天網恢恢疎にして漏らさず

映画レビューを中心に(基本ネタバレバレです)スキーやグルメ他、日々どうでもいいような事をダラダラと綴っています。

【映画】「万引き家族」@26本目

2018年07月11日 | 映画感想
「万引き家族」

言わずと知れた今年のカンヌ映画祭最優秀賞「パルムドール」受賞作品。
我ながら「お前自称映画好きって言ってるならまず本作はいの一番に観に行くべきなんぢゃねーの!?」と思ってたんですが…
実はスルーしようかなーっと思ってたんですよね^^;
それと言うのも…正直言って是枝監督と自分肌が合わないって言うか、是枝作品の打ち出すテーマが悉く自分の苦手な分野なんですわー(滝汗)
特に「家族」を扱ったモノは感想書きようがないって言うかさー、まーぶっちゃけると「自分子供産んでねーからわかんねーし!」って言わざるを得ないテーマっての?
とは言うものの、やっぱカンヌ取った作品なのにスルーするのも勿体無い、合う合わないはともかく観るだけは観るべきだな、と腹括って鑑賞w

あらすじ
日雇い労働の治(リリー・フランキー)と息子・祥太(城桧吏)がいつも通りスーパーで万引きをした帰り道、寒さに震えている小さな少女・じゅり(佐々木みゆ)を
見付け不憫に思って連れて帰って来た。いきなり子供を連れ帰って来た事に驚く妻の信代(安藤サクラ)だったが少女が痩せこけて体中傷だらけの様子を見て
家に置いて世話をする事にした。家には信代の妹で風俗嬢のアキ(松岡茉優)がいて、一家は家の家主でもある老婆の初枝(樹木希林)の年金を頼りに生活していたが…

↑えーと、あらすじは「シネマトゥデイ」さんの記事にちょい足して書いたのですが、上記の人間関係は全て出鱈目で「そういう体で集まった孤独な人々」が
疑似家族を装って生活している、というお話です。
後に個々の人間関係というかその人の人生の背景がつまびらかになるんですが、初枝とアキの関係はあったんだけどそれ以外…治と信代の2人と初枝がどこでどう
繋がって行ったのかは最後まで語られていなかったので、彼らがどーやってあの家に入り込んだのかは分かりませんでした。
雰囲気的に初枝とアキが同居するよりも先に治・信代と初枝が同居していたように感じたので…そこだけちょっぴりモヤッと来たかな。

まあ、どの順番であの家に孤独な人々が集まったかは問題じゃない。
血縁関係があるだけで法的に「家族」と呼ばれているもののネグレストにDV・虐待の限りを尽くす集団と、個々に血の繋がりは全くないけど身を寄せ合って支え合う事で
心の安寧を得られる「疑似家族」と呼ばれている違法集団の、どちらが本当の意味での「家族関係」と呼べるのだろうか…とまで書いたらちょっとまた違って来ちゃうかな?

でも本作の細かいなーと思ったトコロは、子供達(祥太とじゅり)はちゃんと治や信代の事をアカの他人だと認識していて、特にじゅりは両親が近くにいて
自力で帰ろうと思えば帰れる距離に居ながら自らの選択でこの家に留まっていたという事。
そして治は一応祥太に対して「とーちゃんって呼んでよー」と言っているものの、劇中祥太は結局一度も治を「とーちゃん」とは呼ばず「今は未だ言えない」と言わせていた。
それは、この「疑似家族」はあくまでも自分のホントの家族ではない、あくまでもかりそめのモノだと子供心に認識していたからだろうし、生業にしていた万引き稼業も
生活する為の必要悪だと自分の中で折り合いをつけながらやっていたものの、段々と自分のしている行為に正当性が感じられなくなって来た事、そして多分決め手は
近所の駄菓子屋のおっちゃんに「妹には万引きさせるなよ」と言われた事で彼の中で「万引き=罪悪」という認識が定着したんだろうと。
祥太の心の葛藤は実に瑞々しく描かれていたし、祥太を演じた子役君も本当に素晴らしかった。将来が楽しみな子役がまた1人デビューしたわネ♪

またもう1人の虐待を受けていた少女・じゅりの子役もすんごい上手かったなぁ。
よく聞く話だけど、虐待を受けている子供って大概親の事をかばうんだよね。あんなに酷い仕打ちにあっていても「ママは優しい」と言うし虐待されて出来た傷も
「これは自分が転んで出来た」とウソをついて親を必死に庇おうとする。
どんな虐待を受けていても、自分がすがる場所は母親の腕しかないと子供は本能的に感じているから逃げ場がないんだよね。
それが、この疑似家族の中で受け入れられて優しく傷を癒して貰って、信代から「愛しているから殴るなんてウソだからね。本当に愛していたらこうするんだよ」と
後ろから思いっきりハグされた事で小さな傷付いた女の子の心に1つ灯りが点ったんだろうと。
後に全てが明るみに出て実親の元に返されたじゅりは以前のように脅えながら母親に「ごめんなさい」を繰り返さなくなっていた。子役ちゃんの目が印象的でした。

安藤サクラさんは毎度圧巻の演技力で、本作でも重要なキーになるセリフのほとんどを彼女のクチから言わせていたんですが、個人的に印象に残ったのは
上にも書いた「愛してるから殴るなんてウソ」もそうですが、警察の取り調べで「子供を産んだらみんな親なんですか」という意味の言葉と、あともう一つ
死体遺棄に関しての取り調べに対して「捨てたんじゃないですよ。誰かが捨てたのを拾ったんです」と言うセリフ。
事件が明るみに出るとマスコミ(世間)は「子供を誘拐し、独居老人の家に居座った上に老人の年金を搾取し、更には老人の死後(殺害の疑いアリ)
死体を遺棄した上に年金の不正受給をしていた」という【事実】を垂れ流して、この事件の犯人がいかに恐ろしい人物だったのかを煽りまくるんだけど
確かに法的にはその通りだけど、じゃあその事件の内側にいた彼らは?【事実】と【真実】との余りある剥離が本作の最も重要なキーだったと思う。

ま、今更こんな事書くのも野暮だけど…万引きは犯罪ですし年金不正受給も、死体遺棄も、未成年者略取・誘拐も全て犯罪です(キリッ
本作は「子供に万引きの手ほどきをする事の有無」とかそーゆー事じゃないんですよ、そこ履き違えて脊髄反射的にフンガー!する教育者気取りの人が
結構湧いてそうな気がして仕方ないですけどね(苦笑)
少なくとも本作の子供達は自分がしている事の善悪を(少なくとも祥太少年は)弁えてきちんと成長していましたよ?きっと彼はもう万引きを一生しないでしょう。

是枝監督作品はなかなか肌に合わなくて…と冒頭に書きましたが、本作は珍しく自分も共感したりなるほどと思わされたりしましたね。

おーっと、大切な事を書き忘れるトコロでした!松岡茉優ちゃんの美乳がっ!!いやぁ~いいもん見られましたなぁ~眼福♪眼福♪^^
コメント (2)
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