「奇巖城」モーリス・ルブラン著 逢坂剛訳 講談社
訳者の逢坂はドラマ「MOZU」の原作者。ほとんどオリジナルに近いくらいに書き直したそうです。このルパン1世の活躍が面白かったら、今度は逢坂の傑作「百舌の叫ぶ夜」に挑戦だ!
……今年のうちの学校の図書委員会が企画する「先生が選ぶおすすめの本」はこの1冊にしました。図書館にある本のなかから選ばなければならないのはちょっときつかった。もう米澤穂信、伊坂幸太郎、小野不由美は紹介しちゃってるしねえ。職権を悪用して彼らの本を大量購入したのはごめんごめん。でもさあ、中学生の時代から彼らに耽溺するのは幸いでしょうや。わたしは南洋一郎訳でルパンに耽溺したのだけれどそれはともかく。
実は近ごろ、逢坂の本をつづけざまに読んでいます。「ハードボイルド徹底考証読本」(小鷹信光との共著)、「わたしのミステリー」、そして池波正太郎の名キャラをリブートした鬼平シリーズ第二弾「平蔵狩り」。
この人はたくさんのシリーズを持っていて、近ごろドラマ化されて話題の「百舌の叫ぶ夜」(大傑作)に始まるMOZUシリーズがもっともメジャーだろうか。西島秀俊を倉木にキャスティングしたということは、大杉は誰がやっているんだろう(なななんと香川照之。うーん。美希が真木よう子なのは納得だけど)。
神保町に事務所をかまえる岡坂神策シリーズは、名前からもわかるように自身をモデルにしていて、スペイン、ギター、元サラリーマン(博報堂)といった逢坂の特色が最も色濃くでている。
わたしが好きなのは彼の時代小説で、北方探索で有名な近藤重蔵を主人公にした重蔵始末シリーズ、そして長谷川平蔵ものなどがある。なにしろ百歳をこえて現役の挿絵画家、中一弥さんが協力していてほほえましい。彼は逢坂の実のお父さんですからね。考え得る最高の親孝行だ。
代表作は直木賞をとった「カディスの赤い星」だろうか。しかしこの作品を逢坂は“とりあえず書いたけれどもしばらく放っておいた”のだそうだ。どう活かしていいかわからなかったとか。さすが広告代理店出身者はクール。このクールさとスペインへの熱情の混交がこの人の魅力。ぜひご一読を。
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