「セックスは、善いものなの?」
気持ちがよいものなのか、という意味ではなく、人間にとってセックスは善きものなのかとヒロインの雅代(波瑠)は問う。
廃墟のラブホテル。若い男女が忍びこみ、ヌードの撮影をする。そしてそこに、このラブホテルが営業中だった情景が重なる。
生活力のない父親(安田顕)と、若い男との関係を続ける母親(夏川結衣)、それぞれに事情を抱える従業員たち。
彼らの生活は、少なくとも経済的にはセックスによって成り立っている。その多くのカップルは未婚か、不倫だ。自分もそのことに依拠していることを嫌悪する雅代(彼女はセックスの経験がないわけではない)だが、母親が家を出たことによって仕方なくラブホの経営に携わる。そこへ、性玩具の営業マンである宮川(松山ケンイチ)が現れる。
彼に、雅代は問うのだ。
「セックスは、善いものなの?」と。
わたしは若いころ、庄内地方のモーテルのほとんどを制覇し、同僚のために「庄内おもしろモーテルマップ」なる案内書を書き上げたふざけた野郎だ。そんなわたしでも、まだまだわからない。セックスは、善きものなんだろうか。
余貴美子、岡山天音(近ごろ、何にでも出てる印象)など、脇役が渋い。主題曲はなんと柴田まゆみの「白いページの中に」のカバー。桜木紫乃が直木賞をとった原作は面白そうだなあ。読んでみよう。
主役の波瑠は透明感ありすぎ。性の匂いがまったくしない。あ、それも計算だったのか。
舞台は釧路だから、そこから酒田にやって来た妻が見ていなかったはずはない。
「まるさんつるやがね」
「?……??」
丸三鶴屋というデパートがあったらしい。その建物がまだあったので彼女はうれしかったよう。