うーん、困ったなあ、というのが印象。
古今東西のミステリの“名作”(小谷野本人はみじんもそう考えていないことが多い)について、ネタを明かしながら(そのこと自体はさほど悪いことでもないだろう。ネタを割らないことが芸だともこの人は思っていない)、疑義を呈する……すみません、遠慮してしまいました。罵倒の連続です。
たとえばわたしの大好きな有栖川有栖の「マレー鉄道の謎」については
「推理作家協会賞をとっているので読んでみたら、あまりに普通の密室推理で、拍子抜けしてしまい、これなら狂気をはらんだ島田荘司の方がましかと思った。こういうのを好んで読む人というのは、やっぱり理解できない。」
横山秀夫の「64」に至っては、
「こ、これは……『バカミス』ではないか。」
もちろんそれにはうなずける点もある(笑)。しかしこの人がやっていることは、お皿の上にのったフルーツの良し悪しではなく、フルーツそのものへの罵倒に見える。「この作品のよさが私にはわからない」のなら読まなければよさそうなものなのに、彼はひたすらにフルーツを食べ、そして罵倒を続ける。わたしにはそのことの方がよほどわからないのだが。
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