厚生労働省が「106万円の壁」を撤廃する方針を固めたが、山形・新庄市では障害者就労支援会社が、年間6800万円あまりの人件費の増加を理由に事業所閉鎖を発表した。SNSでは年金への批判が噴出し、厚労省は意見を参考にするとした。一方、企業が社会保険料の企業負担分を給与明細に明記する動きも広がっている。
「社会保険料が少子化を加速させている」Xで怒り爆発
厚生労働省が「106万円の壁」を撤廃する方針を固めたことで、社会保険料の企業負担の増加が見込まれている。
山形・新庄市の障害者就労支援に取り組む会社が、事業所を2026年に閉鎖する事が分かった。原因は、年間6800万円あまりの人件費の増加が避けられないことだ。障害者200人以上を解雇する方針だという。
そんな中、厚労省のXには気になる動きがあった。
テーマは、「厚労省の『X』大荒れ 年金への怒りが爆発ソレってどうなの?」だ。
厚労省は年金制度改革について、国民から広く意見を募ろうと、Xにこう投稿した。
(以下引用)
厚労省のXより:
年金制度の改正に関するご意見がございましたら、厚生労働省へお寄せください。
社会保障審議会年金部会では、自由で安全な環境の中での公正な議論を大切にしています。
(以上引用)
しかし、コメント欄には年金や社会保険料について、批判の声が殺到した。
(以下引用)
厚労省Xのコメント欄より:
毎月の保険料が高すぎる。今まで払った分を返金してくれ。
厚労省Xのコメント欄より:
今後きちんと年金をいただけるのか、とても不安です。保険は任意加入にしてください。
厚労省Xのコメント欄より:
高すぎる社会保険料が少子化を加速させている。大幅に引き下げて欲しい。
(以上引用)
こういったSNSでの声についてどう思うか、街の人に聞いた。
20代:
若者はXやSNSをメインで情報を得ていると思うので、そういった取り組みで若者の関心を引くのはいいことかなと思います。
30代:
逆に、厚労省は聞いて何が変わるのか。Xも皆さん見てる人が多いからいいんでしょうけど、私はあまり見ていないので。
厚労省はXに寄せられている多数の反応について「ご意見は様々な視点からいただいたものであり、今後、国民の皆様の年金制度への信頼を高めるための参考とさせていただきます」としている。
「仕組みより理解できた」給与明細に会社負担分記載で意識共有
青井キャスター:
こういった批判について、どう思われますか?
SPキャスター・柳澤秀夫さん:
年金と聞くと、かつての消えた年金の問題とか、国民の目線から見ると、どうも不安や不信感が拭えないんですよね。厚生労働省もいろんな声を聞くのはいいんですけど、聞くだけじゃなくて、実際にそれを政策に落とし込んで反映させてほしいです。
青井キャスター:
さまざまな意見の中、イット!が注目したのは、この投稿です。
(以下引用)
Xの投稿:
ねんきん定期便に会社負担分が記載されていないのはなぜですか?
(以上引用)
青井キャスター:
社会保険料の負担割合は原則、本人と企業の折半となっています。1年に1度手元に届く「ねんきん定期便」には、今まで払った年金と、将来貰える金額が書かれています。ただ、会社員や公務員など第2号被保険者は、企業側が負担している金額の記載がありません。
そんな中、給与明細に企業負担分を記載する会社が登場しています。従業員280人以上を抱える不動産会社「大和財宅株式会社」の給与明細には、出勤日数や支給額、控除の合計などが記載されています。
しかし、明細の右端には見慣れない欄があります。そこには「会社負担社会保険料」や「会社負担社会保険料含む総支給額」が明記されています。社会保険の会社負担分の記載を始めた理由は何でしょうか?大和財宅の藤原正明代表に聞きました。
大和財託・藤原正明代表:
我々会社としては賃上げしているが、社員の手取りはなかなか増えていかない。賃上げすると、そこに社会保険料がプラスで乗ってくる。会社が負担している社会保険料を含めて、社会保険料の負担の重さを一般社員の方々にも知って欲しい。世の中の今の社会課題というか、我が国の課題にちょっとでも関心を持っていただきたいです。
青井キャスター:
会社負担分の金額を見える化することで、社員から何か反応はあったのでしょうか。
大和財託・藤原正明代表:
若手社員は「僕自身が雇用してもらうために、会社がこれだけの社会保険料を別途負担していただいたことに衝撃を受けました」「制度の仕組みをより理解できました」そういう声もあったので、非常に社員としてもいい気づきになったのではないかと思います。
青井キャスター:
別の会社の経営者も会社負担分の金額を給与明細に載せたことで、社員との距離が近くなったと言います。
4社を経営するBさん:
僕らで伝えられることはできるだけ伝えて、同じこういうところで意外と経営者、経営層も悩んでたりするんだよというのは、変に隠すより実際を伝えた方が、逆にもっと従業員が頑張ってくれると思います。
厚労省は、2026年度のねんきん定期便からは、「事業主も同額を負担」している旨の説明を記載する方向で準備をしているという。従業員にも企業にも負担が大きい社会保険料を、正しくクリーンに運営してほしい。