「1・2の三四郎」篇はこちら。
ぎんたま、である。これがタイトル。下品きわまりない。しかし字面をながめると高尚な雰囲気を……全然感じませんか、そうですか。
少年ジャンプ連載中のこのギャグ漫画の最大の特徴は、そんな微妙な雰囲気にこそある。下品に下品を重ね、それでもにじみ出る崇高さ。いや間違った。どんなにドラマティックに盛り上げても透けて見えるお下劣さ。こう評価された方が作者の空知は気持ちがいいだろう。とにかく空知はとてつもない照れ屋で、作品をほめられたりすると(うれしいくせに)かえって真っ赤になって否定してしまう。「こんな下品な漫画で悪かったよな!」「どうせオレの漫画にオリジナリティなんてねーよっ!」こんな具合。まあ、あくまで想像ですが。もっとも、彼は盗作疑惑の渦中にあり、あとの方のセリフはシャレにならない。
広告畑出身者である空知の、そんな照れが銀魂の魅力でもある。情緒たっぷりに泣かせたり、破綻しそうなほどギャグで突っ走ってもよさそうなものなのに、空知はどんなときでも「寸止め」してしまう。ジャンプ連載者らしからぬバランス感覚。そこが、わたしは好きなのだ。
なにしろ会話が冴える冴える。屈指のロリキャラ、未成年の神楽(かぐら)がホストクラブでかますセリフはこうです。
「じゃあドンペリでも持ってきてもらおうかしら……ドンペリ持ってこいって言ったら黙ってミルクのひとつでも持ってくるのが気のきいた対応じゃなくて?ホントにミルク持ってきてどうするのよ。ホント使えないボウヤたちネ。私がミルクぐらいでおさまる女だと思って?もう大人なの。もうオロナミンC飲めるの。私の昔の男がね……オロナミンCはガキは飲んだらダメだって。大人でも一日一本しか飲めないってよく言ってたわ。あら、いつの間にか二本も空けちゃった」
こんな意識的な感覚をもったギャグ漫画家は、週刊連載という修羅場で早々につぶれてしまうのが常だった。鴨川つばめ、江口寿史はその代表。しかし空知はちょっと違う。弱音を常に吐きながらも、なおもギャグセンスが向上しているのだ。すごいぞ空知。でも絵はもうちょっと何とかならないか。キャラが全然動いていませんもの(笑)。
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