心の風景 認知的体験

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東京まで出ると、7千歩なんて軽い

2019-07-02 | 健康・スポーツ心理学
エレベター、エスカレーターは、我々弱者にためにあることが痛切にわかった。
感謝である。

最大限利用させてもらっているが、
それでも、1か所の用事で軽く7千歩達成。
なんと6時間弱の東京外出で、結局9千歩。

でも心身ともに疲れるのも、東京。


歯医者通い

2019-07-02 | 心の体験的日記
近隣には歯医者がなんと3軒もある。
そのうちの1軒にお世話になっている。

その歯医者さん。
男性院長のもと、女性5人でやっている。
女性のうち1人は、かなりの医療行為、麻酔をしたり、けずったりまでするが、
医師ではなさそう。なんとなくおぼつかない。

最後は、かならず院長がちょこっとみたり、治療したりして終わり。

治療費900円。
なんだか申し訳ないくらいの負担額。



「ミスに強くなる心の訓練」2章 知識を適切に管理する

2019-07-02 | 安全、安心、

2章 知識を適切に管理する 

2ー1)知識は多彩
●知識ってどんなもの
●内なる知識を分類する
●手続き的知識はやっかい
●慣れてきた頃が一番危ない
●暗黙知対顕在知;もう一つの知識の分類(1)
●知識対知恵;もう一つの知識の分類(2)

2ー2)知識処理のプロセスはどうなっている
●知識処理のプロセス
●感覚情報貯蔵庫での瞬間処理
●短期記憶貯蔵庫での知識処理
●長期記憶貯蔵庫での知識処理

2−3)知識を適切に管理する
●たくさんのことを一度に覚えるのは無理
●知っていることと関連づけさせる
●知らないということを知る機会と手段を用意しておく
●知識を高度化させる
●旧知識を棄却させる
●記憶の変容のくせに注意する
●思い出す手がかりを豊富に

ヒヤリハットの心理学(3)「やり忘れを防ぐには、思い出す手がかりを工夫する」

章扉の一言
「知識はミス防止のための補給基地」

「大事なことは知っていることではないんだ。できることなんだ!!」

****************************
 人は膨大な知識を記憶している。その知識の取り込み、貯蔵、運用には、コンピュータとは違った、人特有のくせがある。そのくせをよく知った上での知識の管理が大切である。
さらに、記憶の脆弱さを補う、外からの知識管理の支援も忘れてはならない。頭の内外で知識が適切に管理されていないと、ミスが発生する。
****************************

2ー1)知識は多彩

●知識ってどんなもの
 まずは、知識と情報との最も大きな違いから。
 情報は断片的であるのに対して、知識は体系的なところである。
 たとえば、ニュースで報じられる一つひとつの事件、事故は、情報であるが、ある特定の事件、事故を深く掘り下げた解説番組は知識である。
 次は、知識は外にも内にもあるということについて。
 外にある知識(外在知)の代表は教科書である。誰もがその知識は共有できる。教育はその手助けをすることで、知識を人類共通の遺産にしていく。
 内にある知識(内在知)とは、それぞれの人が自分の頭の中に貯蔵しているものである。この中には、人類の遺産である知識の一部もあるし、個人的な体験を通して獲得した知識もある。
 情報は断片的と言ったが、「1を聞いて十を知る」と言われるように、外からの断片的な情報も、それを関連づける既有知識が頭の中にあれば、その中に取り込まれることで、既有知識をより豊潤なものにしていく。
 なお、本書で特にことわりなく知識と言う時は、内在知のことである。

●内在知を分類する
 内なる知識をもっぱら研究の対象とするのが、認知心理学である。知識はどのように形成され、どのように貯蔵され、さらに活用されるのかが研究されている。
 認知心理学の教科書での知識の分類をまず紹介しておく。

図2−1 内なる知識の分類 ppt済み

 教科書や教育研修などもっぱら座学によって身につけるのが、意味的知識である。エピソード的知識は、個人的な体験を通して身につけることになるが、両者は密接に関係している。
 たとえば、「ヒューマンエラーついての講義を、筑波大学で昨年、海保から受けた」という知識はエピソード的知識であるが、ヒューマンエラーの講義の内容は、宣言的知識である。宣言的知識に豊富なエピソード的知識が結びついているほど思い出しやすくなる。
 また、エピソード的知識は、それが一般性のあるものなら、意味的知識になることもある。たとえば、「海保は毎年、筑波大学でヒューマンエラーの講義をしている」となれば、これは、意味的知識である。
 手続き的知識は、最初は宣言的知識である。「事故を起こさないためには、絶えず周囲に気配りをする」は、最初は、宣言的知識として与えられるが、何度も気配りの実践を繰り返すうちに、その場に臨むと自然に無意識のうちにそれができるようになる。こうなった時に、その気配り行為を支えている知識は手続き的知識と呼ばれる。
 
●手続き的知識はやっかい
 ここで、ミスに関して、手続き的知識にまつわるやっかいな話しをいくつかしておく。
 人は、話すことや勉強の仕方といった認知技能、さらにキャッチボールをしたり自転車に乗ったりといった運動技能など、実にさまざまな技能をこれまでに獲得してきている。
 こうした技能が身につくまでの間に費やす努力には膨大なものがある。しかし、ひとたび身に付いてしまえば、ほとんど意識的な努力をせずに、むり、むだ、むらなく実行できてしまう。この時、こうした行為を土台で支えているのが、手続き的知識である。
 手続き的知識に従う行為は、いつもと同じ状況なら、いつもと同じ行為が間違いなく実行されるので、ミスも起こらない。 さてここからが、手続き的知識にかかわるやっかいな問題である。
 まずその一つ。状況がいつもとちょっとだけ違った時に発生するやっかいな問題。手続き的知識の状況依存性問題と呼んでおく。
 たとえば、雨の日に自転車に乗らなければならない時、遅刻しないように、いつもよりも早く歩かなければならない時、あるいは、いつもよりも気分が沈んでいるような時、いつもと同じようにすると、状況との間に微妙なずれができてしまう。そこにミスの種がまかれてしまうことがある。
 2つ目の問題は、行為の実行が途中で割り込みがあって一時的に妨害された時に発生する問題。手続き的知識の割り込み問題と呼んでおく。
 流ちょうに一連の行為がおこなわれている時に、途中で、たとえば、名前が呼ばれたり、携帯電話の着信が割り込んできたりすることがある。
 そちらの処理を一時的にやってから元の一連の行為に戻ると、中断した個所がどこかわからなくなってしまうことがある。行為を実際はやっていないのに、あたかもやったかのように思ってしまい、いくつかのステップの飛ばし(省略エラー)が起こってしまうのである。
 たとえば、車掌がドアランプの指差し呼称による確認から発車までの一連の行為をしているその時、乗客から行き先を尋ねられた。それに対応している間に、ドア閉めをやり忘れてしまったというような例。
 あるいは、自分がよくやるガスの元栓の締め忘れ。火を止め、元栓を締め、最後に換気扇を止める。この3つの一連の要素動作中に、元栓を締めるのに邪魔になるので、ガス台にのっているやかんを片づけると、元栓を締めるのをすっとばして換気扇を止めて終わりにしてしまうようなことがある。

●慣れてきた頃が一番危ない
 手続き的知識にまつわるかなり深刻な問題その3。慣れてきた時の油断によるミスの発生である。手続き的知識のマクロ化問題と呼んでおく。
 認知技能でも運動技能でも、初心者の段階では、一つ一つの要素動作を時間をかけて慎重にやらざるをえない。したがって、仮にミスが起こっても、すぐに気がついて訂正できる。
 しかし、だんだん慣れてくると、いくつかの要素動作がまとまってきてより大きなまとまりを作るようになる。これをマクロ化と呼ぶ。
 マクロ化することで、意識的な努力はどんどん不要になってくる。初心者段階では意識的にやっていたPDS(計画ー実行ー確認)のサイクルもだんだん心の中で無意識化してくる。
 「ガスの元栓を消す」ための3つの要素動作がマクロ化すると、あたかもそれが1つの動作であるかのようになってくるのである。

図2ー2  マクロ化の過程 ppt済み

 マクロ化は技能が上達するためには必須である。しかし、それによって失われるのが、一つ一つの行為の慎重な実行と確実な確認である。
 「慣れはじめた頃が危ない」との箴言(しんげん)があるが、けだし至言である。
 最後に、手続き的知識にかかわるもう一つの問題。それは、ベテラン、エキスパート、熟達者が、習熟したがゆえに(手続き的知識に依存したがゆえに)やってしまうエラーである。手続き的知識の習熟問題と呼んでおく。
 「あの人がまさかそんなミスを!」となる。黒田による巧みなまとめがあるので、表で示しておく。

表2ー1 黒田勲による ppt 済み

●暗黙知と顕在知;もう一つの知識の分類(1)
 認知心理学の知識の分類と重なるところもあるが、知識管理不全とミスとの関係を考える上で大事なので、やや観点の異なった分類を2つほど、さらに紹介しておく。
 一つは、「暗黙知対顕在知」である。
 この分類は、野中郁次郎氏らが、会社や組織における内と外の知識を組織化する時に使うようになり、注目されるようになったものである。

図2ー3 暗黙知と顕在知 ppt済み

 手続き的知識は、そのほとんどが意識下にある暗黙知である。したがって、それを言葉で明示的に表現するのが難しい。
 そこで、その知識を持っている人が実際にやって見せることで、説明するしかない。あるいは、その人と一緒に朝から晩まで暮らして「盗み取る」しかない。新人訓練に実際の職場でベテランと一緒に仕事をしながら仕事を覚えてもらうOJT(on the job training)の意義は、ここにある。
 なお、図にあるフリーラジカル(遊離基)とは化学用語であるが、ここでは、習熟途上でまだ暗黙知化されていない不安定な知識状態を意味している。タルビングによる用語である。
 宣言的知識の一部が、顕在知になる。顕在知であるから、意識化ができる。したがって、取扱説明書(マニュアル)のような文書形式にもできるし、それを伝えることもできるし、使おうと思えば使うこともできる。
 しかし、顕在知も、使っていないと、どんどん活性度が落ちてきてしまい、あたかも暗黙知のようになってしまう。これも困る。いくら知識を覚え込んでも、必要な時に活用してもらえないからである。「ミスは忘れた頃にやってくる」のも、安全知識が不活性化して思い出せなくなってしまったことに起因しているところもある。

●知識対知恵;もう一つの知識の分類(2)
 知識の分類としてもう一つ付け加えておきたいのは、「知識対知恵」である。
 体験から学ぶ知識には、一般に、エピソード的知識と宣言的知識とがほどよい割合で混ざり合っている。
 教育界において、しばしば体験教育が取り入れられるのは、教室での座学から得られる宣言的知識への不本意な偏りを正そうとする試みである。
 体験的知識は、それが年月を重ねるて豊潤になると、知恵になる。どうしてそうすると良いのかは、充分には説明できないが、間違いなく良いことができるのを支えているのが、知恵である。
 ところが、安全について蓄積されてきた企業や組織での知恵がどうも最近のリストラの影響のためか、あっさりと消えてしまったかのような状況が発生している。
 日経ビジネス(04年3月8日号)による「製造業の工場長227人を対象にした調査」の一端を紹介してみる。
 「現場の力が落ちていると感じている」かと聞かれて
  そう思うと答えたた割合が 54。2%。
その背景としは
 「技術の伝承や教育体制の不備で、働く人に充分な知識や経験を  与えられていない」を指摘する割合が 71。7%
 工場火災、石油タンク火災など、信じられないような工場災害が多発しているだけに、不安である。OJT教育の貧弱化にもつながるだけに、事は深刻である。
 現場力の再構築が必須かもしれない。作家で元旋盤工の小関智弘氏の味わい深い言説を、最後に引用しておく。
 「大量生産の時代は、人間は”マイナス要因”でした。まあ、人間はなまけたがるし、不平は言うし、おしゃか(不良品)は出すし、できるだけ排除した方がいい。ーーーところが、多品種少量ですぐれた製品をつくるには人間の技と知恵が不可欠です。人間を”プラス要因”としてとらえ直す。町工場が持っていた”現場力”を見直す動きが、大企業の現場にも出てきています。」(朝日新聞朝刊、05年1月12日付け)

2ー2)知識処理のプロセスはどうなっている

●知識処理のプロセス
 知識の分類についてみてきたが、ここでは、それらの知識が頭の中でどのように処理されるのかについての伝統的なモデルである3貯蔵庫モデルを簡単に紹介しておく。本書の全体を通して、このモデルが陰に陽に使われている。
 
図2ー4 情報処理のマクロモデル(1章の再掲載)

 このモデルでは、外から情報が感覚情報貯蔵庫に入力されてから、その一部の情報が短期記憶に送り込まれて処理され、さらに長期記憶に格納される流れと、必要に応じて長期記憶から知識が短期記憶に引き出されて所定の課題を解決する流れとの2のつが、知識情報処理プロセスの基本とされている。
 貯蔵庫をバイパスするような経路として、「感覚情報貯蔵庫ー感情ー注意ーホムンクルス」が図にはあるが、これは、1章で紹介したように、感性情報処理のプロセスである。これは、知識情報処理に潤いを与えるもう一つの処理系である。「温かい認知」「熱い認知」と呼ばれている認知現象とかかわっている。
 なお、こんな硬い話には興味がない人は、ここを飛ばして、2ー3)の実用的な話のところに行っていただいてもよい。

●感覚情報貯蔵庫での瞬間処理
 外からの情報の取り込みは、5感を通して行なわれるが、そこでの情報処理をおこなうのが、感覚情報貯蔵庫である。
 それぞれの感覚モダリティによって処理特性は異なるので、ここでは、視覚だけを取り上げる。
 視覚情報貯蔵庫の処理を実感してもらうには、映画の原理を紹介するのがよい。
 映画は、わずかに違う静止画像を1秒間に24枚の速度で見せることで自然な動きを見ることができるようになっている。これは、感覚情報貯蔵庫において、40ミリ秒程度の映像が保存されている間に次々と入力される映像が融合する機構があることに負うている。
 感覚情報貯蔵庫の特性は、瞬間的に大量の情報を一気に取り込むところにある。そして、取り込んだ情報のごく一部を短期記憶に送りこむことになる。
 
●短期記憶貯蔵庫での知識処理
 感覚情報貯蔵庫では、目的に関係なく目の前にある情報をともかく取り込むが、短期記憶では、処理の目的にかなうような情報が、まず感覚情報貯蔵庫から選択され、さらに長期記憶にある既有知識と照合される。そうしないと、短期記憶の容量がすぐに一杯になってしまうからである。
 その短期記憶の容量であるが、これについては、魔法の数7がよく知られている。つまり、情報の単位にして7個くらいまでは一度に処理できるというものである。
 なぜ「魔法の数7」なのかというと、提案者のミラーによると、「7」が生活の中のくぎりとして、至るところに見られるからである。たとえば、
 ・1週間は7日 ・なくて7癖  ・7色の虹
 ・世界7不思議 ・七福神    ・7色唐辛子
 魔法の数はさておくとしても、「情報の単位にして」には大事な意味がある。
 7個の数字はだいたいの人が記憶できる。数字1個が情報の単位になっているからである。
 では、「N E W T O N K A N T K A I H O」はどうであろうか。アルファベット1個を情報単位とすると15個になり、短期記憶の容量を超えてしまうのでとても一度には記憶できない。しかし、気がついた人がいると思うが、「N E W T O N」
「K A N T」「 K A I H O」と3つの情報単位にすれば、楽々暗記できる。
 このように、記憶のための情報単位をはっきりさせることで、
たくさんの情報を一度に記憶できる。この情報単位をチャンク(chunk)と呼ぶ。 
 そこで、できるだけたくさんの情報を処理してもらいたい時には、見た目のチャンクと意味的なチャンクとを一致させることが大事になる。
 例1−1に示す10項目の注意はどうであろうか。数をもう少し減らし、内容をチャンキングし、さらに区別がわかるようにタイトルや見出しをつけて提示すると、一目で覚えてもらえる量が増える。
 たとえば、「作業前に」(3、7、9、10)と「作業中」とに区別する(チャンキングする)だけでもかなり記憶のされかたに違いがあるはずである。

例2−1 安全のための注意 掲載物より(「安全と健康」52、11より) 別添済み  引用に注意
  
 さらに短期記憶は、そこに情報を保存しておける時間にも限界がある。リハーサル(頭の中で反復することが)できないと、20秒程度で消えてしまう。
 そこで、通常は、入力された情報に長期記憶の知識を連合させながらの精緻化リハーサルをしながら、どんどん長期記憶のほうに情報を転送する。転送された情報は、既有の知識と関連づけられて新たな知識となる。

●長期記憶貯蔵庫での知識処理
 長期記憶の役割は、知識を長期間にわたって貯蔵し、短期記憶での処理要求に基づいて必要な知識を短期記憶に提供することである。
 なお、貯蔵とはいっても、倉庫に物を貯蔵するのとはまったく異なる。
 リハーサルに使われたり、検索されたりするたび、どんどん新たな知識に更新されていく。使えば使うほど貯蔵されている知識はどんどん更新され、高度化していくのである。
 問題は、膨大な知識がいつも適切に活用されるわけではないことである。必要な時にタイミングよく引き出せなかったり、誤って別の似た知識が引き出されてしまったり、無意識のうちに知識が変容してしまったりするからである。
 こうしたことは、ミスにつながってしまうので、それなりの対策が必要である。節をあらためて考えてみる。

2−3)知識を適切に管理する

●たくさんのことを一度に覚えない
 朝会などでたくさんの注意事項を口頭で伝達するようなことはないであろうか。
 人が一度に覚えられるのは、チャンクにしてせいぜい7項目くらいまでである。注意すべきことはすべて話したと思っても、7チャンクを越えると、そのいくつかは、伝達したとたんに忘れられてしまう。
 ここで個人的な体験を一つ。銀座にあるビルに車で行こうとした。ビルのごく近傍にきていることはわかるのだが、そのビルがわからない。電話をすると、銀座2丁目の交差点を右に曲がって、松坂屋の前に出て、ーーーーーとまくしたてる。それほど多くのことを一度に覚えられるわけがない。松坂屋の前までいって、もう一度電話、さらに、少し行ってからまた電話でやっとその場所につけた。
 閑話休題。大事な情報だけを精選し、細かい情報は減らす。そして、その大事な情報3つくらいを目立たせる。これが、人に確実に覚えてもらうための鉄則である。
 これは、危険表示などでも同じである。

例2−2 メリハリをつけて表示する pptすみ

●知っていることと関連づける
 我々が何かを記憶するときは、すでに知っていることに結びつけると、覚えやすいし、忘れにくいし、思い出しやすい。たとえば、
 ・数字列「4613」を覚えるときに、「白い味」というよ  うなごろ合わせして覚える。
 ・「メンタルモデル」という用語を覚えるときに、「メンタ  ル」とは「心的」の意味というように翻訳して覚える。
 ・もっと大がかりなのは、たとえば、「短期記憶」とは、   「コンピュータで言うならバッファー記憶のようなもの」  というように、たとえてみることもある。
 暗記術は、関連づけるための知識をあらかじめ暗記しておいて、さらに、覚えるものとの関連づけの方法を体系的に工夫したものである。
 こうした暗記術的な趣向は、緊急用の電話番号や安全標語などを覚えてもらう際などに利用することがあってもよい。

●知らないということを知る機会と手段を用意しておく
 知識爆発の時代である。続々と新しい知識が社会には蓄積されている。それを取り込む努力を絶えずおこなわないと、頭の外と内の知識ギャップが大きくなり、どんどん時代遅れになり、周りが何が何やらわけがわからなくなり、結果として、やらずもがなのミスが起きてしまう。
 コンピュータを使う方なら、日常的に経験しているはずである。
 そんなことにならないためには、まずは、自分が何を知っていて何を知らないのかを絶えずチェックする必要がある。
 メタ認知力があれば、その認識はある程度までは自分でも出来るが、知識の定期診断テストのようなものが利用できるとなおよい。各種検定試験が増えてきているのも、そんな欲求をとらえてのものということもあるようだ。
 あるいは、セミナーや展示会など最先端の知識を知ることができる現場に積極的に出向いてみるのも良い。
 
●知識を高度化させる
 知識は、仕込みをすればするほどよいというほど単純ではない。長期記憶貯蔵庫ががらくたで一杯になってしまうだけである。
 そこで、知識要素の間の関連をつけて、知識を高度化する努力をすることになる。知識の高度化とは、表に示すような段階において、より上位の段階にすることである。

表2−2 知識の高度化(ブルームに基づく) ppt済み

 知識を高度化させるには、まずは、一冊の定番テキストを自家薬籠中のものにすること、ついで、その知識を現場と関連づけてみること(応用・分析)、そして、最も高次までいくとすれば、その知識をより大きな視点から体系化して批判的に吟味できるようにすること(総合、評価)である。
 そのためには、単に知っているかどうかの知識テストだけでは不十分で、時には、危険予知訓練(KYT)のように、さまざまな課題解決場面での知識の活用経験をしたり、みずからが講師になって講義してみるなど、多彩な知識の活用経験の機会をもうけてみる必要がある。
 
●旧知識を棄却させる
 組織やシステムや作業手順などの変更時にミスが起こりやすいことはよく知られている。古い知識が、それを使ってはいけない状況にもかかわらず、使われてしまうためである(負の転移)。
 事が面倒なのは、古いほうに習熟していればいるほど、そこで使われている手続き的知識を意識することができないこと、しかも、新しい状況の中にちょっとでも似た手がかりがあると、その知識が自然に発動されて、前なら適切だった行為が実行されて、勘違いや思い込みエラーが起こってしまう。
 これを防ぐ一番の方策は、新システムに慣れるために充分な時間をかけた訓練をすることにつきるが、さらには、古い知識が発動しないように、あえて状況をがらっと変えてしまうこともあってよい。本当は、人も変えてしまうのがよいのだが、そこまではいくらなんでも乱暴だが、ミスの影響が大きいところではやもうえない面もある。
 急速な技術革新に伴う構造的な問題だけに、やっかいである。
 
●記憶の変容のくせに注意する
 目撃者証言の信憑性が時折、裁判で問題になることがある。人の記憶がビデオ録画のごとくにはなっていないからである。
 記憶された知識がどのように変容するかというと、大きく2つある。
 一つは、自分の持っている既有知識と一致する方向への変容である。最初は矛盾を感じていた断片的知識も、次第に一貫した知識(スキーマ)に体系化されるようになる。認知的に不協和な状態は気持ちが悪いからである。結局、その断片的知識は最初とは微妙に違ったものになってしまう。
 もう一つは、そうであってほしい、あるいは、そうあるべきだという方向への変容である。白熱した議論をしたあとの議事録がしばしば物議をかもすのは、それぞれの記憶している知識がそれぞれに変容してしまったためである。
 いずれの変容も、生きていく(適応していく)ための方略としては、それになりに有効であるが、ミスに直結するような知識の勝手な変容はまずい。
 これへの対処は、記録とその確認しかない。マニュアルを整備したり、日誌をつけたり、メモ、デジタルカメラによる記録などを活用することになる。

●思い出す手がかりを豊富に
 せっかく頭の中に知識としては貯蔵されていても、それをうまく引き出すことが出来ないことが多い。
 たとえば、喉まで出かかった現象。目の前にいるよく知った人の名前がとっさに出てこない。
 一方では、必要もないのに、余計なことが思い出されてしまい、困ってしまうこともある(ポップアップ記憶)。
 あるいは、プライミング現象。
 病気の本を読んだ後、「カゼ」は「風邪」に、「ケットウ」は「血糖」と聞き違えることが多くなる。
 想起のこうした脆弱な特性を考えると、一つは、思い出すための外的な手がかりを豊富に用意することが必要なことがわかる。
 工具の保管場所を一定にして名前を付けておけば、工具の置き忘れはチェックできる。これも、想起の外的支援の仕掛けである。
 もう一つ、プライミング現象などからもわかるように、すぐに思い出せるように、必要な知識の準備状態を良くしておく(活性化しておく)ことである。 
 朝会などで、その日の作業の大枠を説明したり、起こりそうな事故を列挙してみたりするのも、適切な知識の活性化に役立つ。

*****

ヒヤリハットの心理学(3)
「やり忘れを防ぐには、思い出す手がかりを工夫する」
1 イラスト案
2 帰宅した家の玄関で、咳ををしている奥さんに朝、出がけに頼まれた、風邪薬を買ってくるのを忘れて、叱られているところ


●解説
 朝、奥さんに風邪薬を頼まれたときは、駅前あたりにある薬局で購入しようと思うはずです。このように、将来するべきことを覚えておくのも、記憶の大事な仕事です。過去記憶に対して、これを展望(未来)記憶と呼んでいます。
 展望記憶で大事なことは2つあります。whenとwhatです。
 薬局の前に着いたときに(when)、風邪薬を買うこと(what)をタイミングよく思い出すことです。
 一番難しいのは、whenです。その場、その時になったということを思い出すことです。whenがうまくいけば、whatは、多くの場合、自然に思い出せるからです。
 これが1週間先、1月先のことなら、手帳などに書き込んでおいて、折にふれてそれを見ることで、忘れないようにします。しかし、30分後、1時間後、10時間後に何かをする予定、となると、頭の中に覚えておくことが多くなります。そうなると、心許ない状態になります。お湯を湯舟から溢れさせてしまう、鍋をこがしてしまう、手紙の投函を忘れるなどなどのミスが発生します。
 さらに事態を悪くするのは、その間にいろいろの仕事が入ってしまう(入れてしまう)ことです。それに集中してしまうと、予定をタイミングよく思い出すことはできません。かくして、約束のすっぽかし、遅刻となります。

●類似ケース」
○朝のミーティングで、大事な注意事項を伝達するのを忘れてしまった。
○TVをみながらガスでお湯をわかしていて、空焚き状態。

●対策「タイミングよく思い出すにはどうしたらいいのですか」
 まず、私たちは、展望記憶の力が弱いということを自覚する必要があります。とりわけ、メインの仕事からかけ離れた「雑事」、たとえば、買い物やお義理会議の出席などにかかわる展望記憶力は、極端に低下します。
 ですから、予定通りしないと不都合の発生が予想されるようなリスクの高いところでは、その場から離れないことです。場には、思い出す手がかりがたくさんあるからです。
 あとは、展望記憶の弱さを補うための外的な仕掛けを工夫することになります。
 ・目に見えるところにメモをはりつける
 ・時計のアラームを活用する
 ・人の助けを借りる
 ・未決箱を用意して時間順に並べておく
 偉くなって、有能な秘書が使えようになるのが一番なのですが、それまでは、自分なりの工夫でしのぐしかありません。

●自己チェック「あなたの”展望記憶力”は?」******
自分に「最もあてはまる時は”3”」「まったく当てはまらない時は”1”」として3段階で判定してください。
1)予定はほとんどメモ書きする( )
2)予定は人に話すほうだ( )
3)約束を忘れることはあまりない( )
4)忘れないために自分なりの工夫をあれこれしている( )
5)熱中して約束をすっ飛ばすようなことはあまりない( )
*10点以上なら、展望記憶力がある方です。