「金持ち喧嘩せず」は本当か?
この言葉の本質は、本当に喧嘩をしないことではありません。少々のことでカッとなったり、アタフタしたりしないなど、感情が揺さぶられないということです。
実際、若手起業家と話をすると、淡々としている人が少なくありません。もちろん、笑顔で話すこともあれば、飲み会で盛り上がることもあります。しかし、ささいなことで怒ったり動揺したり、ネガティブな感情を表に出したりする場面は、ほとんど見られないのです。
よく考えてみればこれは当然の話で、そもそも成功するような知的基盤のある人間が、容易に感情を左右されるとは考えにくいもの。
つまり、何か不測の事態が起こっても、その感情を即座に制御できるので、精神状態の起伏がなく、穏やかでいられます。それがつまり、小さなことでいちいちカッとなったりしないという行動に表れるわけです。
お金持ちに感情的な人は少ない
しかし、貧しい人ほど感情的になりやすい傾向があります。ちょっとのことで頭に血が上り、冷静さを失います。
だから、問題解決が難しくなるし、どうでもないようなことでも、動揺するから対応を誤りがちです。怒りをコントロールできなければ、人生を破壊することにもつながります。
これは犯罪者を見れば一目瞭然で、凶悪事件を起こす人はもちろん、煽り運転を仕掛ける人、ちょっとしたことで子どもの学校に怒鳴り込む人などの中に、お金持ちはほとんど見当たりません。まれに、虚栄心にまみれたお金持ちが、そうした行動を取ることもありますが……。
感情を押し付けるだけでは貧乏のまま
カッとなって怒鳴る、殴りかかる、売り言葉に買い言葉で罵り合う、というのは単なる動物の行動で、理性を司る前頭葉が他の動物よりも巨大に発達した人間のする行為としては、非常に低次元であるといえます。
本来は、怒りに任せて相手を攻撃するのではなく、「この問題を解決するために何が必要か?」を考えなければならないはずが、そこに思考が及んでいないのです。こういう人は、冷静に物事を判断できません。
そして、解決よりも自分の感情を押し付けたいという、自己中心的な発想です。だから、貧しさから脱出できないのです。
感情的にならないためには「教養」をつけること
ではそういう冷静な精神状態を保ったり、感情を制御したりするには、どうすればよいかというと、その解の1つが「教養」の獲得です。
合理的なお金持ちは、教養などというぼんやりとした分野には興味がないという印象があるかもしれませんが、実は一般の人以上に重視しています。むしろ流行りの「スキル」などの方にこそ興味がなく、もっと根源的な思考を要する勉強を好みます。
教養とは「リベラル・アーツ」であり、訳すと「人間を自由にする技」です。教養といっても、歴史や芸術、古典などに通じていることを指すわけではありません。教養は、人間の価値・判断基準を形成するものであり、物事を解釈したり考えたりする際の軸です。
言い換えると、知識と経験からもたらされる問題解決能力ともいえます。そのための考える材料として、古典や哲学などがあるということに過ぎないのです。
教養を得るための方法として、手っ取り早いのが「読書」です。「知的に怠惰な人の部屋には本がない」と言われる通り、読書は教養を得るには重要な方法といえるでしょう。
文:午堂 登紀雄(マネーガイド)