ビジュアル表現力アップ
●文書のビジュアル化とは
文書のビジュアル(視覚)化には、大きく分けて、文字情報にかかわるものと、イメージ情報にかかわるものとの2つがあります。
一般には、ビジュアル化というと、絵や図表などのイメージ情報のほうを思い浮かべます。
しかし、文字情報にかかわるビジュアル表現、つまり、文字形(フォント)やサイズ、表記の仕方、さらに、レイアウトも、文書のビジュアル化の要素として重要です。
なぜなら、それが、読みやすさだけではなく、読み方をガイドする暗黙の表現にもなるからです。
●文字情報をビジュアル化する
文字情報のビジュアル化の領域の代表的なものは、以下の4つです。いずれも、ワープロが一般化してきた最近では、誰もがそれなりにTPOに応じて適切なものを選んで活用できる力(ドキュメント・リテラシー)が求められるようになっています。
①フォント
図には、典型的なフォントを挙げてみました。
それぞれの視覚効果の違いを確認してください。
②表記
日本語の表記は、漢字、かな、カタカナを使います。視覚的には複雑ですが、それがメリハリ効果をもたらしていることは、前述したとおりです。
③行間、字詰め
図のように、文字情報のビジュアル化には、行間、字詰めもあります。ここでも、その活用能力が試されます。
これにはさまざまなものが含まれます。版面、インデント(書き出し)、段落などに加えて、前項で紹介したメリハリ表現もその一つです。
以下は、もっぱらイメージ情報にかかわるビジュアル化の話になります。最初は、写真、絵、イラストです。
この3つの共通点は、世の中にあるものをイメージとして伝えようとするところにあります。
しかし、それを写真にするか、絵にするか、イラストにするかによって、伝達効果には、微妙に違いがあります。
写真のようにあまり現実を具体的かつ写実的に見せると、何が大事かを伝えにくいというところがあります。見るほうからすると情報過多になってしまうのです。
逆に、多くの絵表示(ピクトグラム)のように、あまりに抽象化したイラストで伝えようとすると、現実のイメージが伝わらなかったり誤解されたりしてしまう恐れがあります。
かくして、「適度に具体的なビジュアル化」が、とりわけ、絵やイラストでは最適表現ということになる。
ここで、「適度に具体的」とは次のようなことに配慮した表現である。
①伝えたいことがはっきりわかる
例:大きくする 囲う 色をつける
②全体も示す
例:全体を小さく、伝えたい部分を大きく
③細部情報は省く
例:形状は示すが、その中は空白
④シンボル(約束で決めたもの)はできるだけ使わない
例:△や×も誤解されることがある
●図表を有効に使う
図表は、伝えたい内容に、実証的な論拠を付与するために使われます。
小学校の高学年くらいから、図表の描き方、読み方は教えられるので、伝達手段としては至極便利です。ただ、次のような点には注意する必要があります。
伝えたいことは、図表の一部なのに、それ以外の周辺的な情報も入れ込んで描くのが普通である。その冗長さが説得性にもつながるので悪いことではない。
しかしながら、その冗長さが伝えたいことを隠してしまう情報ノイズになってしまうことがあります。
これを防ぐには、一つは、適切なキャプション(図表のタイトル)をつけること、もう一つは、本文で言いたいことを述べる、最後は、伝えたい箇所を強調することです。
②訴求力のある図表にする
図表は実証的であること示すために、えてして、数値の羅列や無味乾燥な棒や線になってしまいます。
正確な実証データの表示が大事な学術論文ならそれでよいのですが、子どもにわかってもらいたい図表では、それでは見てもらえません。棒を人の姿で表示したり、スケール(目盛)を変えたり、色をつけたりして訴求力のある図表にする工夫も必要です。
③図表の描き方の基本を知る
図解は、描く人にとって実に難しい作業です。表現したいことを精選し、それを図解の決まりごと(リテラシー)に従って表現するのは、どちらもそれなりの努力がいります。
最近は、パワーポイントが普及してきて、誰もが簡単に図解表現ができる環境になってきたのは、コミュニケーション環境としては結構なことです。多いに利用したいものです。
図解の基本は、「囲む」「配置する」「線でつなぐ」の3つです。
構想の単位を囲み、それを紙面に配置して、線でつなぐ。図解はこれにつきます。囲みを四角にするか円にするか、配置する場所は真ん中か上下左右どちらか、線は、矢印か点線か、といった表示上の細工は、描く人の芸術的なセンスにかかっています。