ダルトン・トランボといえば、わたしの世代にとっては「ジョニーは戦場へ行った」の監督(原作と脚本も)。
戦場で負傷し、目も見えず、口もきけず、聴覚も失ったジョニーは、壊死をふせぐために両手両足をも切断される。人間として見てもらえなくなった彼が、自分の意思をどのように伝えようとしたか、そして何を伝えたかったか……壮絶な反戦映画。だからトランボとはこういう、シリアス一辺倒な人なのかと思っていた。
違った。
彼は「ローマの休日」「スパルタカス」「栄光への脱出」などの脚本を“匿名”で書くなどした職人でもあったのだ。しかも、ものすごく有能な。
なぜトランボはクレジットされなかったのか。ここに、アメリカの恥部であり、ハリウッドの暗黒を象徴する“赤狩り”が影響している。
戦後の反共の嵐を意味する赤狩りについては、わたしも若くはないのである程度承知はしている。有名なのがハリウッド・テン。映画業界の著名な10人が、共産主義者であるということで追放される。トランボもそのひとり。
この嵐は他の業界にも広がり、途中からジョセフ・マッカーシーというきわめて奇矯な上院議員が登場し(2016年の観客は、誰しも現在の共和党大統領候補との相似に気づくはず)全米が彼に熱狂する。かの有名なマッカーシズムだ。
そのなかで、とりわけハリウッドが狙い撃ちされたのは、国民への影響力が大きいと判断されたのだろう。なにしろ有名人たちだから国民は注目する。要するにハリウッド・テンは見せしめの意味合いが強かったわけだ。
この動きに、ハリウッドは割れた。以下次号。
最新の画像[もっと見る]
- 「レジェンド・オブ・フォール/果てしなき想い」Legends of the Fall(1994 トライスター) 2日前
- 「VIVANT」(2023 TBS) 2日前
- 「僕たちの保存」長嶋有著 文藝春秋 3日前
- 光る君へ 第47回「哀しくとも」 3日前
- 明細書を見ろ!2024年12月児童手当号 12月10日 4日前
- 明細書を見ろ!2024年12月期末勤勉手当号 2024年人事委員会勧告PART2&紙上初任者研修PART8 5日前
- 「青姫」朝井まかて著 徳間書店 7日前
- 「冬季限定ボンボンショコラ事件」米澤穂信著 創元推理文庫 1週間前
- 「ブラックペアン」(2018 TBS) 1週間前
- 「オペレーション・フォーチュン」Operation Fortune: Ruse de guerre(2023 キノフィルムズ) 2週間前
「洋画」カテゴリの最新記事
- 「レジェンド・オブ・フォール/果てしなき想い」Legends of the Fall(1994 トラ...
- 「オペレーション・フォーチュン」Operation Fortune: Ruse de guerre(2023 キノ...
- 「バービー」Barbie(2023 WB)
- 「アステロイド・シティ」Asteroid City(2023 パルコ)
- ヘアーの不毛18「バベル」Babel(2006 GAGA)
- 「ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ」Joker: Folie à Deux(2024 WB)
- 「沈黙-サイレンス-」Silence (2016 パラマウント)
- 「MEG ザ・モンスターズ2」Meg 2: The Trench(2023 WB)
- 史劇を愉しむ その37章「サムソンとデリラ」SAMSON AND DELILAH(1996)
- 「MISS.トランスポーター」Night Train(2023 劇場未公開)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます