PART3「最初はグー」はこちら。
世の中には学校方言なるものが存在すると気づかせてくれたのも「とっさの方言」のおかげだ。たとえばこんな感じ。
・富山、石川、福井、岐阜では公立学校の通学範囲を「校下」と呼ぶ。
・愛知の小中学校では授業と授業の合間の休み時間を「放課」と呼ぶ。
・模造紙を新潟では「タイヨーシ」富山では「ガンピ」岐阜・愛知では「ビーシ」と呼ぶ。
・熊本の学校の職員室や図書館には「あとぜき」というはり紙。「扉を開けたら閉めなさい」の意。
……これ、おそらく地元では方言であることすら認識されていないのだろう。
「学校で使用されることば→共通語」
という歴史的経緯、なにしろ学校の先生が使用しているのだから的な思い込みもあるだろうし。
他にも、掃除のときに教室の後ろへ机を運ぶときに先生は
愛知、三重:机をつってください
愛媛:机をかいてください
と指示するのだとか。こりゃ、わからんわ。
特異な例として、長野県では「ごちそうさまでした」を「いただきました」と表現するとか。その土地その土地でいろいろあるんだなあ。
と、他人事のように語っているけれど、山形県は学校方言のメッカなのである。上履きのことを「内ズック」と呼ぶのはまだわかりやすい。「いちかっこ」「いちまる」問題は、すでに全国的に有名になっている。
出自はどうあれ、方言でしか表現できないことはやはりある。庄内弁で言うところの「やばちぃ」は、『濡れて不快』な感情を一瞬で共有できる。むかしのように共通語を学校で強制する時代が終わっているのは、その意味で必然と言うべきだ。もっとも、この例はどうかなあ。
・広島、山口:高熱を出している人に気づかってかける言葉が「頭、悪いの?」
【とっさの方言・おしまい】
とっさの方言 (ポプラ文庫) 価格:¥ 735(税込) 発売日:2012-08-07 |