Vol.42「美食の報酬」はこちら。
映画を観ているとき、スクリーンの右上にちっちゃい◎が出るのに気づかないですか。
あれはキューパンチと呼ばれるもので、映写技師にフィルムの交換をうながすサインなのだ……と知ったかぶりをしてますが、NHKでこのエピソードが放映されたのを見ていたので知ってるだけです。
コロンボはこの手のフィルムまわりのネタを使うことが多いのでお勉強になります。いまはデジタル上映が多いのでありえない設定だけど。
さて、今回もコロンボはおとぼけな登場を。雪山讃歌、じゃなかった「いとしのクレメンタイン」を歌いながらごきげんにプジョーを転がすコロンボの運転はめちゃめちゃ。パトカーに追尾され、警察無線で
「酔っぱらい運転だ。やっと運転している感じだ」
とまで言われてしまう。あまつさえ追突までされてしまい、むちうちに。まあ、自業自得。
今回の犯人はテレビ局の社員。愛人である上司がニューヨークに栄転。自分を連れて行くかポストを用意すると期待する彼女に、上司が用意したのは手切れ金代わりのクルマだけ。
彼女は冷徹に秒読みを行いながらきわどいアリバイを成立させ、愛した男を射殺する。キューパンチがキーになる殺人シーンはなかなかスリリング。しかしその他の部分は……。
むしろ殺人者の性格付けが新しい。貧しい生まれから上昇指向をむき出しにして突きすすむ女性。もはや陳腐化した“キャリアウーマン”的なファッションや歩き方は、当時としては斬新な設定だったのだろう。現在の目からすると思いっきり類型なので笑えるくらい。
演じたのはトリッシュ・ヴァン・ディーヴァー……「イルカの日」の人じゃないか。ということは旦那はジョージ・C・スコットで……うわ、ノンクレジットだけどちゃんと出演してる。仲がいいなあ。
「きみはアシスタントとしては優秀だ。だが決断ができない。まとめるだけだ」
とされた彼女は、コロンボによって犯罪をあばかれるが
「わたしは負けないわ」
と、シリーズにはめずらしい決断をエンディングでくだす。確かに、新しい女性像。
Vol.44「攻撃命令」につづく。
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