塩田武士の原作は圧倒的だった。新聞記者としての長いキャリアがなければ、グリコ=森永事件の背景をあれほどみごとには描けなかっただろう。
あの原作を映画化。監督はTBSの土井裕泰(「重版出来!」「カルテット」)。
とてもていねいにつくられた映画だった。俳優の演技も、美術も細やかで気持ちがいい。
特に考えてあったのはキャスティング。グリコ=森永事件に(世代的に若すぎて)さほど興味のない文化部の記者に小栗旬。自分の子どもの頃の声が犯罪に使われていることへの不安のために、事件の真相を追わずにいられないテーラーに星野源。このふたりは本当にすばらしい。
小栗パートと星野パートがそれぞれ独立して進行し、彼らが交差することで犯人たちの実相が見えてくる構成は、原作を踏襲しているとはいえ計算がぴたりとはまっている。
いったい誰が脚本を書いたんだろうと見ているあいだに考え続けていたら、野木亜紀子とテロップが出て納得。「逃げるは恥だが役に立つ」「アンナチュラル」で見せた凄みがいかんなく発揮されている。
その他にもこの作品は役者やスタッフの選択がすばらしい。
小栗旬をロンドンに行かせる上司に古館寛治(「英検1級だろ!」「準1級ですよ」)、そこに茶々を入れる松重豊。宮下順子と岡本麗のロマンポルノ組が久しぶりに登場すれば、木場克己、橋本じゅん、火野正平などが渋味を見せ、大好きな宇野祥平と篠原ゆき子まで登場してうれしくなる。
音楽は佐藤直紀で主題歌はなんとUruだ。そしてそして、重要な登場人物として宇崎竜童と梶芽衣子……娯楽映画として楽しめると同時に、上質なミステリを読み終えた気分が味わえます。おみそれしました。
いたことは疑いないですよね。
で、荒っぽい方面の人物たちもいたというのが
慧眼。
そうでしょうとも。