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幸福感「幸福になるには幸福だと思いこむこと」
● 幸福と幸福感
何をもって幸福というのでしょうか。
偉い哲学者や文学者などが、実にさまざまなことを言っています。インターネットから少し引用してみます。
○幸福の秘訣は、こういうことだ。あなたの興味をできるかぎり幅広くせよ。そして、あなたの興味を惹く人や物に対する反応を敵意あるものではなく、できるかぎり友好的なものにせよ(ラッセル)
○幸せは考え出すものではなく、発見するものだ。発見するためには行動したほうがいい。じっとして何もしないよりも、たくさんの幸せを見つける可能性がある。(アラン)
○自分で幸福を感じている人は、それだけで満足し感謝するが、自分が幸福を感じないものは、他人に尊敬されなかったり、他人に報酬を求めたりする傾向になりやすい(武者小路実篤)
○ 幸福とはわれわれの達成しうるあらゆる善のうち最上のもの(アリストテレス)
いずれも孫引きですが、いくらでも出てきます。それぞれすばらしいことを言っています。
そして、たぶん、あなたも、それなりのすばらしい独特の幸福論を持っているのではないかと思います。
ここでは、しかし、幸福「論」ではなく、幸福「感」、つまり幸福に感ずることについて考えてみます。
● 幸福感あれこれ
ところで、いきなりですが、「今、あなたは幸福ですか。非常に不幸を1、非常に
幸福を10として、10段階で答えてください」と言われたらどう答えますか。
自分なら、「8くらい(まー幸せなほうだと思う)」と答えます。
こうして集められたデータに基づいて心理学や社会学では、幸福感の心理を研究しています。
その中から、一つ、おもしろい調査結果を紹介してみます。
調査したのは、中央調査社と大阪大学で2004―5年に、日本では約4000人、アメリカでは約5000人から回答を得ています。
あれこれ比較をしていますが、おもしろそうな結果をひろってみます。
① アメリカ人は、日本人よりはるかに、自分は幸福であると感じている
② 女性のほうが、男性より幸福であると感じている
③ 信仰の強い人ほど幸福と感じている
④ 日本では、60歳代が一番不幸と感じていて、若くなるほど幸福と感じている
アメリカでは、逆に60歳代が最も幸福と感じている
⑤日本は、GDPが同程度の国の中で幸福感は相対的に低い
国際比較、年代比較、なかなかおもしろいところがありますが、ここでは、これ以上は言及しません。
ここでは、このようにデータとして得られる幸福感の中身は一体どういう心理なのか、それを高めるためにはどうしたらよいのか考えてみたいと思います。
● 実感する幸福とは
幸福を実感するとはどういうことでしょうか。
幸福から連想する気持ちにかかわる言葉としては、
「いきいき、うきうき、明るい、リラックス、前向き、楽観、元気」
が浮かんできます。
そうしたもろもろの感情の強さの合計として幸福感の程度が実感されているのだと思います。
でも、すぐに疑問が浮かんできますね。
こうしたポジティブ感情は、では、一体どこから生まれてくるのでしょうか。
このように後ずさり思考をしてみると、大きくは2つのタイプがあるようです。
① 心の世界――>ポジティブ感情―>幸福感(内発的幸福感モデル)
②外側の世界――>心の世界――>ポジティブ感情―>幸福感(外発的幸福感モデル)
あえて2つにわけてみたのは、たとえば、劣悪な環境におかれてもなお幸福と感じるようなケースがいくらでもあるからです。人間は本当にすばらしい生き物です。心の持ち方だけで幸福だと感じることができるのですから。
この例を一つ挙げるなら、「災害後ユートピア」あるいは「多幸症候群」と呼ばれている現象があります。災害にあって、からくも生き延びた人でも、しばらくたつと、「助かってなんて自分は幸運なんだろう」としみじみと幸福を感じる現象です。
「幸福は心の持ち方」とよく言われるのは、こうした人間の心理を知っているからですね。
もちろん、②のように、環境的(物質的)な豊かさも幸福感にそれなりに関与していることも言うまでもありません。ただ、人間の場合、それだけではない、ということですね。
国民総生産(GDP)と幸福感とは必ずしも一致しないということも、先ほどの大阪大学の調査で知られています。
今日の朝日新聞(2010年3月12日付け)に、「幸せって、なに」と題して、鳩首相の唱える「幸福感のある成長」戦略のため内閣府が幸福度指標つくりに着手する記事が掲載されていましたが、さて、どうなることでしょうか。
●内から湧き出る幸福感
では、話を戻して、①でいう、ポジティブ感情をもたらす心の世界とはどういうものでしょうか。
まずは、性格がありますね。
「明朗、外向的、活動的 楽観的、感情安定、受容的」
といったところでしょうか。いわば、ポジティブな性格ですね。
性格と密接に関係しますが、思考の習慣もあります。
友達を遊びに誘った。でも断わられた。そのとき、あなたは、どういうように考えますか。
「せっかくさそってやったのにことわるなんて」と思えば、気持ちは攻撃的になり幸福感とはほど遠いものになりますね。
でも、「何か都合があったのだろう」と相手に配慮できれば、気持ち穏やか。
さらに「ではこの次、映画にさそってやろう」と考えられるなら、ポジティブ感情を抱くことができますね。
ポジティブ感情へといざなうのがポジティブ思考です。
次は、だんだん大きい話になりますが、生き方ですね。
目標を持って前向きに生きている人は、幸福感が高くなります。
目標に少しずつ近づくことがわかれば、そして結果として目標に到達できれば、自分にご褒美を、となります。
さらに、やや抽象的になりますが、自分自身にそれなりに満足している人です。
これはやや危ないところがあるのですが、幸福感の一番基礎になっているように思います。なぜ危ないかというと、もう一段上へという向上心を削いでしまうかもしれないからです。
ですから、前述した生き方とセットで考えて、常に目標へと自分を向上させている自分の今を肯定するという、やや難しい心の習慣づくりが必要になるところです。
こんなところが、心のうちから幸福感を高めるのだと思います。
しかし、幸福であると感じるには、外の世界、②のケースも必要です。とりわけ、我々のような凡人には。
● 幸福感を作り出す外の世界
日本のような物質的に豊かな社会に暮らす人々は、もっとお金があれば、もっと出世していれば、もっと気立てのやさしい伴侶がいれば、-------という「もっともっと症候群」にかかりやすくなります。
この症候群にとらわれている人にとっては、幸福感は無縁かもしれません。
「足るを知らない」わけですから、いつもいつも不平、不満を抱え込んでいることになりがちです。
日本のここまでの物質的な繁栄を支えてきたのは、国民的な「もっともっと症候群」の源である欠乏感だったのですから、これはこれで馬鹿にはできませんが。
しかし、いかに不況とは言え、そして、さまざまな問題があるとはいえ、日本の物資的な豊かさは誰しもが認めるところです。となると、あまりにも当たり前の言い方になってしまいますが、ほどほどの豊かさが保証されての心の幸福ということになります。
前述の調査で、日本では60歳代で一番幸福感が低くなっているのは、「もっともっと症候群」のなごりを引きずっているような気がしてなりません。幸福感を高める心の習慣づくりが、「もっともっと」であるような時代を生き抜いてきた世代だからです。
若い世代は、そんなこととっくに悟っている、といわれてしまうかもしれませんね。
ところで「ほどほどの豊かさ」は、どのようにしてポジティブ感情をもたらすのでしょうか。
たぶん、それは、「ほどほど」であるがゆえに、外の世界の影響をそれほど考えなくともよい、ということではないかと思います。
明日の衣食住の算段に意を配らなくともよい分、心の資源を心を豊かにする、幸福にするほうに使えるから、というように考えたほうが良いと思います。
● 幸福感を高めるには
前項との関係で言うなら、幸福感を高めるには、2つあることになりますね。
外の世界を変えるのは、ここではさておくことになります。経済の問題になるからです。医師の鎌田實さんの一説を味わってください、
「幸せってなんだろう。---個人の性格や考え方が30%くらい。――学校や就職や結婚や家庭など、社会的なことが20%くらいーーー張り合いをもって仕事をしているとか、熱中できる趣味があるとか、やりがい、誇り、自分が存在している意味みたいなものが20%――ボランティアや地域活動などの社会参加、いい友人がいることなども、―――10%、自由や平和が10%、戦争が起きれば幸せなんてふっとんでいまう。お金や地位は10%ぐらいかな。」「いいかげんがいい」(集英社)
では、幸福感を高める心の習慣を作り出すにはどんなことに留意したらよいかを考えてみます。
まず、ポジティブな性格ですが、性格ですので、これは、どうにもならないところがあります。
生まれてからこれまで長い期間かかって作り上げてきたものですので、「さあー、今日からポジティブ性格だー」というようなわけにはいかないところがあります。
ただ、性格にも役割性格という部分もあります。役割に応じて作られる性格ですね。上司は上司らしく、学生は学生らしく、というものです。
そういうところで、
「明朗、外向的、活動的 楽観的、感情安定、受容的」
に振舞ってみる努力をしてみることはできます。
そうした振舞いからあなたがポジティブな性格の持ち主だとわかると、あなたの周りの仲間もそのように対応してくれます。それを励みに性格をちょっと変えてみることに挑戦するのもおもしろいかもしれません。もっとも、無理は禁物ですが。
次は、ポジティブ思考です。
これは思考ですので、かなりの程度まで自分でそのように考えようと思えばそう考えることができます。つまり、意識的にコントロールできるのです。
ただ、思考にも習慣、くせがあって、ついついネガティブ感情につながるような思考をしてしまうことがあるのです。こういう思考を自動思考と呼びます。
先ほどの例です。遊びにさそって断わられたときに、ついつい、自分が嫌われているのでは、と考えてしまうような思考習慣はないでしょうか。
叱られた、失敗した、断られた。
そんなときに、ついつい自分を過度に責めてしまうような自動思考をしてしまうようなことはないでしょうか。
あるいは、逆に、「あいつはせっかくの誘いを拒否した」というように、相手を攻撃的にみてしまうことはないでしょうか。
そんな思考習慣があるとすると、それは幸福感にはつながりませんね。むしろ、心うつうつの状態か、過剰に攻撃的になってしまいます。
まずは、自分にそんな習慣がないかどうか、チェックしてみてください。それはそれほど難しくはありません。
気持ちの落ち込みを経験したり、相手への気持ちのこだわりを体験したような時を振り返ってみて、そうなった原因をあれこれと考えてみるのです。
「あれこれ」が大事です。一つだけの原因だけということはありえないことが多いからです。
とりわけ、自分の心の世界だけではなく、外の世界にも原因は見つけるようにします。そこに、ネガティブ感情につながる考えや自分なりの思い込みがないかを特に入念にチェックしてみます。もしそんなものがみつかったら、自分で反駁してみるのです。
セールスの成績が悪くて落ち込んでしまったとします。
「自分に力がないから(自分に原因を求めた)」と考えているからだとすれば、「いや、そんなことはない、今回はまだ十分な時間をかけられなかったからだ(外に原因を求めた)」、あるいは「今回は相手との相性が悪かったからだ」
このように考え直すのです。そうすれば、前向きになれます。次に向けて気持ちをポジティブにできます。
このように考える、あるいは考えなおす習慣がついてくれば、幸福感の高い毎日がおくれます。
最後は、幸福感を高めるための、自分なりに満足できる生き方にかかわる心構えです。
これは、ひとえに、目標の自己管理の問題を適切なものにすることにつきます。つまり、適切な目標の設定とそれを達成するための方策を自分なりに考え、そしてそれができているかを点検することです。
幸福感を高める目標の設定とは、「身の丈にあった」内容の目標を、長期、中期、短期と整合性のあるように設定することです。
「身の丈にあった」とは、自分の力、個性、適性にあったという意味です。これはなかなか難しいのですが、若い時ほど、こういうことについての見極めをする時期なのです。あれこれやりながら、自分は何者、何ほどの者かを確認するためにもがいてみてください。
そして、10年先、3年先、1年先、1月先、1週間先、明日と目標達成のためのプログラムを作るのです。
といっても、ノートに事細かく書く、それを四六時中意識してなんてことは、非現実的ですね。それでも、5年日記、10年日記くらいは用意して気楽に目標を書いたり、見たりできるようにしておくとよいかと思います。
実際は、仕事の節目、節目で、目標達成のプログラムを点検し、それに自分が近づく努力をしているか、していれば自分をほめながら、さらなる努力をすることになります。そうすれば、そこで、それなりの幸福感を味わうことになります。