2023年のびっくり予想がまた一つ飛び出した。毎年、年初には金融機関が大胆予想を発表し、市場関係者を仰天させる。1月も半ばを過ぎたいま、日本沈没を予感させる恐ろしいリポートが出てきた。

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 まさか? と首をかしげたくなる内容だ。

「世界で国力を測る代表的な指標といえばGDP(国内総生産)です。日本は20年以上にわたり世界3位をキープしてきました。ところが、場合によっては今年にもドイツに逆転されるかもしれないのです。すでに株式市場では日本は世界のリード役ではありません。世界株式の時価総額で見た場合、日本はピーク時に40%近くを占めていました。それが今や6%を切り、見る影もありません。“国力”の衰えを実感します」(市場関係者)

 市場で話題を集めたリポートは「ドイツに抜かれそうな日本ーー『まずい』の危機感がないと本当にまずい」。第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏がまとめたものだ。

 リポートはこう始まる。

<2023年のびっくり予想である。ドイツの経済規模が世界3位の日本を抜く可能性がある。日本は4位に転落する>

 1968年、日本はドイツを抜き世界2位に躍り出た。2010年に中国に抜かれるまで米国に次ぐ地位を維持していた。その後、世界3位をずっと守っている。熊野氏が指摘する。

「マラソンランナーが余裕を持って3位を走っていると思ったら、いつの間にか後ろからヒタヒタと足音が聞こえてきた感じです。気づいたら、もうすぐ後ろにピタッとくっつき、追い抜くタイミングを狙っている。そんな印象です」

危険ラインは1ドル=137円台

 昨年からの円安が日本の名目GDP低下を招いた面はある。円安進行でドルベースのGDPはどんどん下がっていく。

「それは仕方ないのかもしれません。ただ、国力が落ちたために通貨安となっているともいえます。50年以上もドイツより上にいたのに、再逆転を許すとは情けない」(前出の市場関係者)

 もっともIMF(国際通貨基金)の将来予測(27年まで)によると、日本は3位に踏みとどまっている。

「為替相場によっては順位変動が起こると思います。IMFは23年のドル円レートを129.34円(年間平均)とはじいていますが、仮に137.06円になれば日本はドイツに逆転されてしまいます」(熊野氏)

 昨年、ドル円は1ドル=151円台を付けた。137.06円は油断のならない数値だ。

 そもそも日本とドイツは面積こそほぼ同じだが、人口は随分と違う。熊野氏のリポートにも、<日本の総人口は1億2510万人。ドイツは8400万人>とある。人口を比べると、日本はドイツの1.49倍だ。そもそもGDPは人口の影響を受けやすい。ものすごく単純には、その国の一人一人の経済活動が積み上がって、GDPは算出される。

 だから日本のGDPはドイツの約1.5倍あって当然なのだ。それが逆転されるとは、日本の生産性は極端に低いということになる。

1人あたりGDPは韓国が上位に

 昨年12月にも衝撃的なリポートが出されている。「1人当たりGDP」に関するもので、「23年に日本は韓国に抜かれる」という内容だった。

 1人当たりGDPは、GDPを人口で割ったもの。国の豊さを測る指標にもなる。

「IMFの統計(21年)で日本は27位です。トップのルクセンブルクとは3.5倍ほどの開きがあります。2位以下はアイルランド、スイス、ノルウェーと続きます。米国は7位、ドイツは18位。実は、約20年前の2000年に日本は2位だったのです。それが毎年のように下落し、もはや27位。しかも、29位の韓国に追い抜かれるとの予測が出たのです。日本の凋落は凄まじい」(金融関係者)

「韓国に抜かれる」リポートは日本経済研究センターがまとめたもの。そこには、こうある。
<円安による目減りもあるが、労働生産性の伸び悩みが響く。労働力人口1人当たりの資本ストックを表す資本装備率も、日本は低迷する一方で韓台(韓国と台湾)は着実に積み上げてきた>

 このリポートは、22年に1人当たりGDPで日本と台湾が逆転するとも書いている。IMFの21年統計で台湾は32位。27位の日本は一気に抜き去られ、23年は韓国の後塵を拝することになる。

 生産性の低さを食い止めないと、日本はズルズルと後退するばかりだ。

「言葉は悪いですが、大企業に勤める定年後のシニア層が生産性を下げているとの指摘があります。もちろん、人によって差はあるでしょうが、ロクな仕事をしていないのに給料だけはそれなりにもらっている。若い人のヤル気にも影響を与えているかもしれません。シニア層の生産性を高める必要があります」(前出の金融関係者)

■平均給与は世界24位に低迷

 賃上げがテーマになってきたが、日本の給与は世界的水準から見れば相当に劣っている。

 OECD(経済協力開発機構)統計では、日本の平均給与(21年ドルベース)は世界24位で、3万9711ドルだ。日本円(1ドル=130円)で約516万円。トップは米国の7万4738ドル(約972万円)と日本の倍近い。

 2位以下は、ルクセンブルク(約958万円)、アイスランド(約937万円)、スイス(約896万円)、デンマーク(約797万円)。ドイツ(11位、約729万円)や韓国(20位、約556万円)は日本より上位に位置する。20年ほど前、日本(18位)は韓国(24位)より上だった。