数か月分の金額です。

 見る人が見たらこのような結果になる「物」がこの店に並んでいるのだぞ、と大牟田の人たちに訴えたい。「馬耳東風」「犬が星を見るような」喩えは他にもまだありそうですが浅学で思いつかない。

 教授のほうのこれからの研究は「産児制限・人口中絶」という事だ。昭和30年ころから望まれない子供の増加が問題になっていたそう、ことに注目されるのは各単産ごとの教育・普及だったそうで、これに特に炭組は反対した、理由は「児童手当を減らすための方策だ」という、一方で主婦連中にとっては切実な話で、組合の反対の中でも教育を続けた、という事でその関連の資料が欲しい、と。

 これは難しい!時すでに経験者はすでに80歳を超えているだろう、主婦会の資料と言われてもねえ。わが方としてもこれまで思いもしなかった方面のことで返答のしようもない。お手伝いできるかどうか、まったく楽観できません。  一口に「炭鉱関係」といっても間口は広い。 

 本当にうれしいけれども困った、という話です。

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