三船敏郎は黒澤明監督作品だけじゃない!ということで、コメディやロマンスものなどを紹介してくれる好著。
それだけではなく、ミフネの特質をていねいに解き明かしてくれる書でもあった。たとえば、あの「用心棒」や「椿三十郎」を見ると、彼の殺陣は他の人と違い、身体の各部位の動きが極端に同時進行で、だから動きの速さ以前の問題として“彼の殺陣は短い”のだという。だからリメイクのために同じ脚本を使ったとしても、どうしても上映時間は長くなるというわけだ。
上映時間云々は別の要素もあるだろうが、ミフネが同太貫を振るときの凄みは、そんなところにも起因していたろうか。
この本でもっと興味深かったのは、“ミフネが出演しなかった、あるいはできなかった作品”が列挙されていることだろうか。オファーがあっても、さまざまな理由でキャンセルせざるをえなかった作品群。これが、豪華なのだ。
まず、東宝がコロンビア(現SONY)と組んで「酒吞童子」を製作しようとした。ミフネは源頼光の役。異人だったという説もある酒吞童子にはウィリアム・ホールデンという企画。
欧米人にとって未知の存在である東洋を舞台に、「羅生門」で知名度もある三船敏郎を起用して……わからないでもない。実現したら興味深い作品になったことと思う。しかしギャランティの問題などで流れている。
「ウィリアム・アダムス」篇につづく。
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