矢作俊彦原作による大友克洋の傑作マンガ「気分はもう戦争」にこんなくだりがある。ジョン・レノンの死を知った右翼の主人公はこう叫ぶ。
「騒ぐな!たかが毛唐の楽団屋じゃねーか。俺たちにはまだ沢田研二がいる!!」
そう、われわれ日本人にはまだ沢田研二がいるのだ。
この書は、彼の存在が(特に団塊の世代にとって)どのようなものだったかを検証したもの。週刊文春連載の単行本化。
甘い歌声が印象的な彼は、しかしケンカが強く、それでトラブルになったこともある。「魔界転生」でガッツを見せたり、現在も反原発運動に関わるなど、意外な硬骨漢なのである。
離婚したときにほとんどの財産を失い、しかしこの年齢になってから「土を喰らう十二ヶ月」でキネマ旬報主演男優賞を獲得するなど、日本の芸能界で引き続き大きな存在でいる。
そう、引き続きわれわれには沢田研二がいるのである。