第35回「苦い盃」はこちら。
ほう、と見終えてため息をつく。大河らしい大河を観た思い。畠山重忠(中川大志)の乱……というより、りく(宮沢りえ)の讒言にのった北条時政(坂東彌十郎)の横暴に異を唱えただけなのだが。
この回のために重忠はしごくまっとうな人物として描かれており、だから彼の退場は北条の内輪もめへの格好のきっかけになる。
三谷幸喜の場合、陰惨な回こそコミカルにスタートするのが通例。時政に重忠を討てと命じられた和田義盛(横田さん、ほんとに早くよくなってください)の表情はさえない。
「いやあ、次郎(重忠)は見映えもよくて頭もいい。おれと同じ匂いが」
「(即座に)話を進めましょう」
ボケが義盛でつっこみが三浦義村(山本耕史)です。笑ったなあ。
この回は反語の連続で、「○○だけは殺すな」がすべて裏返ることになります。そしていくつもの父と子の物語でもある。重忠は北条の策略で息子を殺され、だから敵軍の大将となった北条義時(小栗旬)の弱点が息子である泰時(坂口健太郎)であることを見抜く。
そしてなんと三浦義村がジャッジをつとめる重忠と義時のナックルファイトへ。重忠の拳が御家人たちの反感であることを義時は十分に理解している。
合戦の場となったロケ地とその撮影がすばらしい。緑濃い、こんな美しい場所で高低差を利用した戦が行われたのかと納得させられる。
さあ、これで義時と義政父子の離反は不可避になった。そこへ北条政子というクッションを置くあたり、なるほど義時というのは悪いけれども周到な政治家だったんだなと。
っていうか波平とカツオの殺し合いにサザエが出てくるのかあ。しかもそれはカツオのコントロールによって。
第37回「オンベレブンビンバ」につづく。