ベストセラーになっている。そりゃそうだろう。累計1200万部を超える売り上げのシリーズの、“読み方”を教えてくれる最高のテキストだし。
いや最初に言っておいた方がいいかな。もしもあなたが十二国記を読んだことがない幸運な人だとして、このガイドブックを読もうとはまず思わないでしょう?でもね、この世界観を解説されて、一作目からずーっと読み続けることができるあなたは本当にラッキーだ。これほど面白い小説にはまず出会えないので。
雪囲いを終了し、自室のソファでこのガイドを読んでいたら、圧倒的な多幸感がやってきた。北上次郎の書評によってこのシリーズの存在を知り、少女小説だったはずのこの作品が、いかに奥深いかを感得したわたしは、学校事務職員として勤務校すべてにこの大河小説を図書館に導入した。司書のみなさんは大歓迎してくれました。
その十二国記だけれど、作者の小野不由美さんのことはおよそ語られていなかった。綾辻行人の奥さんであることはみんな知っていても、画像が出てくることはないし、長いこと新作が出なかったのが体調不良によるものであることは初めて知った。それだけでなく
・エピソード0である「魔性の子」に小野さんが提示したタイトルは「滄海の東 扶桑の外」で、担当の編集者は大森望だった。「申し訳ない」
・「月の影 影の海」における陽子への前半の仕打ちには編集者のみんなが反対した(わたしもしんどかった)
・まさか作家本人が等高線まで描いた設定を用意していたとは
・山田章博による挿画がいかに強力だったか
などなど、思い切り楽しめたのでした。新潮文庫の完全版でもう一度完全読破してやろうと決心。もちろん、そのそばにはこのガイドブックが。