興行収入における洋画のシェアがどんどん下降している。わたしの世代からするとちょっと信じられない。
もちろんむかしも邦画は洋画よりもずっと見られていた。映画の黄金時代と呼ばれる50~60年代、庶民の娯楽の王様といえば映画で文句なし。ところがテレビの隆盛と反比例して観客数は減り続け、映画を観ることは、デートなどの一種のイベントと化した。映画館に行くのが日常ではなくて特別なことになったのである。
そうなると洋画は強い。なにしろワールドワイドに稼げるので一本あたりの製作費は邦画とケタが違う。たしか「タワーリング・インフェルノ」が公開されたあたりで互角になり、以降抜きつ抜かれつしながら推移し、1986年以降はずーっと洋画上位。02年にはわずか二十数%まで邦画のシェアは落ちこんだ。
ところが、ところがところが06年にふたたび邦画が逆転し、その差はひらくばかり……その理由の多くが、特に東宝が顕著なテレビ局連動製作システムだろう。
テレビドラマで“おなじみの俳優”による“おなじみのストーリー”を映画館で観るということに、いまの若い観客はまったくアレルギーを感じないらしいのだ。もっとはっきり言うと、日本映画を観ることがださくなくなったのである。分水嶺は「世界の中心で、愛を叫ぶ」だろうか。
実はこの傾向は音楽界ではとっくに自明のことになっていて、Jがつかなくてもポップミュージックとはすなわち邦楽のことに事実上なっている。なんか、時代は変わったなあ。
さて、CG主体の映画づくりがドラマの弱体化を招いていると言われているなか、観てきましたよその代表格の「ホビット」。確かに、「ロード・オブ・ザ・リング」よりも宝石奪還だけが目的なのでシンプルなストーリーだ。
逆に、イライジャ・ウッドのジャンキー演技のうっとうしさからも無縁だし、前三部作では描けなかった魔法使いガンダルフ(イアン・マッケラン)とホビットの身長差がきちんと。
「なにか来るぞっ!」
とドワーフが叫ぶと、想像をはるかに超えた異形の化け物が登場するのでビクビク。なにより、アンディ・サーキス演じるゴラムとビルボ・バギンズのなぞなぞ合戦の邪悪さ哀しさ、うさぎゾリのスピード感たるや……やっぱり、洋画は面白いけどなあ。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます