シネコンの快適な椅子に座り、ドルビーだかSDDSのクリアなサウンドで冒頭から
「ジャンゴ~♪」
と歌い上げられ、しかもタイトルの文字は極彩色でお下品きわまりない。ものすごいミスマッチ。あの、60年代に隆盛を誇ったマカロニ・ウエスタンが現代によみがえるとは。
まあ、趣味人であるクエンティン・タランティーノだからこそ許される道楽だし、しかもこの新作はアメリカで大ヒットしてしまったのだ。おかしいなあ、マカロニ・ウエスタンは日本の方がはるかにファンが多いはずなのに(むこうではスパゲティ・ウエスタンと呼ばれます。どっちもでん粉です)。むしろ日本では興行収入が伸び悩んでいるので、この対比は興味深いところだ。
タランティーノがオマージュをささげているのは「続・荒野の用心棒」(「荒野の用心棒」の続編などではなかったんですけど)。
棺桶(中味はお楽しみ)を引きずって歩くヒーローの名がジャンゴ。あまりの残虐描写で問題になったカルト作品だ。オープニングから女性をいたぶる趣味的なシーンが多くて多くて……好きでしたわたしも(笑)。主演がフランコ・ネロで、彼はこの新作にも特別出演しています。
「ジャンゴ……スペルは?」
と今回のジャンゴであるジェイミー・フォックスに質問。
「D・J・A・N・G・O……Dは発音しないんだ」
「知ってる」
そりゃ、知ってますよね。
タランティーノのことだからまともなウエスタンになっているわけがなくて、大量の敵と戦う際に、盾とするのが敵の身体。おかげで必要以上に血しぶきが飛びまくり。夜の騎馬シーンでは変なカンテラをみんな下げている。史実かもしれないけれど、なんかおかしい。
音楽もあいかわらず楽しい。わたしの世代にとっては、ジム・クロウチの「I Got A Name」が使われていたでびっくり。あのタランティーノがジムの曲とはねえ。
役者はみんな達者。ディカプリオの大仰な悪役っぷりと、サミュエル・L・ジャクソンとのかけあいはさすがでしたよ。でもね、実はもうちょっと面白いのではと期待したんだけどなあ。