事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「昭和の劇/映画脚本家 笠原和夫」

2008-02-02 | 本と雑誌

Shouwanogeki 太田出版刊 4,286円(税別)

 凄い本であることは前からきいていた。しかしこれほどまでとは。大掃除の合間や、お餅を丸めたりしながら、その面白さに600ページを超える大作をほぼ一昼夜ぶっ通しで読み続ける。文句なく2003年のベストワン

 笠原和夫とは、美空ひばりの時代劇から「総長賭博」などの任侠やくざ映画で東映を支え、「仁義なき戦い」で頂点をきわめた後、「二百三高地」などの大作を放った脚本家。先日お伝えした深作欣二とのみごとなコラボレーションと、同時に苛烈な相克。これは笠原へのインタビューをまとめたものだが、脚本家の本は、監督の映画本よりもさらに面白いことがわかる。「あのバカ(監督)が、オレのホン(脚本)の意図もわからずにあんな映画にしやがって」という歯がみがきこえてくるからだ。

Kasaharakazuo  この本の凄みは、執筆のために徹底した取材を敢行する笠原がたどりついた歴史の裏面にある。まあそれは次回以降にゆずるとして、まずは東映の屋台骨を支えた彼だからこそ語ることができる芸能史の側面を見てみよう。

【『人生劇場・新飛車角』昭和39年】
「これがヒットしたというのは、非常に展開がスピーディであったことと、それから当時、鶴田浩二が佐久間良子とできてたんだよ(笑)。その二人が、実に琴瑟相和すという名演技を見せて」

【『日本侠客伝・浪花篇』昭和40年】
高倉健について)「ナルシシズムが強いんだね。自分の美しさと若さに自分で惹かれているというかね。『鉄道員(ぽっぽや)』なんてやってたけど、あれははっきりいって二・二六事件の将校ですよ(笑)。あんな人、田舎にはいまへんでえ(笑)。僕が『二百三高地』をやった時にね、乃木将軍役は高倉健がいいと言ったんですよ。それで、僕が交渉することになって青山で会いましてね、乃木将軍をやらないかと言ったら、大分長いこと考えて『悪いんですけど、私は軍人というのはやる気がしない』と。でもそうじゃないんですよ。お爺さん役がイヤなんですよ。というのも、その後『動乱』(昭和55年)って映画があったでしょ。あれで二・二六事件の青年将校をやってるんですよ。何が『私は軍人というのはやる気がしない』んだと(笑)。」
※乃木は結局仲代達矢が演じた。

中村錦之助について)「彼が東映に入ったのは昭和29年ですけどね、錦之助兄弟を車で迎えにいくというのが僕の宣伝部での最初の仕事だったんですよ。で、錦之助が助手席に座って、僕は弟とうしろの席に座ってたんだけど、うしろから見てね、本当、首筋がきれいだなあと思った。女以上にきれいですよ。真っ白で。それくらい女っぽい。ものすごく女っぽい人。」

次号につづく!

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