お役立ち情報ブログ

日々の生活やビジネスにおいて役に立ちそうな情報を収集、公開しています。

[FT]ユーロ危機があおる中国のバブル崩壊懸念

2011年10月12日 07時21分55秒 | 経済
 数週間前、顧客数で中国最大の銀行がひそかに経営幹部から成る代表団をギリシャに派遣した。中国農業銀行の代表団がギリシャを訪れたのは、危機に乗じてギリシャ農業銀行を買収するためでもなければ、中国の勢力拡大に一役買うためでもなかった。


■中国や東南アジアが危機波及を警戒




中国などが欧州債務問題の影響を懸念している(8月9日、雷雨に見舞われた北京市街)=ロイター

 訪問の目的はもっと根本的なもので、ユーロ圏の現状を調べる現地視察の一環だった。一連の視察は、中国がユーロ圏の状況を心配していることを裏づけている。そしてアジア諸国でユーロ圏について懸念しているのは中国だけではない。

 アジアは欧州の景気減速をおおむね冷静に観察してきたが、ここ数週間で、ユーロ圏の政府債務危機がアジアの経済全般と金融センターに深刻な問題をもたらしかねないという不安が広がった。

 シンガポールや近隣の東南アジア諸国は経済活動の大部分を国際貿易に依存しているため、アジアの中でも直接的に混乱の影響を受けやすい地域だ。弱気とはほど遠い銀行家でさえ、少なくともアジア経済と地域の銀行を襲った2008年のショックが再来する事態は覚悟している。当時、世界金融危機の第一波がアジア地域を2四半期連続のマイナス成長に陥れた。

 アジア諸国、さらにはその他多くの新興国が先進国の問題から逃れる安全な避難所だという古い考えは信ぴょう性を失った。2008年の出来事が示したように、グローバル化した世界には切り離された経済圏などは存在しないのだ。

 アジアは今、2段階の痛みに直面している。実際に欧米で起きたように金融市場で売買高が細るに従って、金融面で直接的な影響が感じられるようになる。市場が今ほど神経質になっている時には、地理的な違いにはほとんど意味がないように思える。安心感をもたらすのはベッドの下の現金だけだ。

 輸出業者が顧客を失っていくにつれ、貿易の枯渇が金融の減速をさらに悪化させる。中国ほどこの作用が強力な国はない。中国では今も、輸出が国内総生産(GDP)の3分の2近くを占め、銀行がこうした貿易の血液となっているからだ。


■バブル崩壊を示唆するもっともな理由が


 もちろん、「アジアの夢」を支持する向きが、どんな影響が生じても衝撃は緩和されると指摘するのは正しい。アジアの銀行システムは流動性があり、貯蓄率が高く、1997年のアジア危機後の厳格なルール作りによって自己資本比率が高まったため、ユーロ圏の多くの銀行にダメージを与える資金調達難から身を守れるはずだ。
 アジア経済の根本的な強さを裏づける確かな議論もある。不動産価格の高騰は、都市化という今なお続く力強い傾向が下支えとなっており、アイルランドとスペインに問題をもたらした投機的な不動産開発とはかなり異なる。

 だが、これは話の半分でしかない。中国、シンガポール、香港に広がる悪名高きアジアの不動産バブルが崩壊し、各地の銀行を道連れにすると考えられるもっともな理由がある。

 不動産のリスクは微々たるものだという金融機関の言い分は忘れた方がいい。確かに、銀行が抱える名目上の不動産向け融資残高は限定的だ。例えば中国農業銀行の開示情報では、同行の不良債権比率は住宅ローンの貸し出しでわずか0.5%、不動産デベロッパー向けの融資で1.2%だ。また、これらの融資先の分類は融資残高全体の4分の1に満たないという。


■貿易不振や信託会社が引き金に


 だが、明確な不動産の融資残高ばかりに焦点を合わせると、問題の核心を見失う。本当のリスクはドミノ効果の危険性に潜んでいる。そして、事態がかなり急速に暗転し始める潜在的な起点が少なくとも2つある。

 1つ目は、貿易経由という明白な流れだ。中国企業が輸出量の減少に見舞われたら、各社は融資の返済に苦しむことになるだろう。中国の景気刺激策が強制的な融資拡大を通じて実施され、新規融資が2009年に30%、2010年に20%増加したことに留意しておいた方がいい。




輸出の減少に見舞われた中国企業が連鎖的な危機を招く可能性がある(9月2日、青島港に集められたコンテナ群)=ロイター


 すると今度は銀行が、一部試算では不動産の90%以上に達する融資の担保の差し押さえに動く可能性がある。

 問題を引き起こしかねない2番目の引き金は「信託会社」に対する銀行の融資だ。規制が緩い信託会社は不動産会社への融資から手を引いた銀行の穴を埋めてきたが、ここへ来て、重圧がかかる兆しが見えている。中国の不動産神話が綻びを来すリスクは、かなり高いように思える。


■ユーロ圏が解決策を見つけなければ


 投資家は急速にこうした状況を理解してきた。中国の銀行は今、株式市場で純資産の価値と同等の水準で評価されている。半年前と比べても半分に落ち込み、ユーロ圏の一部銀行とほぼ変わらない状況だ。

 10日に株式市場で中国の銀行株を買い入れる介入策を打ち出した当局の対応は、大胆だった。だが、翻ってユーロ圏ではいまだに、地域の統合性を守り、銀行を破綻させずにおく解決策を見つけられるかどうかという著しい不確実性が存在する。

 もしユーロ圏が解決策を見つけることができなければ、中国の銀行と政策当局者は再び欧州に飛び、強硬に問題解決を迫ることになるのかもしれない。

By Patrick Jenkins

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「ハングリーであれ。愚か者... | トップ | 杉村太蔵「今は無職。あえて... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

経済」カテゴリの最新記事