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中国ショックで米利上げ延期も

2015年08月26日 06時39分10秒 | 経済
 米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げが近いとされるこの重大なタイミングに、中国は数十年に及ぶ投資家の信頼を踏みにじり、世界的な株価暴落の引き金を引いた。中国発のショックの余波で、FRBの金利正常化計画は再び後退しかねず、しかも投資家の想定以上に先送りされる可能性がある。

 米国株式市場はさらに混乱すると見てよさそうだが、大暴落が迫っているわけではない。実際のところ、株価にプラスに働くかもしれないセクターもある。

 幸い、中国に引きずられて米国がリセッション(景気後退)に陥るというシナリオはなさそうだ。中国は、以前より経済規模は格段に大きいものの、消費が鈍化したからといって米国経済成長に甚大な打撃が及ぶほどの主要輸出先でもない。例えば、米国の中国向け財・サービス輸出は米国内総生産(GDP)の1%に満たない。また、ゴールドマン・サックスによると、S&P500指数を構成する企業の収益のうち、明らかに中国ビジネス関連である収益はわずか2%だ。

 さらに、過去には軽工業や家具製造業など、米国から中国に事業基盤を移転する産業もあったが、誘致先としての中国の魅力はいまやすっかり薄れている。これ以上の資本投下はもう採算に合わないというレベルまで達してしまった。

 しかも、中国の金融市場は依然としてかなり閉鎖された市場なので、米国の銀行システムに混乱が飛び火することはないはずだ。一方、国際商品(コモディティー)安のおかげでガソリンの小売価格などが大きく値下がりするなど、米国にとってかえってプラスとなる部分もある。

 今回の中国ショックに関する限り、FRBが抱える問題は、すでに目標の2%をはるかに下回っているインフレ率にどう影響するかだ。これは投資家にとって長期的な問題となるだろう。

 事態をさらに複雑にしているのが、中国市場の暴落はありきたりのバブル崩壊ではないということだ。中国政府の経済統制能力への信頼というバブルも崩壊したのだ。投資家からすれば、中国についてかつてのような急成長を見込めないことはすでに納得済みだが、経済の専門家であるはずの当局が債務や過剰生産設備の問題に対処できないという考え方は受け入れられなかった。

 最近の中国政府は投資家の期待とは裏腹に、場当たり的な政策を繰り出しつつ、政策意図もあえて曖昧にしているように見える。今年発表された地方政府債務救済策は急いで取りまとめられたまずい計画だった。また、巨額な信用取引融資を背景に株式バブルが膨らむのをただ傍観していた政策当局は、バブルがしぼみ始めると、支離滅裂で無謀な支援策を導入した。今月打ち出した中国人民元の切り下げも、その後すぐに揺り戻し、投資家をいっそう混乱させた。

 中国政府は24日、介入が無駄であることにようやく気づいたのかもしれない。上海総合指数が8.5%安に沈み、今年10回目となる5%超の下げを記録したにもかかわらず、政府は対抗しようとしなかった。この流れを受け大荒れとなった同日の米国株式市場では、ダウ工業株30種平均の下げ幅が一時1000ドルを超え、前週末比約6.6%安に沈む場面もあった。

 こうした混乱はFRBの利上げ開始計画を台無しにした。実際、ウォール・ストリート・ジャーナルが今月初めに調査したエコノミストのうち、82%が9月の利上げ開始を予想していた。

 予想は振り出しに戻った感がある。9月利上げはまだFRBの選択肢から消えていないが、それまでに市場が落ち着かなければならないだろう。投資家の考える9月利上げの確率が下がったことも問題だ。このままだと、実際に利上げが決まった場合、市場が一段と混乱しかねない。

とはいえ、中国問題から派生するより長期的影響、特にインフレへの影響の方が大きな懸念材料だ。

 中国の過剰生産設備と経済減速はすでに商品価格を押し下げいる。米国では、原材料だけでなく原材料から作り出される製品の価格にも、この商品安が反映されるだろう。さらに、過剰設備を抱える中国の輸出価格が低下するのに伴い、世界的に消費財が値下がりしている。中国経済の低迷を背景にドル高が進む中、価格はさらに下がるだろう。

 6月の連邦公開市場委員会(FOMC)後に発表された委員の経済予測によると、食料品とエネルギーを除いたコア個人消費支出(PCE)物価指数の10-12月期の中心的見通しは前年同期比1.3~1.4%だった。これは高すぎる水準に見える。中国政府が次々と支援策を繰り出せば、来年にインフレ率が上向くという連邦準備制度理事会(FRB)の予想にも赤信号が点灯するはずだ。そうなれば、想定規模の利上げは難しくなり、利上げ自体さえ不可能になりかねない。

 株価については、当然ながらエネルギー・鉱業銘柄は別として、これは短期的に買い材料となる可能性がある。相場急落の発端は中国だが、投資家はすでにFRBの利上げやその影響を警戒していた。

 それに加え、ガソリン価格などが下落しているとはいえ、中国問題の米経済への影響が実際には大きくないのであれば、消費者関連の景気循環株、公共事業、住宅関連など、多くのセクターが恩恵を受けるはずだ。一方、経済が拡大している限り、持続的な超低インフレや低金利政策はFRBにとって問題にならない。

 問題となるのは、将来的にリセッションが再び到来することだ。原因は中国とは限らない。利下げという従来型の金融政策では対応できず、FRBは金融危機の間に生み出した非伝統的手法をまた使わざるを得ないかもしれない。

 だがその場合、金融市場と実体経済のさらなるデカップリンプが起き、逃げ道を探すはずだった投資家を未知の領域へ押しやる恐れがある。

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